2016年に大きな飛躍を遂げた選手の一人、松森彩夏(スターツ所属)。10月の『富士通レディース』では逆転でのツアー初勝利を達成。シード選手としての初シーズンは、優勝1度、TOP10入り5度で賞金ランク15位。上位に食い込んで知名度を上げたが、注目度の高さに成績面が追いついていない自身を立ち位置を打破するために奮闘していた。

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■ 実績より先に行ってしまっていた自分の現状。そこに追いつくために…

 「開幕当初は"前半戦での初優勝"が目標。優勝は後半戦でしたが、今年の目標は達成できたと思っています。ですが…もう少し優勝争いに加わりたかったので、年間を通したら達成度は70点ですかね。もっとトップ10以内に入れたと思う」。

 成績だけ見ればツアー参戦3年目での飛躍の年となり、順風満帆と言えるシーズンだが、1年間を通しての自己評価は100点満点には届かず。今年から味の素と栄養サポート契約を結び、食事プログラムと重点的なトレーニングにより、開幕戦『ダイキンオーキッドレディス』開催時には、前年から5kgの増量に成功。身長170cmのスラッとした体型で線が細かった昨季から肉体改造を行い、体力面での不安が解消されたことで、予選落ち数は18試合(2015年)から3試合(2016年)に激減したが、20位前後の"もう少しでトップ10フィニッシュ"という展開も多かった印象が30点減の理由だ。

 近年の女子ツアーは勝利実績がなくとも、ツアー初参戦時に複数のスポンサーがついているプロが多く存在するが、フル参戦初年度の昨季に2度の優勝争いを繰り広げた松森もメルセデス、JAL、サッポロビール…からスポンサードを受けており、若手のなかでも最大級の期待を受ける。さらに今年8月末には用具使用契約を結ぶテーラーメイドの主力ブランド『グローレF』の広告塔を尾崎直道とともに務める大役を掴んだ。

 「グローレブランドを使っていなかったら『得意クラブはドライバーです』と言えなかったかもしれない」とプロ入り前からともに戦ってきた相棒ブランドの顔。大きなプレッシャーを伴うが、松森は自身の立ち位置を把握した上でモチベーションに変えていたという。

 「プレッシャーにはならなかったです。逆にがんばろう!、って。グローレFの広告塔としてたくさんの人に顔を覚えてもらう機会を頂けたのはすごく光栄なこと。ちょうど同時期にはJALの機内宣伝にも出させていただいた。成績より先に行ってしまっている自分の現状も当然わかっていました。(実績と扱われ方が)合っていないとは思っていましたが、合わせられるように自分を上げていきたい、と思うことができた。たくさん使って頂いたのはプラスだったかな(笑)。財産になったと思います」

■ 『日本女子オープン』最終日"82"は初めて心が折れたラウンド

 プレッシャーはない、と本人はいうものの、結果を残さなければならないと気持ちは生まれるもの。周囲の期待が高まれば高まるほど、手にする勲章も大きなものが望ましいという感情が膨れて上がるのは当然のことだが、チャンスが訪れたのは『日本女子オープン』。3日目を終えて5位タイと優勝争いに踏みとどまって最終日を迎えたが、勝負の日のスコアは全選手のなかでワーストの"82"だった。

 「メンタル面で一番辛かった時期は『日本女子オープン』が終わったあとですかね。調子が悪くなかったのに、4日目に心が折れてしまって大叩き…。試合中なのに自分のなかで"無理だ!"という壁を作ってしまった。いままではこういう感情はあまりなかったですが、メジャーでの上位争いで気合が入っているなかで、前半に連続ボギーが出たときに受け入れられなかった。自分に期待をしすぎちゃっていましたね。いまは、心と技術のバランスが上手く保たれなかった、と思い返すことができます。悔しい試合でした」

 大山志保のような派手なアクションも、笠りつ子のようなビッグスマイルもない。淡々とクールにプレーする印象の松森だが、"あえて"平常心を心がけている。「出しすぎると、イライラしたときに抑えなれなくなるので(笑)。ミスが起きても一息ついて、次のことを考えるようにしている」と、感情を見せないこと=マイナスの感情を爆発させないスタイルだが、自身への期待と目の前で起こっている出来事の乖離の大きさによって、歯止めが利かなくなった。

 その2週間後に訪れた涙の初優勝。優勝会見ではタッグを組んだジョン・ベネットキャディから「今日も“patient(忍耐強さ)”ってずっと言われてました。今日はその言葉だけ(笑)」とのエピソードを披露したが大舞台で心が折れてしまった経験は彼女を成長させた要因だろう。

■ まだヒョロヒョロ、60kgまで体重をアップさせるのが目標です!

 シーズン中は優勝翌週にもすぐさま試合が続いたため、勝利の実感がなかったが、シーズンオフの現在が最もウィナーとしての自覚が出てくる時期。だがもう来季への計画を見据えている。

 「たくさん祝って頂くと"優勝したんだな"と思いますが、もう来年どうしようかなって。いまは2016年と2017年をいったりきたりしています(笑)。去年と今年を比べたら、ついてきて頂けるギャラリーの方の数も増えていますし、もちろん優勝は自信になりましたが、自分自身がガラッとは変わったわけではない。来年は複数回優勝をしたい。シーズン初めから賞金女王を狙う!という気持ちではまだないですが、優勝を重ねて近づけていっていけたら」

 掲げる目標はさらなる体重増=2年間で10kg増。開幕時の55kgはシーズン中は若干落ちて53〜4kg。来年3月には60kgまであげて、シーズン中に58kgをキープしたいという希望を持つ。『全米女子オープン』や『TOTOジャパンクラシック』で海外選手と自身を比較した際の「まだまだヒョロヒョロだな」という感情が肉体改造を後押しする。

 「見た目の印象と、話したあとの印象が違うと言われやすいんです。"おしとやかだと思った"と言われることが多い。そう見られているんだなぁって(笑)」

 来年はそのギャップが少し埋まった力強いプレー振りを見ることができるかもしれない。

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