ここ数年、米ツアーのレギュラーシーズン最終戦、ウインダム選手権を迎えるたびに思い出されるのは、2013年の同大会最終日の一場面だ。

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あの年、米ツアー出場権獲得を目指して戦っていた松山英樹は、この大会で15位になり、翌シーズンのフル出場権を確定させた。その一方で、26位に終わった石川遼は、フェデックスカップランキングでも賞金ランキングでも125位から漏れ、ウエブドットコムツアー・ファイナルズ4試合へ挑むことが決まった。

あのとき、松山と石川は握手を交わし、お互いの健闘を讃え合っていた。だが、希望に溢れて来季を迎えようとしていた松山と敗者復活戦に賭ける以外に道がなくなった石川の姿は、とても対照的で、だからこそ、その場面は私の脳裏に焼き付いた。

あれから4年が経過した今年。松山は年間3勝を挙げ、米ツアー5勝目をマークし、世界の1位、2位を競い合うトッププレーヤーになり、前週は全米プロで優勝争いを演じたばかりだ。

石川は公傷制度に助けられて今季の米ツアーに挑み、必死の奮闘を続けてきた。ここ最近は出場6試合連続予選落ちを喫していたが、今大会では決勝進出を果たし、意地と執念を見せてくれた。だが、残念ながら来季出場権を得ることはできず、4年前と同様、ウエブドットコムツアー・ファイナルズ4試合へ進むことが決まった。

今大会に生き残りを賭けていた岩田寛は、出場7試合連続予選落ちとなり、ファイナルズ4試合にも進むことが叶わず、米ツアーからは当面、撤退するという。

日本人選手の中だけでも、これだけ動きや開きがあるのだから、米ツアーで戦う全選手の中には、さらなる激動があちらこちらで起こっている。今大会でフェデックスカップランキング125位にぎりぎりで滑り込んだ選手たちは、すぐさまニューヨークへ移動し、明日からのプレーオフ4試合へ挑む。その一方で125位に漏れた選手たちは石川同様、ファイナルズ4試合で敗者復活を目指す。世界での戦いは、文字通り、弱肉強食だ。

最終日、優勝争いは混戦となったが、終盤に次々にバーディーを重ねたヘンリック・ステンソンが抜け出し、最後は慎重にパーパットを沈めて米ツアー通算6勝目を挙げた。

来季の出場権獲得を目指す瀬戸際の選手たちが多数出場していた今大会において世界ランキング9位で出場したステンソンは世界ランキング最上位。とはいえ、彼にとっての今季は決して楽な戦いではなかった。

昨年は全英オープンを制し、リオ五輪では銀メダルを獲得。「いい1年だった」と感慨深げだったが、今年は優勝がなく、マスターズも全米オープンも予選落ち。

ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ全英オープンでは初日の試合中に宿舎に空き巣に入られ、金品や試合で着るはずだったウエアまで、すべて盗まれた。

だが彼は、難を逃れた洗濯物袋からいくつかを洗濯して急場を凌ぎ、警察の現場検証等々に4時間超を費やした一夜を経て、2日目も3日目も踏ん張った。そして、大会連覇の可能性を感じながら7位で最終日を迎え、11位に食い込んだことは、気持ちが沈んでいた今年のステンソンにとって「大きな自信になった」。

「いい1年」が瞬く間に苦しみの年に様変わりし、前年は優勝の喜びを噛み締めた大会で翌年は空き巣被害に遭うこともある。いつ何が起こるか本当にわからない。そんな怖さと厳しさを痛感しているからこそ、ステンソンは今大会に出場し、フェデックスカップランキング75位を少しでもアップさせてプレーオフ4試合に挑もうと考えていた。事実、今大会の優勝により、ランキングは75位から23位へ急上昇した。

最終日の優勝争いは最後まで僅差だった。72ホール目のパーパットを入れるか、外すか。勝利の行方、そして運命をステンソンはそこで自分に向けたのだ。

「タイトなレースだった」。

運命はどこかで必ず分かれ、その分岐点にはいつも対照的な姿がある。だが、そこでどちらに進んだとしても、さらなる運命の分岐点が、いつか再び訪れる。その繰り返しなのかもしれない。ゴルフも人生も、いつだってタイトなレースだからこそ、「何があっても、前を向いて進む以外に道はない」。

黙々と戦って勝利したステンソンは、そう言っていたように思えてならない。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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