今季国内女子ツアーで活躍した注目選手の強さの要因を探る“Playback LPGATour2016”。第3回目は今季日本メジャー初優勝を飾るなど2勝を挙げて、獲得賞金が1億円を突破したキム・ハヌル(韓国)をフォーカス。賞金ランクは昨年の23位から4位と大きく飛躍し、韓国ツアー2年連続の賞金女王の名に違わぬ強さを感じさせたスマイルクイーン。日本ツアー2年目は優勝以外にもべスト5に12試合も入ったが、安定感を生み出すスイングの特徴をツアープロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。

【連続写真】クラブが体に巻きついていくようなキム・ハヌルのスイング(10枚)
 ハヌルのスイングの肝は"体が傾かない軸回転"でヘッドが効いて、クラブが体に巻きついていくようなスイングが特徴。ブレない軸回転かつ、ヘッドが効く=ヘッドが走ること、で手先を使わず自然とクラブが体に巻きつく、と聞けば、スイングの安定性が高まり、ヘッドスピードが上がることが想像できる。

 軸ブレせずにヘッドを走らせる重要なポイントは、アドレス時からスイング中まで、カカト体重にならない様に両足母指球の上でスイングするイメージを持つことだ。「アマチュアにありがちですが、アドレス時は両足母指球をイメージできていても、ダウンスイングからフォロースルーにかけて、左足がカカト体重になるのが速くなるケースがあります。左足が外側に流れることで、バックスイングで右サイドに溜めた力を左足内側で受け止められず、上半身が開きやすくなる。すると振り遅れによるフェースオープンで右プッシュやスライスが出やすくなってしまうんです。ハヌルのようにダウンスイングでも左足の母指球の上でしっかりと踏ん張ることができていれば、振り遅れることなくヘッドが走る。フォローではヘッドが遠くまで伸びて、勝手にクラブが体に巻きついてきてくれますよ(辻村氏)」。

 ハヌルのドライバーショットの精度と飛距離は、昨季よりも大きくレベルアップしているが、上記したスイング特徴を高めるために体幹トレーニングを1年間通して取り組んだことも大きい。「体が一回り大きくなり、明らかに強い球が打てるようになった。トレーニングに加えて、アッパースイングからレベルスイングに修正したことで精度が高まり、飛距離も10ヤード近く伸びたのではないでしょうか(辻村氏)」。来日当初は風や雨といった悪いコンディションの際にスコアを出せない印象だったものの、力強さを増したことと、日本のツアー環境へ適応できたことで、今季はその印象はなくなったといっていい。

 「昨年オフ、韓国男子ゴルフスーパースター、チェ・キョンジュ氏から沢山のウエッジ技術を伝授してもらった事が躍進の要因の1つでもあると思っています。グリーン周りからの寄せの引き出しは確実に増え、対応力が上がっている(辻村氏)」と、ショートゲームの向上も飛躍の大きな要因。パーオン率9位ながらパーセーブ率3位、そしてリカバリー率2位という数字は成長の何よりの証明だ。

 今季は最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」でメジャー初制覇を飾るなど、来日から着実にステップアップ。同大会では来年に向けて試す意味合いもあったセンターシャフトのパターを投入し、栄冠を手にした。自身の一番の課題はパッティング。ウィークポイントがなくなりつつあるだけに、パッティング面の成長が見られれば、日本ツアー参戦3年目での賞金女王の可能性もグッと高まるだろう。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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