昨年まではフロリダの陽光の下で開催されていたキャデラック選手権がメキシコ選手権に変わった今年。メキシコシティの高度の影響、風土の影響、水や食べ物の影響で体調を崩す選手やキャディが続出し、世界のトッププレーヤーたちの戦いは文字通りのサバイバルゲームとなった。

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ローリー・マキロイ(北アイルランド)とジョーダン・スピース(米国)は初日から体調不良。フィル・ミケルソン(米国)の相棒キャディ、“ボーンズ”は初日の4ホール目で戦線離脱し、ロープ際を歩いていたミケルソンの弟が急きょバッグを担いだ。

そんな出来事があっても、マキロイとミケルソンは3位で最終日を迎えた。出遅れていたスピースは3日目にコースレコードの63をマークして猛追し、首位から5打差なら「十分に優勝が狙える」と笑顔を見せた。

中には、体調ではなく別の意味で苦しい戦いを強いられた選手もいた。今季すでに3勝を挙げ、絶好調と見なされていたジャスティン・トーマス(米国)は、ここ3試合は予選落ちが2回と下位に沈むこと1回。成績不振からの脱却を目指していた。

そして、ジェネシス・オープンで優勝し、世界ナンバー1に登り詰めたダスティン・ジョンソン(米国)にも「世界一として注目も期待も感じ、かなりのプレッシャーがあった」。

誰もが何かと戦いながら生き残りを目指したサバイバルゲーム。勝ち抜くために必要なことは、いろいろあったのだと思うが、その中で、誰よりも上手に困難をコントロールし、日頃から培ってきた実力を誰よりもうまく発揮できる状況を創出し、実行できた人。それが、優勝に輝いたジョンソンだったということなのだろう。

とはいえ、言うは易し、行うは難し。どうやって困難をコントロールし、どうやって生き残るのか。「それがわかれば苦労しないよ」という話ではある。だが、今週のジョンソンは、その答えの一部を垣間見せてくれた。

ポーカーフェイスで淡々とプレーしているジョンソンだが、初日はとてもイライラしていたという。「読みもストロークも悪くないはずなのに、とにかくパットが決まらず、フラストレーションが溜まった」。

だが、ジョンソンは考え方を変えることで、そのイライラを克服したそうだ。「ボールが跳ねるこのグリーンは、そもそもちゃんと読むことなんてできない。いいストロークをしても入らないときは入らない。でも“全部入れよう”と思うから、入らなかったときに腹が立つ。だから、バーディーチャンスを最大限作ることを頑張り、そこから先は“できる限り入れよう”ぐらいに考えた」

困難な環境にあるときほど、ベストを求めず、中庸を良しとする姿勢。最高の環境が揃っている米国内ならベストを追求するとしても、環境が変わり、それが難しいと思えるときは、目指すラインを「ベスト」から「中庸」へ一旦引き下げることで、自分の気持ちもゴルフも少しだけ楽にしてあげる。

そんなふうに考え方を変えたジョンソンは、2日目も3日目も「66」をマーク。3日目は16番で木にボールがはまってロストボールとなり、ボギーパットを打とうとしたら行方不明だったボールが木の下に落ちてきたという「オチ」までついたが、「最終的にはナイスボギーだったからハッピーだ」と前向きに捉えた。

首位で迎えた最終日は「優勝するためには5つ6つ伸ばすことが必要だけど、それは2日目、3日目と同じことを繰り返すだけのこと」。意気込みすぎず、同じトーン、同じ心持ちで臨み、何にも動じることなく、静かにプレーして勝利した。

サバイバルゲームに勝つ方法。それは、スーパーマンのような特別な、いつも以上の力や技を発揮するということではなく、むしろいろんなハードルを自ら下げ、心身の消費エネルギーを最小限に抑えて、最後まで進み切れるかどうかの勝負。

今週のジョンソンは、そんな静かな勝ち方を見せてくれた。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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