米ツアーのプレーオフ・シリーズは「4試合の中だけで成績が良かった人が総合優勝と10ミリオンのビッグボーナスを手に入れるため、ギャンブル性が高く、選手の真の実力が反映されない」「だから選手たちはプレーオフを重要視していない」という声がいまだに漏れ聞こえてくる。

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だが、プロアスリートは勝ってナンボ、稼いでナンボの商売。大金が懸かるプレーオフ4試合なのだから、世界のトッププレーヤーたちが重要視していることは疑いようもない。
メジャー4大会で精魂尽き果て、プレーオフでは「気が抜けてしまう」というケースは、もしかしたらあるかもしれない。だが、今年の全英オープン覇者のジョーダン・スピースはプレーオフ第1戦でも第2戦でも2位になり、今週の第3戦、BMW選手権では7位と健闘を続け、フェデックスカップランクは堂々1位で来週の最終戦を迎える。

全米プロ覇者のジャスティン・トーマスは「僕たちは、メジャーと同様、プレーオフにも照準を合わせ、自分のゴルフの調子がピークになるよう努めている」と言い切り、その言葉通り、プレーオフ第2戦で勝利。そして、フェデックスカップランク2位で来週の最終戦に挑む。

そう、プレーオフ4試合はメジャー4大会が終わった後も体力、気力、勝利への渇望を維持できるかどうかの持久戦。そこだけ見ればギャンブル性が溢れているが、シーズンを通して眺めれば、我慢比べ、根比べの戦いだ。

だからなのだろう。人生やキャリアを通じて苦難を潜り抜けてきた人ほど、プレーオフで底力を発揮する傾向は以前から見られ、今年もそうなりつつある。

ジェイソン・デイは今大会開幕直前に、長年の相棒だったコリン・スワットンをキャディから外し、ハイスクール時代からの友人、ルーク・リアドンを臨時キャディに付けた。今季のデイは成績不振が続いており、「いいショットができなかったとき、ついついコリンのせいにしてしまい、口もきかなくなる。ひとえに僕が悪いんだけど、コリンは今でも僕にとって大切な人だから、僕らの関係が決定的に壊れてしまわないうちに距離を置きたい」と考えたそうだ。

そんなドタバタ劇を逆に好機に変え、今大会のデイは4位に食い込み、フェデックスカップランクは28位から15位へ一気に上昇した。幼少期に父親を癌で失い、以後、荒れた生活、貧しい生活を経て、全寮制のハイスクールへ進み、プロゴルファーになった紆余曲折の人生は、デイを我慢強く、そして貪欲にしたのだと思う。

今大会で2位になったジャスティン・ローズは17歳で出場した1998年全英オープンでいきなり4位に食い込み、スポットライトを浴びたが、直後にプロ転向してからは21試合連続予選落ち。欧州ツアー初優勝まで4年、米ツアー初優勝まで11年を要し、「僕は忘れられた存在だった」。そんな我慢の日々を乗り越えたからこそ、その先に全米オープンを含む米ツアー通算7勝やリオ五輪金メダルがあった。

同じく2位のリッキー・ファウラーも「人気ばかりが先行し、過大評価されている」と揶揄された時期があり、今でもメジャー未勝利に厳しい声が飛ぶことはある。だが、彼はそうした周囲の声を跳ね飛ばしながら、子供たちの憧れの存在として胸を張り、米ツアー通算4勝を挙げてきた。

そして、完全優勝を遂げたマーク・リーシュマンは、かつてゴルフの費用を稼ぐために工場に夜勤で働き、時給10ドルで危険な作業に従事したことがあった。「1ドルの価値を知ることができて良かった。あれが僕のモチベーションになった」。2年前には愛妻が敗血症になって生死の境をさまよい、公私ともに、たくさんの苦難を乗り越えてきた。

米ツアー9年目、33歳で3児の父親になった今年、米ツアー通算3勝目、今季2勝目を挙げ、フェデックスカップランク4位で来週の最終戦に挑む。「来週はツアー選手権、その翌週はプレジデンツカップ。いいことがたくさん待っているようで、とてもうれしい」。

辛抱強く生きてきたリーシュマンは、最高の舞台でゴルフができる今に感謝しつつ、最後まで与えられた試合に全力投球。そんなひたむきな姿勢に心を打たれたコンウェー・ファームズのギャラリーは、だからこそ彼に温かい声援を贈っていた。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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