米ツアーは今週から新シーズンが始まった。開幕第1戦のセイフウエイ・オープンには新しいシーズンに自分なりの想いを馳せ、「よーし!」と意気込んでやってきた選手たちが集結していた。

松山英樹とタイガーの2ショット写真
初日から3日目まで首位を走っていたのは、今季ルーキーのタイラー・ダンカン、28歳。2014年からウエブドットコムツアーとPGAツアー・ラテンアメリカの両方を転戦しながら腕を磨き、昨季のウエブドットコムツアー賞金ランク23位となって、今季からついに米ツアー選手になった。

2015年全米オープンに地区予選から自力出場を果たし、予選落ち。それがダンカンが過去に出場した唯一の米ツアー大会。今大会は生涯わずか2試合目。正式メンバーになってからは当然ながら初戦。その経験の少なさは、やっぱり最終日のダンカンの心とゴルフを変えてしまった。

いきなり3連続ボギー発進。それまでの3日間とは別人のように崩れていく新人の姿を傍目に、リーダーボードを昇ってきたのはメジャー5勝、通算42勝、47歳のフィル・ミケルソンだった。

とはいえ、昨季のミケルソンはひどく苦悩していた。2013年全英オープン以来、勝利からはずっと遠ざかっているが、昨季は優勝や優勝争いどころか、トップ3にすら入れなかった。

以前から患っていた関節炎の影響もあった。6月の全米オープンは長女の卒業式のために欠場し、その直後には長年の相棒キャディ、ジム・“ボーンズ”・マッケイとのコンビを解消。全英オープン、全米プロは予選落ち。だが、そんな流れを一変させたのがプレジデンツカップだった。

米国のために戦いたい一心で一念発起したミケルソンは、プレーオフ・シリーズで突然奮闘し、キャプテン推薦で大会に出場。そして3勝1分の大活躍を披露した。「僕のゴルフは、今、ようやく、とてもいい状態にある。この状態のまま、優勝を目指してセイフウエイに出る」。

その意気込みをミケルソンは最終日の追撃という形で披露し、優勝まであと一歩と迫ったが、絶対にパーで収めたかった大詰めの17番で短いパーパットを外したとき、5年ぶりの復活優勝の夢が遠のいた

「あれを外さなかったら、グッドランができていたのに…」。

優勝を遂げたのはディフェンディングチャンピオンのブレンダン・スティール、34歳だった。スチールは2年前のこの大会で首位で最終日を迎えながら崩れて敗北。しかし、昨年はその雪辱とばかりに勝利を挙げ、そして今年、2連覇を果たした。

その歩みを振り返れば、今大会最終日に崩れたダンカンも、これからきっと強くなるのではないかと思えてくる。最終日3オーバーと崩れたとはいえ、米ツアー2試合目にして5位は立派である。この経験を糧にして強い選手に成長してほしい。

それにしても「ゴルフはメンタルなゲーム」とは、本当にその通りだとつくづく思わされる。新人ダンカンが崩れたのは経験不足から来る緊張やプレッシャーが原因だった。

ミケルソンが不調から好調に突然転じたのは、プレジデンツカップに出てアメリカのために戦いたいという気持ちに起因し、今日の17番でパーパットをわずかに外したのも、久しぶりの復活優勝を意識したことと無関係ではないだろう。優勝の可能性が限りなく小さくなって迎えた18番では、バーディーパットを難なく沈めたところにも、彼の心理状態が反映されていたのだと思う。

そして、スティールが、かつては崩れて泣いた大会で堂々2連覇を果たしたことは、ゴルフ場も練習場もない環境から苦労してプロゴルファーになった険しい生い立ちの中で身に付けたネバーギブアップと我慢という彼の精神力が大きなモノを言っていた。

「昨季は僕にとってベストシーズンだった。でも、それを一旦ゼロに戻し、今週から新シーズンをあらためてスタートだと自分に言い聞かせていた。そこでグッドスタートが切れたことが、とてもうれしい」。

大きく捉えれば、5位になったダンカンも、1年ぶりにトップ3に入ったミケルソンも、グッドスタートを切ったと言っていいのではないか。スター選手の姿は少なかったが、いろんなドラマがあった開幕第1戦だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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