昨季は全米プロ制覇を含む年間5勝の快進撃を見せ、世界ナンバー1にも輝いたジェイソン・デイ。

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 だが、プレーオフシリーズ終了後は愛妻が第2子出産を控えていたため、試合には1つも出なかった。今年に入ってからは、これまで4試合しか出場しておらず、ディフェンディング・チャンピオンとして臨んだファーマーズ・インシュアランス・オープンは体調不良で予選落ち。他の3試合でも優勝争いに絡むことはなく、米ゴルフ界では早くもデイ不調説が囁かれ始めていた。

 「いろいろな人から『どうしたの?』『去年みたいなグレートな成績が今年は出せていないのは、なぜ?』と何度も聞かれた。でも僕は、それはプロセスだと信じてきた。一生懸命に取り組んできたことをやり続ける。それが正しいと信じて、我慢強く歩き続けていけば、最後にはきっと報われる」。

 今年5試合目となったアーノルド・パーマー招待で、デイは自身の言葉通り、報われた。4日間、単独首位を守り通しての完全優勝は、大会史上、わずか4人目の快挙だ。それにしても、「信じて、我慢して歩き続けていけば、きっと報われる」というフレーズは、幼少時代から紆余曲折の人生を乗り越えてきたデイが口にすると、とても現実味が感じられ、「そうだよね」と頷かされる。

 父親を病気で失くして以後、貧しい生活、淋しさからグレてしまった少年時代を経て、プロゴルファーを目指し、単身渡米して下部ツアーから米ツアーを目指し、ついに世界の1、2を争うトッププレーヤーへ。その過程でも、毎週毎日、いや毎ホール、毎ショットにおいても、一番大事にしていることは「信じること」だと、デイは振り返った。

 今週は初日から首位に躍り出たとはいえ、最初から最後まで「ショットは不調だと感じていた」。それでもデイは「無理に何かを起こそうとせず、じっと我慢していれば、好機は必ず訪れると信じていた」という。

 優勝争いの終盤。デイは17番のバーディで前の組でプレーしていたケビン・チャッペルに追い付き、そのチャッペルが18番でボギーを喫したことを、デイは18番ティに立ったときに知ったそうだ。「だから、18番のティに立ったとき、とてもナーバスになった」。デイのドライバーショットは大きく右に飛び出し、ギャラリーの群れの外側のラフへ沈んだ。

 「最初に頭に浮かんだのは、グリーン左奥のバンカーなら最悪でもパーを拾うチャンスはあるということ。僕は、そう信じた」。

 実際、その左奥のバンカーからピン1メートルへ寄せ、パーパットがウイニングパットになった。今季初勝利、米ツアー通算8勝目を掴んだデイは、拳を静かに握りしめながら、信じたからこそ報われた自らの勝ち方に満足感を覚えていた。

 米メディアは喜びに浸る勝者に対しても、何の遠慮もなく、ストレートに質問を投げかける。「ジェイソン、キミのショートゲームは過少評価されていると思わないかい?」。デイが、きょとんとしながら「誰と比較して?」と尋ね返すと、米国人記者は「ショートゲームがとても上手い選手たちと比べて」と付け加えた。

 そのあとのデイの返答が痛快だった。「過大評価されているか、過少評価されているか、それとも“イーブンパー”かは知らないけど、僕はショートゲームは自分の強みだと信じている。少なくとも、今日の優勝争いのあの状況下、あの18番で勝つために必用なあのバンカーショットを打てる能力が僕にあることだけは、実証することができた」。

 僕は、そう信じている――デイの目がそう言っていた。誰が何を言おうと、どこで何が起ころうと、自分を信ずれば、報われる。自分を信ずれば、いつか必ず勝てる。

 デイの勝ち方に「自信」の意味をあらためて教えられた最終日だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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