歴史に語り継がれる名勝負。「ダンロップフェニックス」は最終日61のコースレコードタイを叩きだした池田勇太と、日本初参戦の世界ランク21位(当時)ブルックス・ケプカ(米国)が最後の最後までノーガードで打ちあう激戦の末に、ケプカが初タイトルをつかんだ。世界の力と日本の意地がぶつかり合った18ホールの裏にあった様々な要因。ツアー通算1勝でラウンドレポーターとして大会に携わったプロゴルファーの田島創志に聞いた。

ケプカと池田の激闘!「ダンロップフェニックス」をフォトでプレイバック


■17番、18番。ケプカのバーディを引き出したのは勇太

 フェニックスがこの日一番の大きなため息に包まれたのが17番パー3だった。トータル19アンダーで並んで迎えたこのホールで先に打った池田がピン左1.5メートルにつけると、ケプカは「8番アイアンのスリークォーター。もちろん池田選手がチャンスにつけていたのでプレッシャーはあったが上手く打てた」とそのさらに内側80センチにつけるスーパーショット。チャンスを決めきれなかった池田に対し、ケプカはバーディを奪って一歩リードを奪った。続く最終18番は2オンが可能なパー5で、飛ばし屋ケプカにアドバンテージがあるだけにここで一気に勝負が動いた。

 だが、最終18番の約2メートルのウィニングパットにしても田島は「あれを引き出したのも勇太だと思う」と語る。「勇太の後半で一番すごかったのが14番と15番。14番も打たなきゃ入らないラインだったし、15番の下りのスライスラインは合わせたら絶対入らないラインなので腹くくって打ったと思う。普通のプロゴルファーの感覚ではあのパッティングをあそこまで打ってこれない。あれでケプカが本気になった感じですよね」。

 鼻歌まじりの5打差から、突如現れた好敵手の存在がケプカのパフォーマンスも上げていく。「終盤ガチンコの勝負になった時に、ケプカもライダーカップで成長したという部分を見せて力と力のぶつかり合いをできたと思う。あれは普通の海外招待選手なら勇太が勝てたかもしれないけど、良い状態でこの試合にきたケプカが相手だったから勝てなかったと言えるかもしれない」。


■サンデーバックナインにつながる池田勇太の大きな一打

 バックナインはケプカが2つのボギーで後退。その差が一気に縮まっていくこととなるが、最後のハーフに入る直前の池田にも大きなターニングポイントがあった。

 「15番もそうだけど、一番大きかったのは9番のパーセーブじゃないかな。上から2メートルくらいのいやらしいシビアなパッティングを入れることができたのが、10番、11番につながっている。あそこでボギーにしていると10番、11番はないかもしれない。フェアウェイを外しているし、良い流れを確定づけたのは9番のパーセーブだった」。

 スパイクマークで弾かれながらカップに消えたボールを見た池田の安どと確信に満ちた表情が印象的だった。


■日本人が世界と戦えることを示した池田。一方で世界ランカーとの差は

 「間違いなくこの試合は名勝負。これだけベストなショットを打ち続ければ、海外の選手が来ても互角に戦える。向こうに行っても戦えるというのを見せてくれた」。一方でツアー全体を見ればやはり今回来日した世界ランク20位台の選手達との差も感じたという。「やっぱりみんな飛ぶ。これからの若い選手はあの距離を一つ目安にしてやっていくことができればいいんじゃないかな。それには、我々コースセッターとしても飛ばすってことを一つのアドバンテージにできるようなコースを作ることも必要なのかなと」。

 世界と戦う上で必須条件となりつつある飛距離。「97年大会を見たら、ジャンボ(尾崎)さんが13番ドライバーでキャリーで届いている。メタルのちっちゃいヤツで。ということはあの当時ジャンボさんが飛ばしていた距離と今の日本の飛ばし屋とはあまり変わっていないってことだよね。絶対的な飛距離は日本は上がってない。世界はそこが上がっている」。飛んでもアドバンテージにならないのではなく、飛ぶからこそアドバンテージを得られるセッティングをすることができればツアー全体の底上げにもつながっていくはずだ。

 「いずれにしても、日本人選手の可能性はなくない。あとは、そういうセッティングに慣れてくれば十分戦える可能性があると思う」。今大会はグリーンがソフトでボールが止まったため好スコアが出たが、「悪条件を逆手にとって伸ばし合いを演出するのもセッティング方法。数字に慣れていくことも、世界で戦うことも必要なのかなと。試合後に谷原(秀人)とも話したけど、狙っていけるセッティングでスコアを出すことに慣れていくのが必要」。我慢比べだけではなく、スコアを伸ばせるときに自分にブレーキをかけることなく伸ばしていくことも、トップレベルで戦う条件の一つ。それができることも今大会の池田が証明してくれている。

【解説・田島創志/1976年9月25日生まれ。ツアー通算1勝。2000年にプロ転向し、03年『久光製薬KBCオーガスタ』で初日から首位を守り、完全優勝。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制では、トーナメント管理委員会 コースセッティング・アドバイザーを務める】

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