荒天のため、日曜日と月曜日の2日間にまたがったファーマーズインシュアランス・オープン最終ラウンド。両日とも、そのコンディションはアンプレアブルに近いものだった。

盆栽?個性的なトロフィーを手に微笑むスネデカー
 日曜日は横殴りの雨と風。屋外に30秒も出ていたら確実に全身がずぶ濡れになった。選手たちのクラブ選択は非力なアマチュア男性並み、ときには女性並みと化し、ブラント・スネデカーは「9番アイアンで90ヤード、6番アイアンで120ヤード」を打ち、KJチョイのドライバーショットは「230ヤード以下しか飛ばなかったホールが4度もあった」という具合。

 18ホールを終えた選手は23人で平均スコアは78.12。そのうちの11人が80台以上のスコアを喫したこの状況は、米ツアーの大会ではなく、アマチュア大会か、あるいはXゴルフの大会かと思えるほどだった。

 48人が残りホールをプレーした月曜日は、雨は上がり、青空が広がったものの、風はむしろ強まり、フェアウエイもグリーンも前日の雨でぬかってコースコンディションは最悪の状態。朝はコース整備がなかなか終わらず、スタート時間が2時間も遅延した。

 その月曜日、岩田寛と同組で回っていたベン・クレーンとジョナサン・ベガスが15番でどちらも大きく左に曲げ、ギャラリーロープの外側のラフに沈んだ。

 先に打つクレーンがルール委員を呼び、左前方に前夜の風雨で根こそぎ倒れた大木が横たわり、それが自分のライン上にあると主張。救済を認められたクレーンは最終的にはロープの内側まで移動することに成功し、ドロップして次打を打った。

 次にベガスも同じことをしようとしたのだが、ベガスの位置のすぐ前方には別の立ち木があり、左前方に倒れた木が横たわっているかどうかとは無関係に、彼がピンをまっすぐ狙うことはできないとルール委員に判断された。「だから救済なし」と言われたベガスは、ここ数年でかなり上達した英語で必死に交戦していたが、結局、あるがままで打たざるを得なかった。

 結果はどちらもパーだったが、そんな2人を眺めていて思い出したのは、岩田が米ツアー出場資格を獲得した昨秋に口にしたこんな言葉だった。

「英語ができるかどうかで1試合に1打ぐらい違うって丸山茂樹さんが言っていたんです」

 こんな場面に遭遇したら、英語力のみならず、ルールの知識、説得力、いろんなものがモノを言う。そんなものはゴルフとは関係ない?取るに足らない些細なこと? 

 いや、そんなことさえ活用しなければ生き残れない極限状態。トーリーパインズの最終ラウンドは、まさにそういう状態だった。

 日曜日に3アンダー、69で18ホールを回り終え、唯一のアンダーパーをマークしたスネデカーは「どうやってアンダーを出せたのか、自分でもわからない。もう一度やれと言われても、もうできない」と興奮気味に振り返ったが、「スイングなんて考える余裕はなかった。とにかく持っているすべてをフル活用し、知恵を振り絞った」という言葉に達成感が溢れ、印象的だった。

 結果的に、月曜日にプレーをしなかったスネデカーが、そのまま逃げ切る形で優勝した。暫定9位から18位に後退して終わった岩田も「風向きが変わったので、昨日までのほうが良かった」と悔しそうに振り返った通り、月曜日のコンディションは苛酷さを増し、上位陣はこぞってスコアを落とした。

 つまり、スネデカーはラッキーだった?

「今日(月曜日)は信じられないほど難しかったはず。それをプレーせずに済んだ僕は本当に本当にラッキーだった」

 本人いわく、答えはイエス。しかし、幸運だけで掴んだ勝利では、もちろんない。優勝争いにほど遠い位置で日曜日を迎え、それでも一縷の望みにすべてを賭け、すべてをフル活用して戦ったからこその勝利。

 本当にラッキーだったのは、極限状態を勝ち抜く術をスネデカーが知っていたことだ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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