バルスパー選手権はカナダ出身のアダム・ハドウィンが初優勝を飾り、日本人でただ一人出場していた石川遼は最終日に「81」と崩れて最下位。「遼くん、大丈夫かな?」と、ファンはさぞかし気を揉んでいることだろう。だが、石川の視線は周囲の想像以上にしっかり定まっている様子だ。

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昨春に腰痛を悪化させて戦線離脱し、今季は米ツアーの公傷制度に助けられて参戦している石川は、シード権確保のための数字上は切羽詰まった状況にある。

米ツアー選手の年間平均出場試合数は26試合。石川は昨季出場した6試合と今季20試合の合計26試合の間に昨季の125位と同等以上のフェデックスカップポイントを稼ぐ必要がある。今季は2016年のうちに開幕シリーズ3試合に出場したため、2017年に残されているのは17試合。そして今大会はその17試合中の6試合目に当たるという具合に周囲が指折り数える一方で、石川自身のスタンスは少々異なっている。

「今年の17試合で300〜400ポイントを稼ぐためには、平均40位×17?いや、40位ではなく30位×17かなと、チームで話し合った。でも米ツアーはダスティン・ジョンソンやジェイソン・デイでも予選落ちする世界なのだから、目指すべきは平均順位ではなく、自分自身の技術の向上。今、自分の技術を上げることしか考えていません」

ゴルフに「必ず」はあり得ない。いろんな人にチャンスが到来し、「勝利への門戸は広いからこそ、チャンスがあると信じられる」と石川は言う。だが、そうは言っても「裏付け」となる技術は絶対的に必要だ。

「トップにいる人は、たまたまチャンスが来てトップにいるのではなく、上手いからトップにいる。以前は『自分もそこに行ける』『もっと上手いはずなのに』と思っていたけど、今の実力でそう思っていたのは僕の過信、慢心だった」

自分の技術的な立ち位置を知り、厳しい現実を直視することに石川は取り組んでいる。そのための具体的な方法は、ドライバー、アイアン、小技、パットといった各分野の名手を選び出し、その名手と自分は何が違うのか、どうすれば名手に近づけるのかを研究し、実践していくというものだ。

「ドライバーの名手はマキロイ、デイ、英樹。彼らと比べると僕のドライバーショットは飛ばなくて曲がる。ドライバーだけの世界ランキングがあるとしたら彼らは1位。僕は世界ランキングは110位前後だけど、ドライバーだと700位ぐらい、アイアンは150位ぐらい、アプローチとパットは、せいぜい世界ランキングのちょっとだけ上ぐらいかな」

石川がショット、つまりはスイング向上のために必要な技術上の最重要課題と考えているのは、スピン量を増やすこと。とりわけ自分のアイアンショットのスピン量が米ツアーの他選手たちより極端に少ないと気付いた石川はスピン量を増やす打ち方を模索している。

「他選手が7I で200Y打つところを、自分は7I では打てないから6I で打つ。でも、彼らの7I と同じ7000回転ぐらいのスピン量で僕が6Iを打てれば、番手は関係ない。大事なのは番手よりスピン量です」

スピン量を増やす上で関係してくるものには徹底的にこだわる。体やクラブの動き、ヘッドスピードはもちろんのこと、自己免疫力を向上させる肉体管理法、そして「ボールも助けてくれる」。

ボール選びにおいては、触感、打感、打球音も含め、数値と感性の双方向から、深く細かくこだわる。

そうやって「裏付け」となる技術を向上させ続けていく。シンプルに技術向上のみを目指していく。「自分が上手くなれば、結果も自ずと付いてくるはずだから」

順位には変動があるとしても、視点はしっかり定まっている。だからこそ、石川の現在地は整理整頓されている。それが今後に繋がることを期待したい。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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