米国男子ツアー「チューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオーリンズ」は今年から大会形式がチーム戦に変わった。米ツアーがチーム戦を採り入れたのは1981年の「ウォルト・ディズニー・ワールド・ナショナル・チーム選手権」以来、36年ぶりのこと。そして、チーム戦でフォーサムのプレー形式を採り入れたのは1968年の米ツアー創設以来、初めてだ。

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なぜ、今になってチーム戦を復活させ、フォーサム形式を初採用したのか。その答えは、米ツアーと米ゴルフ界、ひいては世界のゴルフ界のさらなる発展を願ってのことだ。

近年、ゴルフの試合と言えば、72ホール、ストロークプレー、個人戦と相場が決まっており、それ以外の形式は「経験がない」「やり方すら知らない」という選手は想像以上に多い。しかし、ゴルフの歴史を遡れば、かつてはビッグな試合ではマッチプレーで勝者を選ぶことが多かった。そして、ライダーカップやプレジデンツカップは最終日だけは個人マッチになるが、それ以外はフォーサム&フォーボールの団体戦だ。

そうした大会形式、プレー形式に準ずるものが米ツアーに1試合ぐらいあってもおかしくはないし、いろいろなスタイルの大会を創設し、選手にも観衆にも親しんでもらうことで、ゴルフの試合のバリエーションは広がっていく。

今週、優勝候補に挙げられていたジェイソン・デイ(オーストラリア)&リッキー・ファウラー(米国)、ジャスティン・ローズ(イングランド)&ヘンリック・ステンソン(スウェーデン)の両ペアが予選落ちしたこと、そして日頃はあまり目立たないケビン・キスナー&スコット・ブラウン(共に米国)、ジョナス・ブリクスト(スウェーデン)&キャメロン・スミス(オーストラリア)のプレーオフ、マンデーフィニッシュへともつれ込み、ブリクストとスミスが勝利を挙げたことからもわかるように、新形式の大会は通常のストロークプレー個人戦とは違う形でいろんな選手にいろんなチャンスを与えてくれる。

予選落ちしたデイ自身が「予選落ちという結果はもちろん望んでいなかったけど、米ツアーのフレーバーが増えるのは良いこと」と装い新たになった今大会を高く評価していた。

ところで、今大会ではもう1つ、歴史的な出来事が起こった。1995年以来、22年ぶりにスロープレーによる1罰打が選手(ブライアン・キャンベル&ミゲル・アンヘル・カバロ組)に科せられたのだ。

「えっ、22年ぶり?」と首を傾げたくなる方も多いであろう。というのも、2013年マスターズでは14歳の中国人少年の関天朗、2013年全英オープンでは松山英樹がスロープレーによる1罰打を科されたからだ。だが、あのとき1罰打を科したのはマスターズ委員会とR&Aであり、米ツアーではない。スロープレー以外でも、ペナルティを科すという面で厳しい姿勢を取り続けてきたのはR&AやUSGAであり、米ツアーは良く言えば優しい姿勢、悪く言えば甘い姿勢だった。

スロープレー撲滅が全世界的課題に掲げられてからは、米ツアーも計測や警告をするルール委員の人数を増やし、厳しそうな姿勢をアピールしていたが、それは言わば「見せかけ」で、実際にスロープレーに対する罰打を科したことは、この22年間、ただの1度も無かったというわけだ。

しかし、今春に発表されたルール大改正の提言もルールをシンプル化&近代化して最終的にはスロープレー改善を目的としているように、スロープレーの深刻さは増す一方で、もはや「見せかけ」ではなく「現実」「本気」の対応が求められている。それが時代の要請であることを米ツアーがあらためて認め、今週、ついに罰打を科すことの実行に踏み切ったということなのだろう。

大会形式、プレー形式のバリエーションを広げるため。スロープレー対策を一層強化するため。チューリッヒ・クラシックはゴルフ界のさらなる発展のための大きな一歩を踏み出した。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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