愛知県にある新南愛知カントリークラブ 美浜コースにて行われた「マンシングウェアレディース」はトータル13アンダーまで伸ばした川岸史果の初優勝で幕を閉じた。我慢合戦となった前週の「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」とは一転、バーディ合戦となった今大会を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が掘り下げる。

【スイング連続写真】父譲り!?“飛ばし要素”が満載の川岸史果
■持ち味発揮でようやく初優勝 川岸史果は上から下までバランスが取れている
多くの選手がスコアを伸ばす中、川岸も2打差の7位タイで迎えた最終日に猛チャージ。3番から8番まで6連続バーディを奪うなど、8バーディ・ノーボギーの“64”。上位陣を華麗にかわして初勝利を手にした。

「川岸さんらしいドライビングディスタンス2位の飛距離を存分に活かした攻撃的なプレーでしたが、小技も見逃してはなりません。例えば初日と2日目に2回ずつバンカーに入れていますが、4回中4回サンドセーブができています。また最終日のチップインバーディに代表されるようにアプローチも多彩。使うクラブがサンドウェッジに限らずピッチングや9番、8番アイアンなど1つにこだわらず状況に応じた引き出しがあって、転がしたり上げたりとその場に応じた最善のチョイスができる。ドライバーからショートアイアン、アプローチに至るまですべての部分で自分の良い部分を出せたからこそ、64という数字を叩きだせたのだと思います」

■飛ばしの秘訣はテレサ・ルーと共通する“シンプル”な体の使い方
また、川岸の飛ばしについては「飛距離だけでなく、まっすぐ飛ばす力があって、飛ばし屋の中ではOBが少ない」と語る辻村氏。スイングを掘り下げていくと、テレサ・ルーと共通する下半身の使い方に目が行くという。「生まれ持った体の強さが飛距離に大いに関係しているのは言うまでもありませんが、スイング面でも飛ばす“ツボ”を心得ているように見えます。トップが深く、上と下の捻転差が非常に大きい。強さだけでなく柔らかさもスイングから感じます」

「その深いトップからダウンスイングにかけて、しっかりと下半身から切り返せており、上体が全く崩れません。軸足に重心を溜めて、その上で切り返せているのです。そして上体が開かずにインパクトを迎えます。地面を掴んでいる時間が長いのです。この地に足がついたスイングがドライバーの飛距離を生み、アイアンの高さを出しているのです。この下半身の戻し方はテレサさんと似ていますね。シンプルな動きで飛距離を生み出しています。だから2人とも所謂“バタついた飛び”ではなく、しっかりとした飛びなのです」

また川岸のスイングの大きな特徴であるテークバックで30cmくらい引いたところで一瞬の“静”をつくることについては、「練習の一環でこの動作を始めたことが、打ち込んでるうちにポイントとタイミングがあったのでしょう。それがコースでやってみてもハマったから、試合でも継続してやっているのだと思います。この動作をやる理由は2つあります。1つは自分なりのタイミングの取り方としている点。もう1つが体の開きを抑えて、前傾を保つためでしょう。インパクトにアジャストしようと体を動かしても浮き上がったり体が開いたりとどこかでズレが出るもの。それを思い切って30cm手前の静止したところに振り下ろすイメージでクラブを降ろすことで、状態が浮いたり体が開くのを抑えています。彼女なりの工夫と言えるでしょう」

■アメリカ挑戦もチャンスあり!最終予選会場は飛ばし屋有利
川岸は「全米女子OPに出て世界レベルを体感しましたし、アメリカのコースは洋芝であったりしてまた違う楽しさがあります。アメリカは飛距離があるほうが生かされるコース設計なので、自分も少しはチャンスかなと」と話しており、今後10月に行われる米ツアーのセカンドQTを受験して来季の米ツアー参戦を目指すことを視野に入れている。これについて辻村氏も太鼓判を押す。

「今、アメリカはドライバーの飛距離、そしてアイアンの高さが求められるコースセッティングの大会が多い。リディア・コみたいな技巧派もいますが、アリヤ・ジュタヌガーンやレクシー・トンプソンなどが活躍するパワーゴルフとなっています。その中でも川岸さんの飛距離、高さは見劣りしません。十分上位クラスです。アリヤ、レクシーといった規格外の選手たちと同等、とまでは言えませんが食らいついていけるだけのレベルにはあると思います」

また、川岸の普段の立ち居振る舞いも推薦材料の1つ。「川岸さんはルーキーですが、会場で不安そうな表情を見せたり、誰かと行動するようなことがありません。自分がゴルフ場に何をしに来ているか分かっている。当たり前のことのように感じるかもしれませんが、ツアー参戦初年度で中々できることではありません。川岸さんはやることが明確で、動きに無駄がない。目指す先も明確だから強い選手と同じような時間の使い方ができています。練習ラウンドの仕方も素晴らしい。試合を想定してできている。ピンポジを想定してアプローチなども考えている。スイングチェックなどをせず、今コースでやるべきことのみを行っている。中身の濃いラウンドに将来性を感じます」。物怖じしない性格は、異国の地でも普段の力を発揮できそうだ。

米ツアー参戦の権利獲得には10月のセカンドラウンド、そして11月のファイナルラウンドを突破することが条件となる。その最終予選会が行われるフロリダ州オーランドにあるLPGAインターナショナルコースも、川岸のアメリカ参戦を後押ししそうだという。「2つあるうちの1つ、6ラウンド中4ラウンドするほうのコースはワイドで川岸さんのようなパワーヒッターに有利なコースです。この利を活かせば十分にチャンスがあると思いますよ」。

今年すい星のごとくツアーに現れたルーキーはどこまで羽ばたいていくのか。今後も注目して見ていきたい。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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