日本で唯一行われる米国女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」が茨城県にある太平洋クラブ 美野里コースで開催され、トータル19アンダーまで伸ばしたフォン・シャンシャン(中国)の連覇で幕を閉じた。昨年、日本勢では堀琴音しかトップ10に入れなかった戦いで、鈴木愛が最後まで食らいつき2位に入るなど見せ場がたっぷりだった日米決戦を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が掘り下げる。

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■今年も感じた!米ツアーの選手は“ゴルフの本質を突いている”
昨年大会の優勝スコアはトータル13アンダー。昨年以上に伸ばし合いとなった今大会、中でも優勝したシャンシャンは2日目に“63”を出すなど、持ち前の飛距離が出る精度の高いショットを武器に大暴れ。完全優勝で連覇を成し遂げた。

米ツアーメンバーを除けば、鈴木は2日目を終えて4打差をつけた首位。最終結果も2位に5打差をつけての圧勝となっていた。だが、そうはさせてくれない米ツアー勢。「この舞台では攻めるゴルフをせざるを得ない」と辻村氏は言う。

「向こうの人たちは初日に6アンダーくらいがバタバタでても驚かないというか。“出たね”くらいの感じ。追いかけなれているから慌てない。日本の選手は3日間追いかける、伸ばすことにまだ慣れていない。それに今年も同じことを感じましたが、米ツアーの選手はパターが良く入る。何故なら、ショットの練習に時間を割きがちな日本ツアーの選手よりも、パターの年間の練習時間が違うからです。誰を見ても練習グリーンにいる時間の方が長い。ゴルフの打数の4割はパッティングが占めています。それを分かっているからこそ、ですね」。“私はパッティング練習に一番時間をかけています”と話す世界ランク1位(11月5日時点)のユ・ソヨン(韓国)を筆頭に、米ツアーの上位選手は「ゴルフの本質を突いている」と話す。

■連覇達成のフォン・シャンシャンはスイングが簡単に見える!
そんな中、連覇を達成したシャンシャンについては、「昨年も優勝して良いイメージがあったのはもちろんあると思いますが、20近いスコアを出せたのは彼女の“完全な”レベルボディターンスイングあってこそ」と辻村氏。その精度の高いスイングを探っていく。

「まず、両ワキがしっかり体の前にくっついている。だから、これは2位になった鈴木さんもそうですが、軸の前からスイング中シャフトが一切外れない。両ワキが体に締まっていて、両ヒジがずっとおなかの前に挟んである。アマチュアの人はボールをつかまえようとするあまり、リリースを早めようとしてしまいます。すると、どうしてもワキが甘くなってしまう」。そうなるとボールに体の重さが乗らず、ショットは不安定なものになってしまう。

「シャンシャン選手はワキを締めたまま、 肘、手元、ヘッドの3点がしっかり身体の前で管理され身体を回しています。まるで『でんでん太鼓の動き』ですね。レベルターン(腰や肩を地面に対して水平に回すこと)をしてドカーンと体の重みを伝えていく。彼女のスイングを見ているとなんだかスイングが簡単なものに見えてしまいますね」

■最後まで食らいついた鈴木愛 昨年以上の成績に導いた好調ショット
そんな米ツアー勢に日本総大将として一矢報いたのが鈴木。連日スコアを伸ばし、あと一歩のところまでシャンシャンを追いつめた。得意のパットは「中々入らなくて腹が立った(鈴木)」と納得できるものではなかったが、それでもこのスコアを出せた要因は「3日間ともすごく良かった。後半はずっとチャンスについていた(鈴木)」というショットのおかげだ。辻村氏は最終日の朝練習で、好調の秘訣を見たという。

「練習場でショットを見たら、両手をスプリットというか右手と左手の間隔を離していました。それを見て、クラブのシャフトとヘッドの位置を必ず『身体の前でコントロールしたい』のだと強く感じました。この練習はアマチュアの方にもとても良い方法です。右手が遠くを持つということは、ダウンスイングからヘッドの位置のコントロール、なるべく体の前で打つということ。体がグッと入ったときにヘッドも付いてきてくれるイメージを持てるように、スプリットに握っているんです。ダウンスイングからインパクトにかけてお腹が開く選手が多い中、鈴木さんはヘッドと体の線が一直線でボールに乗ってくる。お腹とヘッドの線にあまりブレがない。それが今年のショット好調の理由だと思います。残り3試合にも期待が持てるのではないでしょうか」。

また、第1ラウンド前日の木曜日にも質の高い練習を見たという。「練習ラウンドの時にインコースをウェッジとパターだけで回っていました。そしてグリーン周りを入念にチェックしていたんです。試合を想定してできているなと思いました。ショットにかまけることなく、ショートゲームにも余念がない。そして最後は自分の調子ではなく、コースとの戦いだと分かっている」。ショット好調に甘えることなく、自分のやるべきことが分かっているからこその優勝争いだったのだ。

鈴木はこの2位で賞金ランク1位に浮上。2013年の森田理香子以来となる日本勢の女王戴冠が見えてきた。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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