チューリッヒ・クラシックは雨天と日没サスペンデッドを繰り返した末、月曜フィニッシュの54ホールへ短縮され、最後は2ホールに渡るプレーオフを経て、米国人のブライアン・スチュアードの勝利で幕を閉じたが、中断ばかりの展開は冴えなかったし、優勝者もはっきり言って地味。だが、そんな中にも光るものはもちろんあった。

ローリーマキロイも快挙に反応?
 スチュアードは2005年にプロ転向後、ミニツアーや下部ツアーでの長い下積み生活を経て、2013年にようやく米ツアーに辿り着いた。だが、なかなか初優勝が挙げられず、毎年、シード確保に必死だった。

 「どうやってボールをコントロールしたらいいかに苦しんできた日々は決して楽しくはなかった」

 今季も春先には3連続予選落ちを喫し、不調に喘いでいた、だが、それでも地道に努力を積み重ねていれば、いつかは実るもののようで、悪天候と最悪のコースコンディションに見舞われた今大会でボギーをただの1つも叩かない見事なプレーを披露した。

「ショートゲームがとても良かった。何よりパターが良かった」

 この54ホールでのスクランブリングは完璧の100%。米ツアー全体においても、スチュアードはスクランブリングでランク1位。グリーン周りでのボールコントロール術は、いつしか誰よりも長けていた。

 人知れず積んだ陰の努力は、必ずいつか報われる。米ツアー4年目、120試合目、33歳にして手に入れた初優勝。これまでメジャー大会は全米オープンに2度自力出場、全米プロに1度だけしか出たことがない。今大会を制したことでメジャー出場への道が開け、来年のオーガスタへの切符も掌中に収めたが、スチュアードが喜んでいたのはマスターズ出場が決まったことではなかった。

 「(来年のマスターズのことは)考えてもいなかった。去年は128位でシード落ちして苦しかったけど、これからは向こう2年間、シードのことは考えず、少しだけ楽に過ごしていける。それが何よりうれしい」

 今季11人目の初優勝者。11人の中にはプロ転向後に早々に挙げた初優勝もあれば、スチュアードのようにようやくつかんだ初優勝もある。そのどちらであったとしても、初優勝を契機に大きく飛躍する選手は多い。スチュアードはそんな広がる未来へのスタートラインにようやくついたと言えるのだろう。

 スチュアードとプレーオフを戦って敗北したジェイミー・ラブマークもアン・ビョンハンも、みな初優勝を目指していた。誰が勝っても今季11人目の初優勝者が誕生していたことになる。

 この日、一時は首位に立ち、1打差でプレーオフに残れず4位になったボビー・ワイアットは、今季から米ツアーにノンメンバーとして挑み始めたばかりだが、アラバマ大学ゴルフ部ではジャスティン・トーマスとチームメイトで、良きライバルでもあった。

 そう言えば、今年のマスターズで悔し涙を飲んだジョーダン・スピースは、大会後、ジュニア時代からの親友トーマスらとバハマへ癒し旅行に行った。同行したリッキー・ファウラーは一番年上の27歳で4人の中ではリーダー的存在だったが、スピース、トーマス、カウフマンは22〜24歳で、みなジュニア時代からカレッジ時代まで同じ舞台で戦い続けてきた同年代だ。

 最初は、彗星のように米ツアーに現われてメジャー2勝、世界一へと上り詰めたスピースがスターと化し、スピースを追いかけるように米ツアーにデビューしたトーマス、そしてカウフマンがどちらも初優勝を挙げ、マスターズに初出場し、エリート集団の仲間入り。今大会で初優勝を逃したワイアットが、その集団に加わるのは時間の問題であろう。

 その一方で、スチュアードのように地道に長くしっかり歩んで初優勝を挙げた這い上がり集団にも多数の選手が名を連ねている。

 米ツアーの層は相変わらず厚く、そしてますます厚くなっていく。不規則進行の短縮大会になってしまったけれど、チューリッヒ・クラシックはそんなことを感じさせてくれた大会だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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