テレサ・ルー(台湾)の優勝で幕を閉じた「ニチレイレディス」。終わってみればただ1人の2桁アンダー。テレサの攻撃力が光った試合でもあった。そんな千葉決戦の深層を上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が語る。

【スイング解説】テレサ・ルーはシャフト扱いに長けた“ベストスインガー”
■歴代覇者はショットメーカーばかり 今年もパーオン率1位のテレサがV
「ニチレイレディス」は袖ヶ浦カンツリークラブ新袖コースに変わって以降、8回開催されている。歴代覇者を見てみると3連覇の申ジエをはじめ、全美貞(韓国)、吉田弓美子などショットメーカーばかり。そして今年優勝したテレサは現在パーオン率1位のショット率を誇る。

「林間コースで常にドッグレッグ、そしてフェアウェイを絞っていてグリーンは小さい。フェアウェイをキープすることが特に問われるコースなので、ショット力がカギを握りました。またグリーン周りはバンカーが多いですから、狭いフェアウェイにきちっと置いて小さいグリーンをしっかりと捉える。そういった能力に秀でた人しか勝てない舞台です(辻村氏)」

続けてテレサのショット力について解説。「何度もこの見聞で取り上げていますが、スイング中に余計な“角”がないワンスイング。また、ちゃんと下半身でスイングできています。軸足に体重が乗っている時間が長いですから体が流れたり浮き上がったりがない。クラブが通り過ぎるまでしっかりと頭が残っています。加えて上体の力感がどのクラブを持っても同じ。まさに理想的と言えます」

■テレサ・ルーとキム・ハヌル 今季複数回優勝を挙げている2人の共通点
そんなショットメーカーのテレサだが、今回辻村氏がより着目したのはセッティング。奇しくも今季早くも3勝を挙げているキム・ハヌル(韓国)と同じPWを含めたウェッジ4本体制(ハヌルの場合PWに相当する10番アイアンにウェッジを3本入れたセッティング。コースによって変化あり)。複数回優勝を挙げている2人が似たような組み合わせと言うのが面白い。

「距離が出る2人だからこそのセッティング。飛ばせるから下の番手に厚みを持たせることができる。ウェッジを増やすことで、微妙な距離感を“スイングの強弱”ではなくクラブによって調節できる。バーディは“飛距離”ではなく“ウェッジコントロール”で獲るもの。これは鉄則です」。ハヌルは平均バーディ数3位、テレサは4位という数字がウェッジの重要性を物語っている。

2人以外にも上田桃子や葭葉ルミら女子ツアー界のトレンドになりつつあるウェッジ4本体制。アマチュアにも真似して欲しいという。「ウッドの本数を減らすリスクはありますが、フルショットで距離に対してコントロールできるメリットは大きい。アマチュアの人にこそしてほしいセッティングですね」

■武尾咲希は“ゆったり”が持ち味
そんなテレサの壁に阻まれた新鋭2人。武尾咲希はこれで獲得賞金が早くも2,100万円を突破。来年の賞金シードに確定のランプを灯した。そんな武尾の強さを辻村氏は“ゆったり感”だと解説する。

「武尾さんのスイングテンポはゆったりそのもの。ゆっくりテークバックして、全体のテンポを作り上げています。クラブをゆっくり上げるから手で上げることはなく、体を使ってトップまで持って行く。そしてしっかりと肩が入るから捻転が深い。また、打ち急ぐこともないからスピン量も安定しているし、ミート率も一定。曲がり幅も少ないです。打つというよりも運んでいくタイプ」。フェアウェイキープ率7位の秘密がここにある。

それ以上に目を引くのがグリーン上。「パッティングが彼女の一番の武器だと思いますね。タッチが良い。センスを感じさせますし、集中力も感じます。簡単なミスが無くなってくればさらに上位を狙えるでしょう」

■一方の新海美憂は新人らしからぬプレーが売り
もう1人の新鋭・新海美憂は新人らしからぬ部分に強みを感じるという。「全体を通してすごい落ち着きを感じます。また、サンドセーブ率とリカバリー率が高いのも特徴。ショットは良いけど、アプローチがちょっと…という若い子が多い中、自分のスタイルであるグリーン周りをとても大事にしているように感じます。もちろんスイングもバランスが良く、柔らかさがありますからこの先期待できます」

その落ち着きを生み出したのは師匠の鈴木規夫だろう。鈴木は昨年初めてレギュラーの出場権を得た新海に『1年間はハウスキャディでやりなさい。まずは自分で考えなさい』と支持。ようやく今年から帯同キャディをつけ始めたばかり。その辺りも辻村氏は目を見張る。

「鈴木さんのさすがの一言ですね。なんでもキャディ任せでは伸びしろを失ってしまう。とは言え、ゴルファーは毎年が勝負の年。中々言えるものではないし実行できるものではない。それでも鈴木さんは今だけを見ずに4〜5年後を見据えてゴルフ力をつけさせようという思いだったと思います。そういう人が周りにいたからこそ、今の新海さんがあると思います。だから今、自分を持って落ち着いてプレーできているのではないでしょうか」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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