「サマンサタバサレディース」でツアー初参戦、初優勝を成し遂げたキム・ヘリム(韓国)。韓国ツアーの賞金ランキング2位につける実力は本物で、最後の最後までスキを見せないゴルフで2位に4打差をつけて完勝した。そんなへリムの強さを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が語る。

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■上田桃子、吉田弓美子も調子は悪くなかった ただ、勝者が良すぎた
今季から距離が延長し、これまで行われた大会では「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」に次ぐ長さとなったコース、そして連日35度近い灼熱の中での戦い。例年のバーディ合戦が嘘のようにタフな中での戦いとなった今年のサマンサタバサレディース。そんな中、ヘリムは盤石のプレーでただ1人2桁アンダーを叩きだした。実際、同組で戦った上田も「自分から崩れる選手ではない。勝負にいかないと勝てない」とスタート前から感じていたという。

「ヘリムさんは寸分のスキが無かったですね。ショット、ショートゲームはもちろん、しっかり振っても崩れない体幹を含めたボディバランス、サンデーバックナインでギアを上げられる体力、一切狂わないルーティン。すべてにおいて完成度が高かった。同じく最終組で回った上田さん、吉田弓美子さんだって決して調子は悪くなかったと思います。10番を終えて2人は1打差まで詰め寄って並びかける雰囲気すらありましたから。普通なら2人が優勝争いしてもおかしくなかった。ただ、それ以上にヘリムさんが良すぎた。付け入るスキが無かったですね。ほぼノーミスですから」。そのミスの少なさの理由はスイングにあるという。

■“しっかりと返ってくる”ドローの秘密はグリップエンドとヘソの距離にあり!
ヘリムのスイングでまず辻村氏が褒めたのがアドレス。「立ち姿を見ただけで“綺麗なスイングをするんだろうな”という感じ。グリップ、アドレスの完成度が高い。スイングはお手本のようなインサイドイン。しっかりと内からボールを叩いて、綺麗なドローボールを打ちます」

そして安定感を生み出しているのが、グリップエンドとヘソの距離感だ。「アドレス時とショット時でこの距離感がほぼ変わらない。トップからアドレスした通りに戻ってきて、インパクトした後に体が回転。そこからようやく手元が伸びていく。しっかりヘッドが立って入ってくるし、ボディターンで打てている。だから“しっかりと返ってくる”ドローボールが打てるんです。ボールを捉える前により感覚が空けば、フェースが開いた状態でインパクトを迎えて右へ出た球が正確に戻ってきません。そして、その間隔を急に縮めようとしてこねるとチーピンになってしまいます。ドローを打つアマチュアのみなさんも参考にしてみてください」。加えて先述の通り、強く振りに行っても崩れない体の強さもあるから常に狙った通りのドローボールで攻められるのだ。

■世界を席巻する韓国の育成システムをモデルに
ヘリムだけでなく、「全米女子オープン」を優勝したパク・ソンヒョン(韓国)と次々に現れる韓国の実力者は日本だけに限らず枚挙にいとまがない。一昨年の「THE QUEENS presented by KOWA」でソンヒョンのプレーを見たという辻村氏は「線は細いけど280ヤードくらい飛ばす上で曲がらない。パー5は全て2オンしていたと思う。それもティショットがちょっと良ければ2打目はアイアンを握っていましたから」。2人だけでなく、強い韓国人に共通するのが体幹・下半身の強さ、そしてしっかりとしたスイングだ。

「韓国のゴルフ界はスイング面、体力面ともに何年もかけて培われた育成のシステムがしっかりと出来上がってる。だから強い選手が生まれるし、その競争に勝ったとなれば自信も芽生えるでしょう。日本の育成システムも韓国をモデルにして考え直していかなければならないと思います。いくら食文化や骨格などの生まれ持った体型が異なると言っても同じアジア人。育成のメソッドが固まれば日本人ゴルファーだってもっともっと強くなれます」。

その中で1つ、日本のジュニアゴルファーへメッセージ。「ジュニアの頃から大きな負荷をかけなくても、自重でできるトレーニングをもっとして欲しいですね。腹筋だったり、背筋だったり。自重なら故障もほとんどないでしょう。そしてランニングもしてください。韓国の選手に話を聞くとみんな5km、10kmと普通に走っています。ジュニアの頃から鍛えていないと間に合いません。そういったタフな練習を乗り越えることが、体力をつけることはもちろん、自信へとつながりますよ」

■岩橋里衣、濱田茉優それぞれのシードへのカギ
へリムが独走した今大会で気を吐いた若手が2位タイの岩橋里衣、5位タイの濱田茉優の2人だ。岩橋は出場した17試合中、予選突破はわずかに6回(うちヨネックスレディスは2日間競技で76位だったため賞金はゼロ)ながら、約1,200万円を稼いで賞金ランク44位とシード圏内につけている。「いわゆる“ハマったときに強い”タイプ。後半戦でも自分と相性の良いコース、状態が良い時に上位争いできればシードも見えてくると思います。そこを取りこぼさないことです」

一方、濱田茉優はショットを評価。「練習場で“良いスイングをしている子だな”と見ていました。ゆったりしたスイングでとても安定感がある。濱田さんはこの3日間、ヘリムさん、成田美寿々さんを差し置いてパーオン率1位でした。もちろん攻め方など個人差はありますが、立派な数字です。シーズン通してもパーオン率20位、フェアウェイキープ率22位。ショットが安定しているのは間違いありません」

それでも賞金ランク59位に留まっているのは他に理由があるということ。「平均パット数73位のパターだったり、93位のサンドセーブ率だったり。課題のパット、アプローチ、リカバリーがもう少し良くなって来れば、今のショットなら賞金シード獲得も十分にあり得ると思います」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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