先週から今週にかけて、日本のゴルフファンの視線は松山英樹が同伴したトランプ大統領と安倍首相のゴルフ外交に向けられていた。和やかなムードで9ホールのハーフラウンドが楽しめ、交渉にも実りが得られた様子で、トランプ大統領も安倍首相も上機嫌のようだった。大役を無事に務め上げた松山は、さぞかし安堵したことだろう。

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一方、先週から今週、米国のゴルフファンの視線は着々と復帰への道を歩みつつあるタイガー・ウッズに注がれている。11月末からバハマで開催される“ウッズの大会”、ヒーロー・ワールド・チャレンジで、今年2月以来の試合への復帰を発表したウッズは、以後も積極的に自身の声を発信し、その存在感をアピールしている。

あるポッドキャストには電話インタビューという形で出演し、ウッズの子供たちが父親のことを(現役選手ではなく)ユーチューブなどでしか見ることができない、生きるレジェンドだと思っていたと知って「僕はすごくショックを受けた」という秘話を自ら明かしていた。

ボール開発のテクノロジーがさらに進んでいけば、将来的にゴルフコースは7400ヤードから7800ヤード、「いや、8000ヤードが必要になる日も決して遠くない」と、昨今の用具開発競争に警鐘を鳴らす発言もした。

米メディアから毎日のようにウッズのニュースがポジティブに発信されると、米ゴルフ界は不思議なほど活気づくもので、ラスベガスで開催されたシュライナーズ・ホスピタルズ・オープンを戦う選手たちもその活気を感じていたのだと思う。

勝利を目指す選手たちが力を振り絞った最終日は大混戦となり、最後は3人によるプレーオフへ。そして、2ホールに及んだプレーオフを制したのは、25歳の米国人選手、パトリック・カントレーだった。

カントレーといえば、ジュニア時代もUCLA在学中も、将来を有望視され、米ツアーにデビューした2014年は、その年から正式メンバーとしてフル参戦を開始した松山と、しばしば比較もされていた。

だが、その前年に痛めた腰の状態が悪化し、成績は下降。2016年はついに戦線離脱を余儀なくされ、昨季は公傷制度に助けられて、ようやくツアーへ復帰。そして今季開幕早々のラスベガスで、ついに初優勝を遂げた。

この日、勝利を決めるまでの道は長かった。2日目から首位を走っていたJJスポーンが終盤に大きく崩れて優勝争いから脱落。追撃をかけたカントレーら3人がプレーオフにもつれ込んだのだが、1ホール目は3人ともボギー。カントレーはフェアウエイを捉えながらもバンカーにつかまり、寄せも失敗。それでも、プレッシャーの下では外しごろの2メートルのボギーパットをうまくカップに沈めて生き残り、次なるプレーオフ2ホール目では、たた1人パーで収めて勝利をもぎ取った。

そんな試合展開を目にしたとき、メディアセンターの中では往々にして「泥試合」という言葉が聞こえてくる。

確かに、惚れ惚れさせられるようなミラクルショットやナイスショットは優勝争いの大詰めでは1つも見られず、「誰が抜きん出るか」ではなく「誰が踏みとどまるか」「誰が生き残るか」が勝敗の分れ目になった。

黄金時代のウッズや日米首脳外交の御供に選ばれる松山らが大観衆を魅了する勝ち方とは正反対の展開。だが、崩れ方も、追撃の仕方も、混戦ぶりも、すべては米ツアー初優勝という最初のハードルを越えようともがく選手たちの必死さの表れだ。

「泥試合」なんて言葉を当てはめるのではなく、彼らの戦意を強く実感できた試合だったと、私は言ってあげたい。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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