「ザ・メモリアル・トーナメント」は米国の中堅選手、ウィリアム・マクガートとジョン・カランのプレーオフにもつれ込み、2ホール目でマクガートが初優勝を挙げた。

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下部ツアーを経て、2011年から米ツアーで戦い始めたマクガートは、これまで何度も勝利をつかみかけては敗れてきた。2年前のノーザントラストオープンでは初日から3日間、首位を独走しながら最終日に崩れて6位に甘んじた。

長い間、地道に努力を重ねてきたのに報われないイメージだったマクガートが36歳にしてついに初優勝を遂げ、こぶしを握りしめた姿から勇気や元気をもらった人は多かっただろう。

ウサギとカメに例えるなら、マクガートは望まずしてカメの部類に属してきた選手だ。毎年、才能溢れる若者たちが猛スピードでスターダムを駆け上がる様子を傍目に、マクガートはゆっくりコツコツ歩んできた。

しかし、今大会では、そんなマクガートのカメの歩みがピラミッドの頂上付近にひしめくヤングスターたちの駆け足を上回ったことになる。

今大会にはジェイソン・デイ、ジョーダン・スピース、ローリー・マキロイという世界のトップ3が勢揃い。それ以外にもトッププレーヤーたちが数多く出場した豪華フィールドだった。

とりわけ、ここ1か月以内に挙げた優勝の余韻に包まれながらミュアフィールドビレッジにやってきたデイ、スピース、マキロイの3人は、このメモリアルで勝利を挙げ、全米オープンへ向けてさらに突き進んでいくことが期待されていた。

しかし、リオ五輪出場辞退の可能性があることを初めて臭わせ、その発言が大きく取り沙汰されたデイは、このミュアフィールドビレッジがホームコースであるにも関わらず、優勝争いの蚊帳の外で27位に終わった。

マスターズで2連覇達成に迫りながら崩れて惜敗したスピースは、そのショックを克服し、先週は地元テキサスで初めて勝利を挙げたが、今大会は57位と低迷した。

マキロイは欧州で今季初勝利を挙げ、今大会は初日に出遅れながらも巻き返して4位。だが、左手を下にしてパターを握るグリップ方法を採用したり元に戻したりと定着せず、「それが彼のゴルフ全体の不安定さの象徴だ」とは、米ゴルフ解説者の言。

確かに、現在の若きトッププレーヤーたちには、かつて王座に君臨し続けたタイガー・ウッズのような突出感やどっしり感が、まだ感じられない。若者たちは常にバタバタ走っているが、駆け足ゆえに躓いたり転んだり。「トップ」に位置付けられているわりには不安定さが見て取れる。

だからと言って、駆け足をわざわざノロノロ歩きに変える必要はないし、歩みを止めるわけにもいかない。恵まれた時代に生まれ付いた若者たちは、逆に言えば、猛スピードで走り続ける苦しさにさらされている。1週間のオフを経て、その翌週は全米オープン。だが、トッププレーヤーたちにゆっくり休んでいる時間はなく、デイは来週金曜、スピースは土曜にオークモント入りする。

マスターズ2連覇に失敗したスピースは、その後、4月と5月にオークモントを訪れ、すでに下見と練習を済ませている。「ハイブリッドを抜いて、代わりにドライビングアイアン(DI)を入れるつもりだ。ドライバー、3W、DIを使い分けるティショットが勝利へのカギになる」と、すでにそんな戦略も立てている。

デイは10年ほど前にオークモントでプレーしたことがあるが、来週末にあらためて現在のオークモントを眺め、「自分なりに吟味する」と目を輝かせている。

一方、オークモントをまだインターネット上でしか見たことがないマキロイは「今夜、現地へ飛び、明日はこの目でオークモントを見る」。

若者たちの駆け足はどんどんスピードを増していく。その走り方をエスカレートと呼ぶべきか、快走と呼ぶべきか。最終的には「勝てば官軍」なのだろう。厳しい一流の世界で生き残るためには、ともあれ、必死に走るしかない――。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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