米ツアーのRSMクラシックはデービス・ラブIII(米国)が大会ホストを務める“Loveの大会”。彼のお膝元であるジョージア州のシーアイランド・リゾートで開催され、優勝争いは5人によるプレーオフにもつれ込んだ上、日没となって月曜日に持ち越されたのだが、そのプレーオフを勝ち抜いて優勝を飾ったのは、ルーキーのマッケンジー・ヒューズ(カナダ)だった。

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ヒューズは米国在住の25歳のカナダ人。大学卒業後、プロ転向して2013年にPGAツアー・カナダの賞金王に輝き、下部ツアーのウエブドットコムツアーを経て、今季の米ツアー出場権を得た。

今季5試合目、推薦出場した過去の大会を含めてもわずか9試合目で初優勝を挙げたことになるが、こういう有能な若い選手はこれから続々と下部ツアーやPGAツアー・カナダ、ラテンアメリカ、チャイナなどから現われるだろう。

ところで、優勝争いには絡めなかったが、初日に好発進を切り、10位でフィニッシュしたスチュワート・シンク(米国)に注目が集まっていた。
 
シンクが地元のジョージア工科大学ゴルフ部の出身ということもあるが、シンクに温かい声援が送られていた理由はもう1つあった。ジョージア工科大学の同級生で在学時代に結婚したシンクの愛妻リサは、今年4月に乳がんと診断され、その直後から闘病生活に突入した。
 
それからはシンクもツアーを休み、リサに付き添った。治療の合間でシンクがなんとか出場したのは、4月以降はわずか5試合。だが、今年の夏以降は「リサの体調がずいぶん良くなっている」そうで、新シーズンの開幕戦からは、今週はすでに3試合目を迎えている。
 
その試合会場にリサの姿があった。事情を知る周囲の人々は、みな彼女に温かい激励を送り、リサは以前より痩せてはいるものの、シンクのラウンドに付いて、しっかりと歩いたそうだ。
 
シンクによれば、「リサの乳がんはステージ4」と病状は厳しい。だが、シンクもリサも「がんと闘う覚悟をしている。できることは、できる限り、勇気を出してやっていく」と気丈な姿勢を見せている。 
 
今後、シンクはリサが同行できる状態のときだけ試合に出場するのだそうだ。「僕が試合に出ているときは、すぐそばにリサも来ているということになる。僕とリサは常に一心同体だからね」。
 
米国では、闘病中の姿を積極的に人々に見せることが多い。そのほうが同じ苦しみを抱える人々と辛さや想いを共有でき、どちらも勇気が湧くと考える人が多いように思う。

かつて、悪性リンパ腫になったポール・エイジンガー(米国)は化学療法の期間中、髪の毛がすっかり抜けてしまった頭のままで試合会場を訪れ、仲間の選手たちと笑顔で会話していた。
 
フィル・ミケルソン(米国)の愛妻エイミーも、乳がんの治療後、すっかり痩せ細った弱々しい姿で試合会場を訪れ、人々の激励に笑顔で答えていた。
 
治療中、闘病中であっても、外に出られるなら外に出て、ゆっくりでも歩けるなら歩いて、そうやってゴルフの試合会場にやってきてゴルフの観戦をする。周囲のギャラリーも、そういう人々がそばにいたら、手を貸したり、手を差し伸べたり、声をかけたり。

米ツアーの会場にそういうことが自然に行われる土壌がすでにできていることは、ゴルフが人々へもたらしている優しさの1つなのだと思う。
 
有能な若き勝者が誕生した一方で、勝敗や成績だけではなく、人と人との優しさや温かさが溢れたこの大会は、“Loveの大会”にふさわしい、素敵で魅力的なトーナメントだった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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