3日間の戦いを終えてリーダーボードのトップ10に残っていた日本人の名前は、3位タイに食い込んだ堀琴音だけだった。

日本で行われる米ツアー唯一の公式戦「TOTOジャパンクラシック」。上位にカン・スーヨン、アン・ソンジュという日本ツアーメンバーの名前はあったものの全体を見れば日本勢は圧倒された、といえるだろう。

独占!堀琴音インタビュー動画 TOTOジャパンクラシック
同大会は前身の「ミズノクラシック」を含む過去44回の開催で、日本人優勝者は8人のみ。近年では2011年に2度目の優勝を果たした上田桃子以来、日本人優勝者は出ていないばかりか昨年はトップ10に日本人選手はゼロ。そして、今年の結果である。

確かに今年はリディア・コ(ニュージーランド)をはじめ多くのトップ選手がフィールドに名前を連ねていたが、好調の笠りつ子、日本で無類の強さを誇るイ・ボミ(韓国)らも上位に入れなかった。日本女子ゴルフと世界との差はどこにあるのだろうか。

多くの選手が口をそろえたのがコースセッティングの違い。今年から大会の舞台となった太平洋クラブ美野里コースは6,646ヤード(パー72)と日本ツアーの中では長い部類に入る設定だったが、日本と米国でプレー経験のある野村敏京は「アメリカだと普通くらい」と米ツアー勢は長さを苦にしなかった。ただ、長さ以上に大きかったのが米国仕様のセッティングだという。

米国女子ツアーの公式戦とあってピンポジションのセットアップなどは、米国女子ツアー仕様で行われた。シビアな位置に切られたピンポジションや、最大で30ヤード以上も変化をつけるティグラウンドの位置変更。3位に入った堀琴音ですら「いつもは左右から8とか7くらいが多いけど、今回は3とか4とかで、セカンド地点ですごくシビアに感じた」と言うだけに、その他日本選手の苦労も想像に難くない。

日本メジャー「ワールドレディス・サロンパス杯」を制し、今大会でも大きな存在感を示したレクシー・トンプソンは言う。「日本人選手は素晴らしいゲームをする選手ばかりだと思う。初日に一緒に回った渡邉彩香選手は飛距離も出てストロングなプレーをするし、世界でもヒケをとらない。ただ、海外とはコースのセッティングがあまりにも違う。海外の試合に出て厳しいセッティングに慣れることも大事」。

米ツアーでの戦いを知る上田桃子も日米の違いを明確に指摘する一人。「例えば、傾斜にピンが切られていて、どれだけ奥に突っ込めるかだったり、いかにローサイドからパターを打てるようにマネジメントを考えさせるのはアメリカに多いセッティング。その厳しいピンにキャリーで打ってくるのは慣れている海外特有のアグレッシブさ。やっぱり慣れていないと、なかなか難しい」。差が生まれるのは技術面よりもむしろ、そうしたセッティングに対するスコアメイクの仕方。やはり、「慣れていくしかない(上田)」。

では、世界基準に慣れるためにはどうすればいいのか。今大会を戦い終えたトンプソンは「ラフはアメリカより短いけど、アンジュレーションが強かったり気をつけないといけない部分は多かった。アメリカに似ているコースだと思う」と新規開催コースを評価した。新たに世界基準のコースを作るのは簡単ではないが、ピンポジションとコースセッティング次第では世界基準の戦いができることは大会が証明している。もちろん上田のように自ら飛び出していくことが一番なのは間違いないが、こうしたセッティングでの戦いが増えることがレベルアップにつながっていくはずだ。

日本男子ツアー下部で自身が主宰を務める大会でコースセッティングを務める石川遼は「ピンポジションは50センチ違うだけで世界が変わる」とまで言った。「傾斜だけではなくて、セカンドの位置からの見え方で難しく見せるロケーションはPGAではよくある」。選手にどんな球を打たせたいか、どんなプレーを引き出したいか、そこに“意図”が明確にあるのが特徴だという。そうした意図に気付いて攻めと守りを両立させるのには、やはり慣れていくしかないのだろう。

日本ゴルフ界も手をこまねいているばかりではない。男子ツアーでは青木功会長のもと田中秀道、佐藤信人といった実績あるプロゴルファーにピンポジションのアドバイスを求めているが、これも世界基準への慣れを意識した取り組みのひとつ。女子ツアーでも世界で戦う選手の育成のために、3年前から小林浩美会長の旗振りのもと海外で主流の4日間大会を増やすなどしてきているし、コースセッティングの面でも海外に競技委員を派遣するなど世界基準化を進めている。

米ツアーで9勝を挙げている宮里藍は、2015年に米国LPGAの“コースセットアップ委員会”の委員にもなったいわば世界の最前線を表舞台からも裏側からも感じている1人だ。「コースは必ずしも距離が長いホールばかりではない。ピンを振ってあるホールでは、その分ティグラウンドが前に出たりして、フェアなセットアップになることが多い」。

必ずしもロングヒッターばかりが活躍できる環境にしないことも世界の潮流。そして、「その中で自分のゴルフでしっかりチャンスを作ることが大事」。

どれも無視するには貴重すぎる、世界を知る選手達の意見である。

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