千葉県にある東急セブンハンドレッドクラブ 西コースにて行われた「富士通レディース」はトータル14アンダーまで伸ばしたテレサ・ルー(台湾)の優勝で幕を閉じた。最終日の最終組はテレサ、賞金ランク2位の鈴木愛、同3位のイ・ミニョン(韓国)。加えて笠りつ子や川岸史果、そしてキム・ハヌル(韓国)といった賞金ランク上位勢が見せた戦いを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が掘り下げる。

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■ツアー屈指のショットメーカーをショットでねじ伏せたテレサ・ルーの強さ
パーオン率1位のミニョン、同2位のテレサとの戦いとなった最終日。序盤からバーディを次々に奪ったテレサに対し、トップを奪われたミニョンは我慢の展開。中盤までは楽にテレサが優勝するかと思ったが、ミニョンは13番のボギーの直後の14番から3連続バーディ。さらに2打差で迎えた1番難易度が高い18番でもバーディチャンスにつけるなど、最後までテレサにプレッシャーをかけた。結局、テレサが2打差で勝利したが、最後まで痺れる名勝負となった。

「ショットメーカーの対決となりましたね。ミニョンさんは今、賞金ランク上位勢で一番良い状態にあるのではないでしょうか。アドレスを見れば好調さが分かります。あれだけ自然体でポンっと立てているのだから。余計な力感が一切感じられません。そこから下半身でしっかりとスイングができている。最終18番の2打目は3番アイアンで、雨でグリーンが柔らかかったとはいえ、ランは2ヤードほど。3鉄であれだけの高さを出せる人はそういない。状態で言えば現状ツアーナンバーワンのショット力だと思います(辻村氏)」

そのミニョンをねじ伏せたテレサだが、辻村氏が「スタンレーレディス」、そして富士通-の練習ラウンドを見る限り、「ドライバーにしてもあまりフェアウェイ捉えていませんでした」とそこまで良い状態には感じなかったという。だが、今大会の最終日には良い時に戻っていた、と続ける。

「テレサさんは元々スイングであれこれやるタイプじゃありません。練習ではとにかくバランス良く、タイミング良く、を繰り返して調子を上げていきます。これはしっかりとした技術、そして下半身のトレーニングを積んできた土台があるからできること。7、8月と苦しんでいたようですが、そのスタイルがようやく実を結んだのでしょう。加えて東急セブンハンドレッドクラブは2015年に1度勝っている舞台。そんな相性の良さも良いイメージを生んでくれたと思います」

「そして何よりもミニョンさんでしょう。相手がバーディチャンスにつけたら、自分もつけ返す、というショットという持ち味同士のぶつかり合いがテレサさんのポテンシャルを最大限に引き出していましたね。相手に対していい意味で“どうだ見たか!”というショットの応酬でした」。2人ともホールアウト後に「今日はとても楽しいゴルフでした」と話したショットメーカー同士の名勝負。テレサは「ミニョンさんのショットを見てるだけで楽しかった」とも。そんな高レベルの戦いが2人の潜在能力を最大限に発揮させた。

また「見逃してはならない」と辻村氏が話すのはテレサの18番の3打目。ティショットをエッジまで175ヤードのラフに入れて、「この深さではグリーンまで届かない」とピンまで残り68ヤード地点にレイアップした1打だ。このアプローチをする前にグリーンに落とす位置に確認する際、先に打った鈴木愛のディボット跡とボール位置を確認。バックスピンがかなり効く状態だと判断すると「スピンがかかりすぎないように」と58度から54度にチェンジ。見事3mにつけてパーをもぎ取った。「当たり前のことですが、こういうことをしっかりとできるから勝てる。さすがベテランだな、といった辺りですね」

■ショットメーカー2人に共通する“脱力” 身に付けるには柏原明日架の練習法が良い!そのテレサ、ミニョンに共通する良いところとして辻村氏が挙げるのが「力が抜けていること」だ。「テレサさんはなんせアドレスが自然体ですよね。肩、ひじ、腕、指先まで力が抜けている。まさに理想形。何故かと言うとグリップが柔らかいからです。だから上体の力が抜けて低重心で打てています。脱力できているからヘッドスピードは出るけど、傍から見れば振ってるようには見えません。この感じは片山晋呉さんを見ているようです」。富士通は3日間雨だった。悪コンディションでも無理に飛ばそうと力まず、力を抜くことができたテレサ、ミニョンが上位にこれたのは必然かもしれない。

だが、アマチュアゴルファーは「力を抜け」と言われても中々できないもの。辻村氏に聞いてみると「今大会3位に入った柏原明日架さんの練習法が良い」と教えてくれた。

「柏原さんは全体的に緩むクセがありましたが、今はショットの途中で緩まず振れています。女子オープンくらいから調子は上向きですね。そうなった理由の1つとして、最近取り入れた軽い棒でスイングをする練習が挙げられます。アマチュアの方は棒が無ければシャフトを振ってみてください。軽いものをビュっと速く振るためには、力任せではなく脱力しないといけません。つまり“速く振ろうとして力が入っちゃうから、力を抜かないと”ではなく“脱力しないと速く振れない”という思考になるわけです。脱力して振れているかどうかは“ビュッ”という音が教えてくれますよ」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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