アーノルド・パーマー招待の最終日は、ケビン・キスナーとチャーリー・ホフマン、そして猛追をかけてきたローリー・マキロイの三つ巴の様相を呈していたが、優勝争いの大詰めは16番でイーグルを奪ったマーク・リーシュマンが一気に抜け出し、そのまま逃げ切る形で勝利を掴み取った。

米国男子ツアーの熱戦を特選フォトでプレーバック!
オーストラリア出身のリーシュマンが米ツアーにデビューしたのは2009年。ちょうど石川遼が米ツアーに初めてスポンサー推薦で出場したあの年に、下部ツアーから上がってきたリーシュマンも米ツアーに初めて挑み、その年のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。
だが、そこから先が順風満帆だったわけではなく、ようやく初優勝を挙げたのは2012年のトラベラーズ選手権。以後、欧州や母国での勝利はあっても米ツアー勝利がないまま4年を過ごし、今大会は5年ぶりの優勝となった。

勝てなかった日々も不調だったわけではなかったとリーシュマンは言う。

「いろんなことがあった長い道程。いつも優勝に近いところにはいたけど、日曜日を思い通りに終えることができなかった」

リーシュマンのゴルフを一気に向上させるきっかけになったものは、今年の始めから使い始めたキャロウエイの新ドライバーだ。

「あのドライバーのおかげで生涯最高のドライビングが得られている。フェアウエイから打てるようになったらゴルフが簡単になった」

アーノルド・パーマー没後の初開催となった今大会。これまで優勝者に贈られてきた濃紺のブレザーは今年からパーマーが愛した赤いカーディガンに変わった。

3位で最終日を迎えることになったとき、その変更を初めて聞いたリーシュマンは「羽織れるものを喜んで羽織りたい」と勝利への意欲を秘かに燃やし、そして翌日、サンデーアフタヌーンを思い通りに終え、5年ぶりの優勝と5度目のオーガスタへの切符を手に入れた。

リーシュマンを向上させたきっかけは1本の新ドライバーだったが、決勝2日間に一気にリーダーボードを駆け上ったマキロイの向上のきっかけは2週前のメキシコ選手権で好プレーができて7位になったことだと言う。

今年1月に肋骨の疲労骨折と診断されて以来、初めての試合出場となったメキシコで手ごたえが得られ、好結果が出せたこと。そして今週、「スコアが伸ばせる状況だった3日目にしっかり伸ばしたこと」は、迫り来るマスターズでグリーンジャケットを羽織るための大きなステップになった。

マスターズ直前のこの時期、誰もが自分の調子を上げるためのきっかけやステップを模索している。松山英樹もその一人だが、ここ数試合はそれが掴めずにいる。

今大会2日目には「ショットがすごく安定していた」と久しぶりに満足の笑顔を見せ、あの日のラウンドが「きっかけ」になって上向いてくれそうだった。だが、3日目は「ショットが昨日ほど良くなかった。パットもことごとく入らなかった」となり、最終日は「何もいいところがない」と肩を落とす結果になった。

それでも絶不調なわけではないし、4日間すべてが悪かったわけでもない。2日目の見事なゴルフは「宝くじみたいな感じ。たまたま当たっただけ」と松山は自嘲気味に捉えていたが、「宝くじに当たった」ことだって、考え方次第では「きっかけ」になるのではないだろうか。

そんなふうに外野は余計な心配もするのだが、松山本人も「きっかけが1つあれば、変わっていくと思う」と最後にはポジティブな姿勢を見せてくれた。

何が起こるかわからないのがゴルフだが、何がきっかけで上向くかもわからないのがゴルフだ。リーシュマンはドライバー、マキロイはメキシコでの手ごたえ。果たして松山は何をきっかけに上向いてくれるのか。まずは来週のマッチプレー選手権が「きっかけ」探しの最後の試合になる。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>