<全英オープン 初日◇14日◇ロイヤルトゥルーン(7,190ヤード・パー71)>

 「泣きたいくらいだ。ハートブレイクさ」。ビッグレフティは8バーディ・ノーボギーで8アンダーの首位スタートにも18番ホールで頭を抱えていた。46歳のフィル・ミケルソン(米国)が迫ったのは、メジャー最少ストローク記録となる“62”。最終ホールの約6メートルのバーディパットを沈めていれば記録更新だったが、全ギャラリーの視線を集めてコロがるボールはカップに蹴られて止まった。

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 偉業へのラウンドは「無風だったし、太陽が出ていた。少しおかしいくらいにね(笑)」とスコットランドらしからぬ天候の中でスタートした。前半で4つスコアを伸ばすと、距離も長く風が海からのアゲインストになるINでも17番まで4つのバーディ。「バックナインは、レフティにとっては海からくるフックの風だから、ずいぶんとラクになる。本当なら難しいはずだけど、個人的には“スライスの風”になるアウトより全然ラクなのさ」とトゥルーンの常識を覆して最終ホールに足を踏み入れた。

 メジャー新記録達成の予感に誰もが心躍らせていた。同組で回っていたアーニー・エルス(南アフリカ)は18番のフェアウェイでミケルソンに声をかけた。「おい、これ“62”だぞ!?」。ミケルソンが答える。「もちろんだ。じゃなければティショットでドライバーは持たないよ」。グリーン上に足を踏み入れた時、エルスのボールはミケルソンより近くにあったが、エルスは「先に打つよ」と申し出た。優勝者が最後にパットを打つのはプロゴルフ界の決まりごと。ミケルソンの“62”ストローク目は、少しだけ早いウィニングパットのようだった。

 「18番のあのバーディパットが入っていれば、歴史を作ることができたんだ。打ってからカップまで残り30センチのところまでは“入った!”と思った。カップに向かってボールが真っすぐに進んでいくところが見えた。ボールを取りに行こうとした瞬間、アドレナリンが体の中を駆け巡った。だけど、ハートブレイクが待っていて、カップを舐めて外に出た。とても辛い。歴史を作るレアなチャンスだったのに…」。

 この日の“63”はタイガー・ウッズ(97年)、グレッグ・ノーマン(89年)が記録したロイヤルトゥルーンでの最少スコア“64”を更新するコースレコードとなった。メジャーでの“63”は、1980年にミュアフィールドで行われた「全英オープン」で青木功も記録している。

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