日本ツアー復帰以来、苦しいゴルフが続いている石川遼。先週は「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP」に出場し、国内では自己ワーストタイとなる4戦連続での予選落ちに終わった。石川曰く、将来な理想はドライバーで「300ヤードを真っ直ぐ飛ばすために」スイング改造に着手しており、現在はその生みの苦しみの最中だという。この現状を、プロコーチはどう見るのか。中嶋常幸や佐藤信人などのコーチを歴任、現在は成田美寿々や川岸史果らを指導する井上透に語ってもらった。

【スイング連続】石川遼が本音で語る 理想のスイングは過去にある?
復帰してからの3戦では振り遅れのためにインパクトが安定しなかった。「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP」の会場で井上が石川のスイングや練習を見た感想は、「かなりスイングの形は良くなっていると思います。練習場や試合中でもクラブを右手と左手でそれぞれ同時に持って、左右の腕の動きと体を同調させることを大事にしていましたね。ということは、逆を言えば同調していないということ。それができていないから曲がる、ということを問題視していたのだと思います。ショートアイアンなどのフィニッシュを見ると、シャフトがヨコ方向に抜けてくるので、クラブのローテーションを抑えながらスイングをするという意識がすごく強く見られました。ここを切り取ってみれば、石川プロはより高いレベルの、曲がりにくいスイングを目指していることが感じられると思います」。

石川の理想とする安定感と飛距離の増した新スイングに前進はしているようだ。だが、井上はスイング中の動きを修正するのは実はかなり「難しいこと」だという。「私は大きく動きを直す場合はスイング“改造”、僅かな変化で調子を整える場合はスイング“調整”と位置付けています。彼がやっているのは“改造”。試合が続く中で、かなり厳しい難題を自分に課しているのではないでしょうか」。HEIWA の2日間で計5発のOBを打ったことでも分かるように、動きの修正は時間がかかる。井上ならば、試合が続く最中に選手へそれを勧めることはないという。

なぜならば、「こういう不調の時期が少々長くなってくると、ポジティブなイメージが湧きにくくなるのです。4試合連続で、おそらく自分のイメージとは違うボールが出てしまっている。そうなってくると、たとえ調子が良くなって来ていたとしても、悪いイメージが湧いてしまうという状況に陥ってしまう可能性があります」。

だからこそ、「この状況はできるだけ早く解決したほうがいい」と井上は語る。

「自分の持っている技術の中で調整するのと、今までにない引き出しをつくるのはまったく質が違うこと。今回の一時的な不調というものは、今までの自分にない新しいものを作り出そうとしているプロセスなのだと思います。やはり目先の目標ではなく、将来自分がこうなりたいという理想像を追いかけているのでしょう」。このまま改造が長引くのならば、予選落ちのリスクが付きまとうのは当然のことのようだ。

井上は石川が理想のスイングを追い求める姿勢を評価しながらも、もしコーチとして助言するのならば“完璧”を考えないほうがいいと話した。「こういう時期というのは、選手は完璧主義に陥りやすいものです。ですが、私はゴルフにはそもそも完璧というものは存在しないと考えています。調子が悪くても良いスコアで回るという”結果”を求めることは、とても重要なこと。調子が悪いけど勝てるのが、ある意味完璧な選手。石川プロは米国での戦いのなかで、より完璧を求める姿勢を、強く持ち続けていたのだと思います。より高みを目指すストイックさはもちろん素晴らしいことで、完璧を追求する姿勢は大事ですが、同時に完璧ではない自分も認めてあげる姿勢も大事なのだと私は思います」。高い理想を持つことは大事だが、石川の場合はもう少し自分の今の状態や調子を受け入れ、これまでの、そして現在の自分自身を大切にすることも有効ではないかという。

また、「重要なのは上手くいかなかったら別の方法を模索し自分に合う方法を発見すること。スイング改造はある意味“パンドラの箱”。それを開けたのであれば、何より慎重になる気持ちが大事だと思います。良かれと思って選びとった方法でも、やっていくうちに自分に合わないことももちろんあるでしょう。その時に振り返って、“この追求の仕方は上手くいかなかった”と素直に思えるかどうか。誰でもそうですが、選手は重ねた努力が無駄になる事を好みはしません。石川プロも自分の中で期限は決められているのではないかと思いますが、その時はいい意味で進むべき方向性を変えることも大事だと思います」。

石川は「年内には結果を出したい」とHEIWAの時に話していた。現時点での年内最終戦は11月23日から開催される「カシオワールドオープン」。理想を追い求める姿勢も大事だが、別の道を模索するのも視野に入れておいたほうがいいのかもしれない。

解説:井上透、1973年4月3日生まれ。横浜市出身。アメリカでゴルフ理論を学び、1997年より日本ツアーにおいて初のプロコーチとして男子ツアーに帯同、佐藤信人、中嶋常幸、加瀬秀樹など多くのプロのコーチを歴任。現在も成田美寿々、穴井詩、川岸史果、竹内美雪など多くのプロのコーチングを行っている。

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