マレーシアで開催されたCIMBクラシックはジャスティン・トーマスの2年連続優勝で幕を閉じた。最終日は首位に4打差の2位からスタートし、8つスコアを伸ばしての逆転優勝。2位に3打差をつけての圧勝でもあった。その3打差を埋められず、松山英樹が2位に甘んじたことは残念だったが、その一方で、松山以下の選手たちを大きく引き離したトーマスの強さに驚いたゴルフファンは多かったのではないだろうか。

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いつの間にこんなに強くなったのかと思ってしまう。トーマスが1年間のウエブドットコムツアーを経て米ツアー本格参戦を開始したのは2015年シーズンからだった。

ルーキーイヤーのあの年、春先のヒューマナ・チャレンジで早々に最終日を最終組で迎えたトーマスは終盤の16番で池に落としてダブルボギー。初優勝はならず、7位に終わったが、自滅しても「奇跡だって起こる。だから、あらゆる可能性を最後まで信じてプレーした」と悔しさをこらえながら言い切った震えるような声は今でも耳に残っている。

父親も祖父もゴルフプロフェッショナル。トーマスはゴルフ一家に育ったサラブレッドだ。物心ついたときにはクラブを握っており、初めて試合に出たのは8歳、初めて勝利したのは12歳。米ツアーにデビューするまでに、ジュニア、アマチュア、カレッジ等々で合計125勝を挙げた。

その陰にはその何倍もの敗北もあった。だが、トーマスは負けたときこそ毅然としていようと心に誓ってきたのだそうだ。

座右の銘は「言い訳はせず、いつもチャンピオンのようにプレーする」。そのフレーズから「ように」が取れて、米ツアーのチャンピオンに初めて輝いたのが昨年のこの大会。そして今年は2連覇を達成し、再びチャンピオンになった。

この2年のうちに身に付けたと思われるトーマスの挽回力と集中力は素晴らしかった。3日目は10番、11番、12番の3ホールで4つスコアを落としながら14番から18番までの5ホールすべてでバーディを奪う大挽回。最終日は序盤の5ホールで一気に4つ伸ばしてからは静かに淡々とプレー。到来した好機は決して逃さず、9番と10番、16番と17番でそれぞれバーディを奪った。

しっかりと地に足を付けながらも首位を独走するプレーぶりは不動で無敵。誰をも寄せ付けないトーマスのゴルフは、まさに「チャンピオンのゴルフ」だった。

それにしてもトーマスが達成した同一大会2連覇は、米ツアーではマット・エブリーによる2014年と2015年のアーノルド・パーマー招待2連覇以来だそうだ。このCIMBクラシックではライアン・ムーアも2013年と2014年に2連覇を達成しているが、昨季の米ツアーでは誰一人、タイトルディフェンドができなかったということになる。

振り返れば、「連覇」という言葉はタイガー・ウッズ時代では当たり前のように耳にしていた。A・パーマー招待だけを見ても、ウッズは2000年から2003年まで4連覇、2008年と2009年に2連覇、そして2012年と2013年に2連覇を達成。そのほかにも得意コースで達成した連覇は数知れず、マスターズでさえ2連覇(2001年と2002年)したほどだが、近年はリハビリ中のウッズはもちろんのこと、他選手たちにとっても「連覇」のハードルは格段に上がりつつある。

その理由は、ひとえに選手間の実力差が縮まっていること。20歳代の若い選手、米ツアー歴がまだ3年と4年前後と短い選手でも、それ以前に積んだジュニア、カレッジ、アマチュア時代の豊富な試合経験やそこで身に付けた底力が、米ツアーにおける即戦力になる。それはトーマスにも松山にも当てはまる。

その中で連覇を成し遂げられる可能性や確率は年々小さくなる一方だが、その小さな可能性を見事に掴み取ったトーマスは、これから飛躍的にビッグになる選手だと私は思う。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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