今季国内女子ツアーで活躍した注目選手の強さの要因を探る“Playback LPGATour2016”。第1回目は2年連続賞金女王に輝いたツアーの顔、イ・ボミ(韓国)をフォーカス。開幕から12戦連続トップ10(2戦目から11試合連続トップ5で優勝2度)を続けるなど序盤からスパートをかけ、賞金ランク1位を走り続けたボミの強さの秘密をツアープロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。

【連続写真】基本の繰り返しで掴んだ再現性の高いスイング!イ・ボミのスイング写真(10枚)
ゴルフスイングで最も重要かつ難しいのは"再現性を高める"ことだが、ボミのスイングは毎回同じVTRを見せられているかのように変化がない。158cm・56kgと女子プロゴルファーのなかでもごくごく平均的な体格にも関わらず、飛距離はトップクラス。正確性のほうに目が向けられるため、"飛ばし屋"のイメージはないが、ツアー全体を見渡してつねにボミに飛距離で勝てる選手は数名ほどしかいない。辻村氏は、飛距離と方向性を兼ね備えたドローボールを打つ秘訣には特別なことはなく、"本当に基本に忠実だから"と分析する。

「ボミは静かにゆっくり振っても250ヤード近いビッグドライブが打てますが、体も道具も静かに使うことで一年間高いレベルを維持できています。両ヒジ、両ワキ、そして肛門が軽く締まっていることで実現する理想的なアドレスの締まり感、両腕が作る三角形が崩れることなく左右対称をキープ、下半身で地面を掴む時間の長さを生むベタ足…。インパクトゾーンでクラブが体の前を通り過ぎてからフィニッシュへと立ち上がる姿も毎ショット同じです。アドレス・トップ・インパクト・フィニッシュ、どの部分をとってもバランスの良いポジションで、基本を突き詰めたボディターンスイングが再現性の高さを作っているのです。

アマチュアゴルファーは体が早く開くことによる"クラブの振り遅れ"に陥っているケースが多い。振り遅れると、ヘッドが下から入ってフェース面が開いたり(=擦りスライスのへなちょこ球)、ヘッドが自分を通り過ぎていかない(=ヘッドスピードが上がらない)。ボミの再現性に行き着くのは至難の業ですが、参考にしてイメージを膨らませれば、振り遅れを防止できます(辻村氏)」

彼女のスイングをツアー会場で眺めていて、力みから大きなミスをする場面に遭遇することはまずない。シーズン中に『私はただのロボット(笑)。私の身体をケアしてくれるトレーナーさんがいて、スイングは先生(師匠のチョ・ボムス氏)が見てくれるし、クラブは本間さんが自分に合ったものを作ってくれる。コースの中では(キャディの)清水さんが助けてくれる』と笑いながら話していたが、プレースタイルも精密機械そのものだ。
 
結果だけ見ると順風満帆のシーズンに思えるが、精密機械・ボミにも狂いが生じた時期があった。だが「『日本女子オープン』頃は、自分の理想のトップポジションに上がらなく悩んでいました。ですが、理想のトップポジションの位置からダウンスイングをする"シャドースイング"の取り組みで、本来のポジションを取り戻した。チーム全体での修正力の高さの賜物ですが、最終戦まで終始続いていました(辻村氏)」とチーム全体で課題を克服した。

また同時期にはパッティングの苦悩も…。本来は「ゆったりしたストロークが生む伸びのあるコロがりで、どんな難しい傾斜やグリーンのスピードにも対応できている。練習グリーンで良く見かけるのは、柔らかいシャフトで打つことにより、手先を使わないショルダーストロークでゆったりヘッドを動かせている。どんな遠い所に乗ってもボミの3パットはあまり見た記憶がない(辻村氏)」と、グリーン上でのタッチの良さはツアー屈指だが、『日本女子プロ』以降は天候の影響で重いグリーンが続いたことでタッチが合わずに苦しんだ。ここ数年絶対に変えることのなかったエースパター以外のモデルを投入した試合もあったが、課題に取り組みながら終盤の復活につなげた。

シーズン中の修正が効を奏するのも、突き詰めた基本をベースにした軸がしっかりと定まっているからこそ。まだまだボミの時代は続きそうだ。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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