2年前、「米ツアーで最も過大評価されている選手」というアンケート調査で1位に選ばれたリッキー・ファウラー(米国)は、その週、“第5のメジャー”と呼ばれる「ザ・プレイヤーズ選手権」を制し、屈辱の評価を自力で払拭した。

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その勝利はファウラーにとって2012年に「ウエルズファーゴ選手権」で挙げた初優勝に続く米ツアー2勝目だった。2015年の秋、「ドイツ銀行選手権」も制して3勝目を挙げると、2016年1月には欧州ツアーの「アブダビHSBC選手権」でも勝利。一気に波に乗りかけたが、松山英樹とのプレーオフで敗れ、思わず悔し泣きした昨年のフェニックスオープンで、その流れは止まってしまった。

その翌月のホンダクラシックでは2日目を終えて首位に立っていたが、週末は崩れ、6位に終わった。初優勝を挙げた「ウエルズファーゴ選手権」では首位で最終日を迎えたが、74と崩れて4位に甘んじた。「ザ・バークレイズ」でも優勝のチャンスを迎えたが、またしても最終日に崩れ、7位どまり。勝てない流れは今年も続き、因縁のフェニックスオープンでは最終日に猛追をかけたものの、松山に2打及ばず、5位に終わった。

巷では、そんなファウラーを「やっぱり過大評価?」と疑問視する向きもあった。ファウラーが優勝する雄姿を「まだ目の前で見たことがない父と祖父のために僕は勝ちたい」と言うファウラーを「優しすぎる」「甘すぎる」と批判する向きもあった。

だが、ファウラー自身は、こう言っていた。

「『誰かのために勝つことはできない』というフレーズを聞いたことがある。そうなのかもしれない。でも、その想いを拭い去ってプレーすることは僕にはできない」。

そうやって自分の考えを貫こうとするファウラーの姿を見て、「そのままの姿勢で勝ってほしい」と願ったファンは多かったはずだ。

今週のホンダクラシック最終日を2位に4打差の首位で迎えたファウラーは、「またしても?」というデジャブが頭をよぎる中、自身にこう言い聞かせていたという。

「36ホールを終え、54ホールを終え、たとえ首位に立っていても、それを毎回優勝へつなげることはできない。でも、その位置に自分を持っていけばいくほど、日曜日にトロフィーを持ち帰るチャンスは増えるんだ」。

いざ挑んだ最終ラウンドは、フロリダ独特の強風に煽られ、池に落としたり、バンカーにつかまったりもしたが、「パターが僕を助けてくれた」という言葉通り、ショットの乱れをパットで補い、終わってみれば2位に4打差の余裕勝ち。惜敗続きだった1年超のウインレスを経て、米ツアー4勝目を挙げた。

そういえば先日、世界一の王座に座っていたジェイソン・デイ(オーストラリア)が、その座に迫りくる松山英樹のことを「ヒデキは米ツアーではまだまだ過小評価されているけど、彼はいつもそこにいる」と賛辞を送っていた。

「そこにいる」という意味では、ファウラーだって「いつもそこにいる」存在だ。それでも世間は、結果につながらない時期がちょっと長引けば「過大評価」「甘い」と揶揄もする。

しかし、世間の評価が「オーバー」だろうと「アンダー」だろうと、大切なのは自分自身。我が身と我が心を大事に守り、我がゴルフを貫いていく。勝利は必ず、その先にある。

ファウラーの次なる目標はメジャー優勝。「リフレッシュして、リラックスして。それがオーガスタに行く前に必要なことだと思う」。

なるほど、この優勝で世界14位から9位へランクアップするであろうファウラーが、これからメジャーで勝つために求められるものは、評価ではなく自分自身の在り方だけ。

それが、日本人の血を引くファウラーが私たちに見せてくれている“アメリカンな侍”の戦い方だ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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