約3か月後に迫ったリオ・オリンピックで、112年ぶりに正式競技に復帰するゴルフ。開催地のリオデジャネイロにはオリンピックのためにコースが新設され、テストイベントも実施されるなど受け入れ態勢が整いつつある。メダルを争う舞台となるコースは全体的にフラットな海沿いのリンクススタイル。芝は北米大陸のコースでみられるいわゆる洋芝ではなく、日本のコースに多い高麗芝が採用されている。

 コースの設計を担当したのは、設計家ギル・ハンス氏。自身を含む7名の設計チームが約9か月をかけて一大プロジェクトを遂行した。気鋭の米国人設計家はコースを作ったのか。設計チームの一員でバンカーのシェイプなどを担当したベンジャミン・ウォレン氏にコースの詳細を聞いた。

コース設計の参考にしたのは?野生動物も多く訪れる周辺環境
―コースの難しさは?
やっぱり風。このコースは絶対風が吹くからね。風によってスコアは変わると思う。だけどその“自然(植物)”と“風”のコンビネーションがこのコースの素晴らしい部分なんだ。

例えばハリー・コルトが設計したミュアフィールド(スコットランド)の素晴らしいところは、ホールがループするようにレイアウトされている(アウト9ホールは時計回りに外円を描き、イン9ホールはその内側を逆方向に円を描く設計)ことで違う風を作りだすところ。そんな環境だからタイガー(ウッズ)や(ジャック)ニクラスがいろいろな種類の風への対処をする練習もしていたんだ。

リオのコースも同じように内側からのループと、外からのループでレイアウトされていて(OUT9ホールは反時計回り、IN9ホールはその外側を時計回りに描く)、しかもとても風が強い。海風も強いし山側からの風もある。やっぱり風がこのコースの一番難しいところだね。

―コース設計のコンセプト
ほとんどのゴルフコースは初心者向けではなくて、例えばおじさんやおばさん達は大きな池があると池越えができないことも多いよね。でも、このコースは少し違ってオリンピックを開催したあとリオの人たちが使うことを考えているんだ。

例えば、ここのパー5(10番ホール)でプロゴルファーはアドバンテージを取るためにバンカーや池にアタックしていくと思う。でもリオの人たちはゴルフをする習慣が根付いていないからそれはとても厳しいことだよね。ここは常にジュニアや高齢の方が安心して回れるように池越えなどを作っていないんだ。このコースでは誰もボールが池に入る場面を見ないと思うよ。池はコース内の風景としての役割を果たしているんだ。

プロに対してはとても難しく、初心者や一般のゴルファーにはとてもやさしくプレーできる様に作られているということがポイント。オリンピックだけではなくて、リオの人達も楽しめることが重要だと思っている。

―男子大会と女子大会でコースに変更は加えるか
エイミー・オルコットがリオに3、4回来て、ギルと一緒にコースをまわって女子用にティの場所やコース全体を見ている。女子用のコースも大きく変わることはない。ただやっぱり風は吹くよね。

―優勝するにはどんなプレーが必要か
何度も言うけど、絶対強風になる日がある。この強風をちゃんとマネージできる人にチャンスが来ると思うよ。日本のヒデキマツヤマはミュアフィールド(2013年 全英オープン)で風をうまく支配していたから、マツヤマ選手にもチャンスはあると思う。ただ、イギリスのチームはオリンピックですごく強いし、風にも慣れているからイギリスは男女ともに有利かもね。ただ、もしスコットランド人が勝てなかったら、マツヤマ選手が勝つのを見たいけどね(笑)。

―このオリンピックにより、ブラジルのゴルフ環境はどう変わっていくか
まず、このコースができたことは、大きなインパクトを与えたと思う。そもそもリオにはコースが3つしかないし、どれもプライベートコースでメンバーやその友人しかプレーができなかった。ここは誰でもプレーができるから、もっとゴルフが大衆向けになるし、次の世代にとても役立つと思う。キッズのスキルも上がっていくし、別の大きな試合もできるかもしれない。ブラジルゴルフの長く続く道を作っていけると思う。

セントアンドリュースもここ100年のゴルフカルチャーを作り上げることにとても役立ち、アメリカやヨーロッパやどの国の人々もそこからゴルフを学んだ。良いゴルフコースは誰もがゴルフをすることができて、そこから学ぶことができる。そういうことがゴルフ自体を育てていくことにつながるんだ。このコースにもそうなっていってほしいね。

ベンジャミン・ウォレン(Benjamin Warren)
リオ五輪コース設計チームの一員でバンカーのシェイプ、隣接するショートコースのデザインなどを主に担当した。今年「日本オープン」が開催される狭山ゴルフクラブのバンカーシェイプも手掛けるなど、日本のゴルフ環境にも精通。Golf Environment Organizationのディレクターを5年間務め、世界各国のゴルフ場や協会、ツアーにアドバイスも送っている。

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