先週30日に40歳になったタイガー・ウッズの誕生日に際し、正反対の2つの声が聞こえてきた。

腰の痛みにコースに倒れこむタイガー・ウッズ
 米国のある全国紙の女性記者は「40歳なのに70歳に見えるタイガー・ウッズ」という見出しで、持ち前の毒舌を振るっていた。

 この19か月で同じ箇所(腰)を3回も手術したウッズは、3回目の手術以降は小幅な歩行しか叶わなくなっている。おそるおそる、そうやって歩く姿は「40歳ではなく70歳ぐらいに見える」と彼女は書いていた。

 女性記者の熱弁は、さらに続いた。ゴルフクラブを手に天才児と呼ばれながら2歳でTVデビューを果たし、ジュニア、カレッジ、アマチュア、そしてプロ転向。どの時代にも「最年少」「最速」等々、「最」の付く記録を歴史に刻んできたウッズは、だからこそ年を取るスピードも最速で、「世の中の40歳たちの中ではOldestに見える40歳、すなわち70歳ぐらいに見える40歳になってしまった」、と彼女は言っていた。

 とてもユニークな主張で、思わず苦笑させられた。なるほど。全速力で駆け抜けてきたがゆえにウッズのエネルギーやパワーが朽ち果て、実年齢以上に老いているという説は、確かに一理ある。激しいスイングで酷使してきたウッズの腰の疲弊ぶりは、腰を酷使せずに生きてきた40歳のそれと比べれば、老朽化は想像以上。まさにボロボロの状態だ。

 だが、そうやって身を削りながら築き上げてきたヒト、モノ、カネの財産のおかげで、ウッズは今後、ビジネスでもジュニア育成でもチャリティ活動でも、どれだけでも好きなことができるわけで、将来未来に残された可能性の大きさを眺めると、「40歳ではなく20歳ぐらいに見える」とも言えそうである。

 一方、ウッズをいつも優しく擁護するジャック・ニクラスは「40 is New 30.(40歳は新たなる30歳だ)」という言葉をウッズのバースデーに送っていた。

 「私にとって人生最高の日々は40歳になってから訪れた」。だからタイガーよ、キミの最高の日々もこれから到来するはずだから頑張れという意味を込めたエールだ。

 ウッズにとってニクラスは常に憧れであり、目標であり続けてきた。メジャー18勝の記録はウッズの究極のゴール。ことあるごとにウッズは「ジャックの18」を口にしてきた。しかし、引退示唆とも受け取れた12月上旬の会見の際、ウッズは「ジャックの18」には言及せず、その代わりに、こう言った。

「ジャックは73、僕は79」

 米ツアー通算勝利数で自分はニクラスを上回ったから、もういい――。

 それから数日後。ウッズは「まだまだ勝ちたい」と姿勢を前向きに変え、明るい笑顔も見せた。ポジティブな気持ちのままに誕生日を迎えたとすれば、ウッズ自身は40歳という年齢を30歳とは思わないまでも70歳と感じて悲観したりはしていないはず。

 願わくば、「79勝は73勝より上だ」なんて自己満足に無理矢理ひたるのではなく、「メジャー18勝まで、あと4つ」と思い直せるウッズであってほしい。

 コップに水が「もう半分」か、「まだ半分」か。モノゴト、受け取り方次第でいろんなことが変わってくる。たとえ結果を変えられないとしても、少なくとも取り組む気持ちやプロセスにパワーが増し、笑顔も増える。

 2016年の米ゴルフ界が抱える不安は少なくない。けれど、ウッズの低迷や不在を嘆くより、スピース、デイ、マキロイの存在に目を向けたい。初の五輪参加で米ツアーのスケジュールは超過密化するが、「大変すぎる」ではなく「面白すぎる」と思えばいい。プロの世界ではなく一般のゴルフ界に目をやれば、ゴルフ人口は減少し、ゴルフ人気は停滞中。「困ったなあ」ではなく「上向かせるチャレンジができる」と思って行動を起こしてほしい。日本のゴルフ界、然り。

 一番大切なのは、周囲から何歳に見えるかではなく、自分が何歳だと思えるか。世界のゴルフ界が、それぞれの意識を前に向け、パワーに溢れる2016年を創り出してほしい。そのための一助になることを、この私も目指していきたい。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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