吉田弓美子の優勝で幕を閉じた「フジサンケイレディス」。堀琴音が初日にハーフ“29”を叩きだすなど、例年とは異なり伸ばし合いとなった今大会。背中痛を抱えた吉田は、なぜ高低差の激しい川奈を制することができたのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が振り返る。

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■背中痛で“変わったこと”と“変わらなかったこと” この2つが勝利へとつながった
1打差2位発進と好スタートを切った吉田弓美子だったが、今大会は常に棄権が頭をよぎっていた。原因は先週の「KKTバンテリンレディス」を棄権する理由となった背中痛。ケアを施して状態は良くなりつつあるものの、優勝争いを演じていた最終日の4番で覚悟を決めるまでは離脱の危機だった。優勝後、吉田自身も「不思議な勝ち方」と話している。だが、このトラブルが良い方向に向いた部分もあると辻村氏。

「プロゴルファーは最高の状態を目指して日夜調整をしていますが、ベストな状態のときこそプレーに“色気”が出るというかできなかったことを複雑に考えてしまうもの。その点、今回の吉田選手は怪我をしてしまったことでやるべきことが限定されたので、余計なことがそぎ落とされてプレーがシンプルに見えました。優勝争いの相手とのかけひきも、やること、やれることが少なく、ひたすら目の前の一打に集中していました。パットもそうです。細かいことを気にせずに決めたらスパッとシンプルに打てたからこそ、高麗芝でも3パットをしなかった」

いつも以上にシンプルとなった思考法。一方で背中痛でも変わらなかったのは技術の部分。

「彼女は歯切れの良いショットが持ち味のショットメーカーです。長いクラブはしっかりと振って、短いクラブはフェースローテーションを抑えてラインを出すのが特徴。今回もこの2つで高低差のある川奈を攻略しました。背中の痛みがあってもスイングプレーンは全く変わらないし、背中の弱さに合わせたスイングができていました。力み、打ち急ぎがないのです。こんなに優しく打てるんだ、と見ていました。もちろんアプローチなどの確かな技術は言わずもがな。体のスランプを見事に技術でカバーしていましたね」

■好調の藤本麻子は“躊躇のない”スイングに
一方で敗れはしたものの3位タイに入り存在感を示した藤本麻子。早くも今季3度目のベスト10フィニッシュと好調を維持している。その理由を辻村氏はスイングの改善にあると解説する。

「昨年の藤本選手はスイングに悩んでいる印象がありました。ベタ足のスイングにしようとして、下半身が使えなくなっているように見えました。体重移動ができず、右足に体重が残ってヘッドの入りがバラバラ。逆球が多かったように感じていました」

それが今季からは躍動感が戻ってきたという。「今はしっかりと下半身の力で地面をしっかりと捉えて、ダウンスイングからスムーズに左足に乗れています。右足、右腰がしっかりと使えて足にしまりが出てきてスイングスピードも上がりました。プレー中の足取りからもゴルフを楽しんでることを表しているように見えます」

■“天性のショットメーカー”の妹も“天性のショットメーカー”
姉である松森彩夏と同組で回ることは無かったが、共に3位と姉妹で大会を盛り上げた松森杏佳。以前“天性のショットメーカー”と称した姉・彩夏と変わらぬ綺麗なスイングが持ち味だ。

「姉妹揃って良いスイングです。背丈が似ていることに加えて、小さいころから姉を見ているだけあってスイングもこうまで似るんだなぁという感じ。スイングに癖がないんですよね。間近にこんなに良い教科書があって羨ましいくらいです。ですが去年まではスイングは良いのに、フェースの上でボールが滑ってこすれるスライス球が多かった。それが今はフェースの上でとらえてはじき出せています。ショートゲーム、パターのレベルが上がってくればより成績は安定してくるのではないのでしょうか」

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子らを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。


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