世界一のダスティン・ジョンソンと準決勝で対戦することが決まった前日。「今のジョンソンは無敵に見えるけど、キミはどう思う?」会見でそう尋ねられた谷原秀人は「僕から見ても無敵に見えます」と素直に答え、米メディアを笑わせた。

谷原、7番でホールインワン!笑顔でボールをピック
そして最終日、谷原はジョンソンに1ダウンで敗れ、決勝に進んだジョンソンはジョン・ラームを倒して優勝。米ツアー通算15勝目、出場3試合連続優勝を達成し、世界選手権はメキシコ選手権に続く2連勝で通算5勝目。さらには世界選手権の4大会すべてを制する“WGCスラム”も達成。

確かに、今のジョンソンは「無敵」だ。だが、谷原はそんなジョンソンに手も足も出なかったのかと言えば、そうではなかった。「初めて一緒に回るので、自分がどこまで(飛距離で)置いていかれるのか、その中で自分がどのぐらい粘れるのかが楽しみ」

そう言っていた谷原は、少なくとも無敵の王者を揺さぶり、「彼はとてもいいプレーをした。厳しい戦いだった」と言わしめた。

ジョンソンは前日までの5マッチのすべてで快勝したため、17番、18番を1度もプレーしたことがなかった。だが、最終日の準決勝では7番までで3ダウンを喫した谷原が執拗に食い下がり、徐々に盛り返して、ついに14番でオールスクエアへ。

15番、16番を分けた2人は、ジョンソン未踏の上がり2ホールへと進んでいった。その2ホールをジョンソンが初めてプレーしていることを谷原は「知っていました」。だが、それまでその2ホールをプレーしたことがあったか無かったかは、ジョンソンにとっては「関係ないですね」と谷原。

その通り、ジョンソンは初めてプレーしたその2ホールで決着を付けた。

「17番と18番でいいパットが打てた。だから勝てた」ジョンソンはそう振り返ったが、勝ったにも関わらず王者の胸中はやや複雑そうだった。

「18番まで行きたくはなかったんだ」ジョンソンのその言葉は、言い換えれば「18番までオレを追い込んだタニハラは大健闘だった」という意味だったのだと思う。プロの世界は勝ってナンボ。どんな勝ち方でも勝ちは勝ち。どんなに健闘しても負けは負けだ。マスターズチャンプで元世界一のジョーダン・スピースを初日に下したのは谷原の大金星。

だが、食い下がったとはいえ、ジョンソンに敗北した準決勝は谷原の黒星。

しかし、勝っても悔しがるほど無敵のジョンソンを追い込んだ谷原の健闘は、金星にも白星にもならないことは承知の上で、何か星を付けてあげたくなる。

ジョンソンのゴルフは「やっぱり勝負どころで強い」と、谷原は素直に自分との差を認め、脱帽していた。

「あの飛距離で、曲がらなくて、パットも入っていると、太刀打ちできるのはどこなのか、どうやって勝ったらいいのか(わからない)」谷原が言う通り、ジョンソンとは技術の差、力の差が今は確かにあるのだと思う。だが、それだけの差がある中で、無敵と呼ばれるジョンソンを揺さぶり、最終ホールまでプレーをさせたことは、何かを達成したという記録には残らないが、熱い戦いを観戦したファンと谷原自身、そしてジョンソンの記憶の中には必ずや残る。

「マスターズでも日本でも、もう少し自信を持ちながらやれたらいい」いやいや、「もう少し」ではなく、大いに自信を持っていいのではないか。谷原が得た星は、これから輝く希望の星。そう思える準決勝だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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