世界選手権シリーズのHSBCチャンピオンズは、2位に6打差で最終日を迎えたダスティン・ジョンソンが、あたかも昨年の松山英樹のように、独り舞台で圧勝を飾ることになるのだろうと思われていた。

バンカー内で松山とラームのボールが…
3日目を終えてDJから7打差の3位に付けていたヘンリック・ステンソンは「明日はDJを追いかけると言うより、2位争いをする感じだ」と言っていた。米ツアーも「明日、ジョンソンが優勝したら」という前置きで、達成される数々の記録を並べたリリースを発信していた。

そう、DJが優勝したら、米ツアー通算17勝目、世界選手権は通算6勝目になっていた。米ツアーのシーズンで言えば、今季初勝利となり、カレンダーイヤーの2017年で言えば、メキシコ選手権、デル・マッチプレー選手権に続く年間3つ目の世界選手権タイトルになるはずだった。

そうした数字も素晴らしいのだが、DJの記録を眺めてあらためてすごいと感じさせられたのは、2008年に米ツアー初優勝を挙げて以来、昨季までの10シーズンすべてにおいて最低1勝以上を挙げてきたことだ。上海で迎えた今大会の最終日に勝利を飾れば、その記録は11シーズンへ延びるはずだった。

しかし、蓋を開けてみれば、DJの独り舞台となるはずの最終日は、同組で回っていたブルックス・ケプカ、ヘンリック・ステンソン、1つ前の組のジャスティン・ローズを交えた4人の争いに変わり、終盤に入ると、DJはローズに追いつかれ、追い抜かれ、プレーオフにすら持ち込めず、逆転優勝を許す結末となった。

最終日のDJはノーバーディー、5ボギーで“77”。あえなくバンカーに落とした16番の第2打、フェアウエイから池に落とした18番の第2打あたりは、前日までとはまるで別人のようなプレーぶり。世界ナンバー1のメジャーチャンプでも、何かがほんの少し狂うと、瞬く間にボロボロに崩れてしまう。そんなゴルフの怖さを見せつけられた最終日だった。

勝って達成されるはずだった数々の記録はすべて米ツアーや世界のメディアの皮算用と化し、代わりに達成されたのは8打差からの逆転負けという屈辱的な記録。この日、喫した「77」は、2010年ペブルビーチでの全米オープン最終日にやはり首位から崩れて陥落した際の「82」に次ぐDJ自身のセカンド・ワーストだった。

「理由はシンプル。何ひとつうまく持っていけず、パットもひとつも決められなかった」
 ゴルフに完璧はない。4日間、すべてにおいて目覚ましいプレーを続けることは難しい。百戦錬磨のDJをもってしても、大崩れしてしまう日はある。その日が優勝を目前にした最終日と重なってしまった現実を、DJは「シンプルな理由」と言った。

それならば、なぜ、そういう現象が起こるのかという疑問が沸いてくる。しかし、それはゴルフ史上、誰も解明できていない謎であり、謎が謎のままだからこそ、ゴルフは奥が深いのだと思う。

逆転優勝を果たしたローズも、こう言っていた。

「想像もしていなかったことが起こった日。いろいろな条件が揃わない限り、起こることのないことが起こった。とりわけ、DJのような選手が相手なら、なおさら起こることのないことが起こった」

DJが優勝したら達成されていたはずの数々の記録。おそらくそれはDJの大崩れを誘発した要素ではないだろう。なぜなら、彼はそうした記録には日頃から無頓着。あの手この手で質問しても、彼の返答はいつもシンプルだ。

憧れは「タイガー・ウッズ」。なりたいものは「世界一」。目指すことは「Win again」。もしもDJの最終日の大崩れがメンタル面に起因していたとしたら、それは記録を意識したからではなく、「Win again」を意識して、あまりにも勝ちたいと思ったからではないか。そう思えてならない。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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