最終日の残り6ホールで6打あったリードが、残り2ホールでわずか1打に。終盤の緊迫した展開を耐え抜き、過去に2度あった最終日首位スタートからの逆転負けという呪縛も振り払った福田真未が、「伊藤園レディス」で嬉しいツアー初優勝を飾った。この優勝までトップ10フィニッシュが1回と今季なかなか結果を出せず、シード落ちのピンチに陥っていた福田が勝利を掴んだポイントを、上田桃子のほか多くの選手を指導するプロコーチの辻村明志氏が解き明かす。

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まず、トータル距離が昨年より102ヤード伸びて6,741ヤードになり、1988年のツアー制度後の公認競技では史上最長となった今回のコースについて、「全ての選手にとって、フェアに厳しくなった」と評価した辻村氏。さらに、「最近のゴルフでは、ピンをデッドに攻めていくことが勝利の条件になってきていますが、それにはリスクもあってピンハイにつくことも多くなる。今回のグリーンは、イ・ボミさんとかでも(パターの)シャフトのところを持って打つくらい、上から3メートルでボール1転がり2転がりほどしか打てない速いホールもあった」と指摘。トータル8アンダー3位タイでフィニッシュした上田桃子が、初日と2日目で叩いた5つのボギーすべてが3パットだったことを例に挙げ、「3パットのリスクはあるけど、アグレッシブに攻めていけたかどうかがポイントだった」と解説した。選手からは長くなった距離に対する愚痴も聞かれたが、「今回のようにミスショットがボギーになるようなある程度タフなセッティングにしないと、世界のゴルフには勝っていけない」と言い切った。

■福田真未が取り戻した“クラブ捌きの上手さ”とピンチを救った“パットへの自信”

今週の福田を見た第一印象が“おっ、変わったな”だったという辻村氏。「元々ショットメーカー」(辻村氏)という福田だが、2015年から今年の前半戦までショットのスランプに陥っていたと指摘。ここ数年は、「飛ばそう飛ばそうとして、腕や身体全体に力が入っていて逆に飛距離が落ちていたし、手元が目標方向へ先に出ちゃうから、ヘッドが全然前に出てこない振り遅れの状態で、球も左右に散らかっていた」。それが、「今回練習で見たら、グリッププレッシャーと腕が本当に柔らかい感じでクラブを持っていた」。腕はホースのように使うのが理想という辻村氏も、「スイング中にクラブの重みを感じられるくらいに身体から力感が抜けていて、バランスがいいように見えた。ショットメーカーだった頃の“クラブ捌きの上手さ”が戻ってきているんじゃないか」と思ったという。

しかし、練習ではできていても、試合の緊張感のなかでは上手くいかないのがゴルフの難しさ。実際福田も、6打差で迎えた13番からの3連続ボギーで、後半追い上げてきたアン・ソンジュ(韓国)に1打差まで詰められた。「13番からの3ホールは、パー5、短いパー4、パー5なので本当はスコアを伸ばさないといけないホールなんですが、そこをボギーにしてしまった。それがやっぱり優勝争いのプレッシャーだし、それぐらい優勝って難しいと思わせられた」。

そんな緊迫する場面で福田を救ったのが、「ショットがスランプだった時期に向上させてきたパットだった」と辻村氏は断言した。「今年もパッティングだけはずっと良かった」と評価するように、今季の全ホールでの平均パット数は29.0213と、全体の7位にランクイン。今大会でも、福田が「まだいける」と気持ちを立て直した17番での約4mのパーパットや、最終18番で「微妙に長く感じた」(福田)という1mちょっとのウィニングパットを、「あの優勝争いのプレッシャーの中で、しっかり打って(カップの)奥のふちに当てて入れるんだから、やっぱり自信があるんですよ」と絶賛。「ショット(の調子)が戻ってきて、ここまで頑張ってきたパットと一緒になってきた形が優勝に繋がったと思う」と、プロテスト合格から7年目にしてやっと掴んだツアー初勝利をたたえた。

■「いいゴルフをしている」川岸史果の今後の課題は“ショートゲームの繊細さ”

一方、福田から4打差の2位タイから出たが、決勝ラウンドで1つしかスコアを伸ばせず、今季5度目となる最終日最終組での敗戦となった川岸史果。その川岸について辻村氏は、「1年間通して安定したいいゴルフをしている」と賞賛する。まだツアールーキーだが、「どんどん風格がでてきている。インタビューの上手さとか、言っていることも“あーなるほど”と思わせられるし、良く考えているなと感じる」と賛辞を述べた。

全体2位のドライビングディスタンス(256.79)に対し、全ホールでの平均パット数(29.8202)は46位という川岸への今後の課題を聞くと、今の時点でのポテンシャルを大きく評価した上で、“ショートゲームの繊細さ”を挙げた。「やっぱり“ショートゲームを制するものがツアーを制す”と言うくらいですから、もっともっと緻密な練習をしないといけない。どんなところからもきっちりあわせる(アプローチやパットの)距離感や崩れないパットの出球とか、細かいところを追及していかないといけない」と指摘。さらに、「パッティングやアプローチでトップ5に入ることが今後彼女に求められていることだと思いますが、そうなると手がつけられなくなる。みんなが7番アイアンで打つようなところを、PWで打つくらいパワーがあるんですから」と笑顔で締めくくった。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとして、チャレンジツアーで最高2位などの成績を残した。2001年のアジアツアーのQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子や藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場での愛称は“おにぃ”。

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