世界ナンバー1のジョーダン・スピースが年明けから早くも勝利を飾った。前年度の優勝者だけが出場するヒュンダイ・トーナメント・オブ・チャンピオンズはハワイのカパルアCCが舞台。初日から快走し、3日目を終えて2位と5打差の通算24アンダー、単独首位に立ったスピースは、最終日の前夜、こう言っていた。

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 「明日、ブルックス・ケプカやパトリック・リードは7アンダー、8アンダーで回り、追撃をかけてくるはず。だから僕も4つも5つも伸ばしていかなければ優勝はできない。それが最近のゴルフ界のレベルというものだ」

 米ツアーの4日間72ホールの大会において、優勝スコアのアンダー数が30台を超えたのは2003年の今大会でアーニー・エルスがマークした31アンダーという、ただの1度だけ。今年のスピースは、エルスのその記録に追い付き追い越すことが十分に可能な位置で最終日を迎えていた。だが、それでも「まだまだ勝利までの道のりは遠い」とスピースに言わしめるほどケプカやリードなど2位以下の選手たちの猛追やキャッチアップも現実的だったわけだから、スピースが指摘した通り、昨今の米ゴルフ界のレベルはかつてないほど高まっていると考えていい。

 しかし、具体的に彼らの「何のレベル」がそんなにも高まっているのかと言えば、それはゴルフ技術だけではない。用具の進化や科学的な肉体強化の恩恵で選手たちの飛距離は昔より格段に伸びてはいるが、それでも年々、大幅に伸びるわけではもちろんない。

 スピースに限っていえば、彼は決してロングヒッターではなく、「このオフはパッティングの強化と飛距離を伸ばすスイング作りに重点を置いて練習した。ショートゲームはあまり練習しなかった」と言っていたにも関わらず、今週の優勝に最も貢献したのはショートゲームだった。

 そんなふうに眺めてみると、昨今の米ツアー全体のレベルアップは、技術的な向上のおかげというよりも、むしろ選手たちの戦い方や戦いに際しての考え方の向上のおかげだと思われる。

 そして、22歳のスピースをはじめ、若き選手たちが若くして優れた戦い方を身に付け、メンタルコントロールにも長けているのは、ジュニアゴルフやカレッジゴルフでプロさながらの戦いを経験し、場数を踏んできたことの賜物に違いない。

 最終日の戦い方をスピースはあらかじめこんなふうに思い描いていた。

 「追撃してくる選手のことを気にするより、数字を意識しているほうが戦いやすい。だから明日は30アンダー以上を目指してプレーする。30アンダーは僕にとって未踏の地でもあるからね」

 前半で2つスコアを伸ばしたスピースは、10番でもバーディを奪い、2位と5打差で迎えた上がり4ホールで、30アンダーを目指し、一気に攻めに出た。

 だが、パー5の15番ではイーグルパットを外して苦笑い。それでも焦ることなくバーディパットを沈め、16番でもさらなるバーディで29アンダーへ。17番はパーどまり。

 そして最終ホールはパー5。2オンを狙ったフェアウェイからのショットは、プレッシャーがかかったのだろう、あからさまにダフってしまい、再び苦笑い。グリーン右100ヤードほどの地点へどうにか転がり出るラッキーショットだったが、2打目の失敗を3打目で補うかのようにピン1.5メートルに付けてバーディの締め括りで勝利。

 上がり4ホールで技術的には2度もミスをおかしたが、それでもその4ホールで3バーディを奪って圧勝できたのは、スピースの戦い方の上手さのおかげにほかならない。

 優勝スコアは30アンダー。エルスの31アンダーを抜くことはできなかったが、スピースは「とても満足だ」と大きく頷いた。それもそのはず、元々、この日のスピースにとっての「31」は、抜くための数字ではなかったのだ。彼が本当に欲しかったものは、アンダー数を示す30台の数字ではなく、優勝の二文字だけ。

そんなふうに考え、実践できるスピースらが上位にひしめく昨今の米ゴルフ界。そのレベルは、確かに、かつてないほど高まっている。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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