「スタジオアリス女子オープン」はテレサ・ルーが4打差をひっくり返して優勝。この結果をスタート前に予測できた人間はいなかっただろう。上田桃子らを指導するツアープロコーチ、辻村明志氏も驚きを隠さなかった。

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「正直、99%は申ジエ選手が勝つだろうと思っていました。初日と2日目はノーボギーでまったくスキのないゴルフ、パーフェクトでした。打ち上げ、砲台、ドッグレッグが多いコースを巧みなボールコントロールとスピンコントロールでピンをデッドに攻めていましたから」。今週はジエの勝って終る、報道陣でもそう考える人が大半だった。

テレサ本人もこの勝利を「奇跡」と評していたが、それを呼び込んだのは辻村氏曰く「間違いなく3番のホールインワンです」。3月のアクサレディスでも最終日に若林舞衣子がエースを達成し逆転V。最終日にホールインワンを達成し勝った選手が1シーズンに2人でたのは、ホールバイホールのデータが残る1990年以降では初のことだ。

「最終日は伸ばしあい、と選手たちは考えています。現代の女子ツアーでは守っていては勝てないですから。狭いスペースでも狙っていく。3番もピンは左奥でしたが、そこに思い切って打っていった。積極性がないと今は勝てないんです。それだけツアー全体のレベルが上がり、選手たちの技量も上がっているのです」。いけると思ったら迷わず攻める勇気と確かな技術、それらがなければレベルが上がった今の女子ツアーでは勝利は呼び込めないようだ。今後も最終日にエースを出す選手は増えていくかもしれない。

テレサは辻村氏が見た限り、「先週は正直、調子がよくは見えませんでした。ボギーに直結する、プロがやってはいけないミスもいくつかしていました。そこから今週優勝するまでに修正してくるのは流石です」。テレサの魅力はスイングの完成度の高さと力みのなさ。「クラブが軽く見えますよね。体はゆったり動き、クラブはすばやく走らせる。力みを知らないスイングです。ぐらつかない下半身と、上体が右を向いたまま、ズルっと肩甲骨が下に落ち首が長く見えるダウンスイングが素晴らしい。こうすることでシャフトの角度が変わらず懐に入ってくるため、パワーをロスすることなくフォロースルーでヘッドに大きな遠心力をかけられるのです。低くて長いインパクトゾーンも彼女の素晴らしい点です」。重圧がかかる時ほど、テレサのような力みのないスイングが強さを発揮するのだ。

テレサは結婚後、成績を落としたくないプレッシャーもあったようだ。「これまではどうも元気がないなと感じていました。明るさ、笑顔がないなと。でも、これで大丈夫でしょう。1つ噛み合えば優勝争いに絡んでくるのが彼女の強さですから」。周囲から“練習できてないのでは?”と言われることが多かったというテレサは優勝会見で「一番練習したのに」と苦笑していたが、これでもう周りからの雑音は減りさらにプレーに集中できるようになるだろう。

この大会では今季元気のなかった原江里菜が2日目に“64”を出し、存在感を発揮。最終日の上がりの3ホールではインパクト後に手を離すなどまだ本調子ではないが、オフに取り込んだスイングスピードを上げる取り組みを辞めるという苦渋の決断が功を奏した結果だ。辻村氏は「早く気がつけて良かったのでは」といい方向に向かっていると評価。これまでは速く振ろうとするあまり「切り返しが安定せず、シャフトが暴れてしまってました。シャフトが静まる前に切り返していたので、身体の開きが早くダイミングがとりずらかったのではないでしょうか」。まだ完全に復調とはいっていないが、「いい方向に進んでいるのは間違いないです。少しずつ時間をかけながら、自分のタイミングと身体のポイントを取り戻してほしい。しかし、パッティングは好調なようですね!」と辻村氏。勇気ある撤退をした原、これからはツアーを盛り上げてくれそうだ。


解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。今季は上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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