「ニッポンハムレディス」で2位に6打差をつける圧勝劇を見せたイ・ミニョン(韓国)。昨年末のQTで4位に入り、今季から日本ツアーに参戦するツアールーキーだが、「ヤマハレディースオープン葛城」に続き、参戦1年目ですでに2勝。トップ10以内9度は、現在賞金ランク首位のキム・ハヌル(韓国)と並ぶ数字だ。ツアーNo.1と賞賛を受けるミニョンのショットについて、ツアープロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。

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■つかまったフェード=パワーフェードを打てる理由

ミニョンの総合力の高さは、スタッツを見れば一目瞭然。特筆すべきはドライバーショットだ。ドライビングディスタンスが13位(245.24ヤード)で、フェアウェイキープ率が26位(66.3690)となっており、女子ツアーの"トータルドライビング"を算出すれば、圧倒的な1位となる。(※トータルドライビング=ドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率をポイント換算した順位。1位のミニョンが「39」、2位のアン・ソンジュが「50」、3位の申ジエが「52」)

「彼女の特徴は"つかまったフェードを打てる"ことです。ドローボールではなく、フェードボールで、245ヤードを約65%の確率でフェアウェイに置ける…日本ツアーでは彼女しかいません。

僕が、ミニョンさんのスイング前の素振りを後方から見たときに感じたのは、"え、スライスしかでないんじゃないの?"です。素振りでは、大げさなくらいカット軌道を意識して、左サイドに振っていきます。でも実際に打つと、曲がりが少なく力強い"パワーフェード"。彼女のグリップは左手の甲が上を向くフックグリップで、右手はスクエア。フェードを打つスイング軌道+つかまえるグリップのマッチングが基本になっていますね。

トップは高く上げすぎずにコンパクト、そしてダウンスイングからインパクトにかけては、クラブヘッドが体の正面を通りすぎるまで、左ヒザ、左頬がまったく目標方向に流れません(=左側に動かない)。インパクトではキャップのツバが逆に右側を向いているイメージ。顔が地面を向いている時間が非常に長いので、バックスイングで作ったパワーをロスをせずインパクトにつなげています。

さらにフォロスルーでは"絶対に"左ワキが締まったまま。素振りでは大げさなカット軌道で左サイドに振っていく、といいましたが、実際のスイングではきれいな軸回転で左ワキがギュッと締まっているので、インパクトで球が擦れることなく飛んでいくのです。ここまで説明してきましたが、これを18ホール続けるのはなかなか難しいこと。理想的なフェードヒッターといえるでしょう。

北海道の洋芝は、ヘッドに絡みつく感覚が普段の倍近くある。"ラフに入ったら苦戦する"という思考は、選手たちの頭にこびりついていたと思います。フェアウェイが狭い、とは言えないコースですが、多くの選手はメンタル的に"狭い"と感じたでしょうね。ティショットにプレッシャーがかかる試合だったと考えれば、ミニョンさんの優位性が発揮された試合といえるでしょう。夏場は当然フェアウェイキープがポイントのひとつとなるので、今後も優位に働くのは間違いないですね(辻村氏)」

■キム・ハヌル、堀琴音…つねに上位に顔を出す"役者"のストロングポイント

結果はミニョンの圧勝となったが、ハヌル(単独2位)、堀琴音(単独3位)と"役者"がしっかりと結果を残した。辻村コーチは、今大会での彼女たちのショートゲームに注目したという。

「強い選手はいつの間にか上位に躍り出る…といいますが、ハヌルさん、堀さんは毎試合存在感を出してきますよね。ハヌルさんはショットの好調さが今年は際立っていますが、いまはパッティングに非常に自信が持てていると感じます。テークバックの振り幅の大きさを"1"とすれば、フォローは"2"。フォローでしっかりとヘッドを出していければ、思った方向に打ち出せますが、自信がないと心理的に打てない。これは彼女のパットへの自信の現れですね。

堀さんの注目ポイントはアプローチです。彼女は"男子プロのような"アプローチをする選手。女子プロのアプローチは、バックスイングからダウンスイング、フォロースルーまでが等速のケースが多い。アマチュアの方へのレッスンでも、急加速、急減速はミスの元と言いますよね? ミスをしないためには等速のほうがいいのですが、堀さんはもっと攻撃的。アプローチ前はヘッドを加速させていくようなイメージで芝を何度も切り、実際も加速感があって少し低めに球を出して寄せていく。ツアープロコーチの立場から客観視して見れば、"打つ前から上手い"。素振りで、球の高さ、落としどころ、ランの量、が完全にイメージができているからこそ"上手く寄った"ではなく、"打つ前から結果が見えている"と思いますよ(辻村氏)」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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