松山英樹が上海で世界選手権シリーズのHSBCチャンピオンズを圧勝した一方で、米国では同週開催のサンダーソン・ファームズ選手権が開催され、岩田寛が首位に3打差で最終日を迎えた。

松山英樹の優勝決定の瞬間 ハイライトムービー配信中
後半、次々にバーディを奪い、「14番で一瞬並んだと思った。(優勝は)あるかなと思った」という展開。だが、終盤の4ホールはティショットが乱れ、すべてパーどまり。首位との差は広がり、岩田は5位に終わった。

昨季をフェデックスカップランク146位で終えた岩田にとっては「久々の優勝争いだった」。優勝争いに絡んだのみならず、「ここ2年ぐらい良くないのが続いた」という彼のゴルフが「今週は良かった」と言い切れる内容だったことが、彼の表情を明るくしていた。

辛くもパーをセーブした上がり4ホールは「今までの僕の人生がああいう感じなんで」と自嘲気味なジョークも口にしていたが、この日の岩田の笑顔は、昨秋に彼が米ツアー出場権を初めて獲得したとき以上に晴れやかだったように思う。

技術や肉体、ゲームの構成の何かが変わったということではなく、岩田自身の心の持ちようが少しだけ変わったのだと思う。無理にポジティブになろうとするのではなく、とても自然に前向きになれている様子。

なぜ、そう思えたか?その理由はいくつかあった。

その1つ。岩田は昨季のランク125位以内に入れなかったため、ウエブドットコム・ファイナル4戦に挑み、3試合目を終えた時点では33位だった。4試合目の最終戦で頑張れば、トップ25に食い込んで今季のフル出場権を得るチャンスは十分あった。

しかし、米南東部を襲ったハリケーン・マシューの影響で最終戦は開幕前日に中止になり、すでに会場入りして初日を待つばかりだった岩田は、戦わずして今季フル出場のチャンスを失う結果になった。

「ハリケーンで1年を棒に振った」「キャリアが狂った」「代替大会を設定すべき」などと激怒した選手たちもいたという。だが、岩田は「残念だったけど、最終戦をプレーしてどうにかトップ25に入ってそのまま連戦しても、今週のように良くなっていなかったかもしれない」。思わぬオフができ、心身をリフレッシュできたことが今週の5位につながり、「かえって良かったのかも」。こんなに前向きに、しかも饒舌に語る岩田を試合会場で見たのは初めてだった。

東北福祉大の後輩である松山が上海で優勝し、先輩である自分はミシシッピで米ツアー初優勝を挙げて、先輩後輩の同週ダブル優勝?そう問いかけると、「どうですかねえ」と最初は照れていた。が、よくよく聞いてみると、「(ダブル優勝を達成したいという)その気持ちは、もちろんありました。それを見て、日本の若者がどんどん米ツアーに挑戦してくれたらうれしい」。

そんな岩田の想いは実現せず、初優勝もお預けになったが、心の持ちようが変わった今季の岩田は、米ツアー出場資格においてはフルシードの昨季より“格下”の準シードでありながら、戦い方も雰囲気も人間としても昨季よりずっと大きくなったように感じられた。

もちろん、ゴルフは上がってナンボ。プロゴルファーは結果を出してこその厳しい世界ではある。その意味では後輩の松山は果てしなく大きく羽ばたいている。だが、先輩・岩田もゴルフへのパッションでは決して負けていない。

先輩と後輩が2人揃って日本を沸かせる希望の星となり、キラキラ輝く。今週の米ツアーは、そんな素敵なジャパニーズ・ウィークだった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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