あのターンベリーが全英オープン開催コースのローテーションから外される――驚きのニュースは英国のザ・インディペンデント紙によって世界へ発信された。

ターンベリーで開催された09年全英オープンでは石川遼とタイガー・ウッズが同組でラウンド
 ターンベリーと言えば、最も近年では2009年に当時59歳だったトム・ワトソンが最年長優勝に迫り、ステュワート・シンクに惜敗した、あの名コースだ。現在の正式名称は「トランプ・ターンベリー」。そう、米大統領選挙に名乗りを上げているドナルド・トランプが2014年4月に購入し、2020年全英オープンが開催される予定になっていた。

 だが、昨今のトランプによる度重なる差別的発言を重く見たR&Aが、スポンサーや外国人選手によるボイコットなどを避ける意味も含め、ターンベリーを全英ローテーションから外す決断をしたという。

 折しも、その前日、米メディアのゴルフドットコムが、やはりトランプに絡む驚きのニュースを報じたばかりだった。古くはドラルライダーオープン、近年は世界選手権シリーズの1つであるキャデラック選手権の舞台となっているフロリダ州マイアミのドラルリゾートもトランプの所有だが、ゴルフドットコムによれば「米PGAツアーは2016年大会まではドラルで開催するが、2017年からは別の場所へ移す検討を始めている」そうだ。

 不動産王からゴルフ王へと勢力を拡大してきたトランプが、今、ゴルフ界から遠ざけられようとしている。その原因は自業自得と見られている。一体、何が起こっているのか。

 リーマンショックに端を発した米国経済の悪化は米ゴルフ界にも深刻な影響をもたらし、ゴルフ場経営が難航していった中、一気に攻めの一手に出たのがトランプだった。「自分のコースで男子のメジャー大会を開く」ことを夢に掲げ、2012年にドラル、2014年にターンベリーという具合にビッグ大会の舞台となりうる欧米の一流コースを次々に買収。そんなトランプとゴルフ界の関係は決して悪くはなかった。

 しかし、米大統領選出馬を表明してからのトランプは強硬な姿勢や発言が目立つ。今年6月にはメキシコからの不法移民に対して差別的な言葉を吐き、ゴルフ関連団体の多くがトランプと距離を置くようになった。PGAオブ・アメリカはグランドスラム・オブ・ゴルフの会場だったトランプ・ナショナル・ロサンゼルスの使用をすぐさま中止した。LPGAはコース変更の時間的余裕がないということで、やむを得ず今年の全英女子オープンをトランプ・ターンベリーで開催したが、他の団体は静観している状態だった。

 だが、トランプが先ごろ口にした「イスラム教徒の入国禁止を」といった蔑視発言は、静観していたゴルフ団体に火を点け、米ツアーもR&Aもトランプ所有コースを大会開催コースから外す決断に至ったようだ。

 トランプに絡むこうした一連の出来事は、ゴルフ界にとって、どんな意味を持つのか。浮かんでくるのは「残念」の二文字だ。

 ターンベリーもドラルも他のトランプ所有コースも、長きに渡り、大勢のゴルファーに親しまれてきた名コースだ。コース側の人々はビッグな大会の舞台になることを誇りに思い、メンテナンスや準備に力を注いできた。地元の人々も開催地としてのプライドを抱いてきたはず。そして何より、コースに対する思い出や思い入れのある選手たちが一番残念に思っていることだろう。

 トランプはゴルフが大好きで、だからこそゴルフ界に進出し、メジャー開催を夢見てきたのだと言われている。だが、ゴルフを愛していると言いながら、ゴルフを愛する大勢の人々をがっかりさせている。その責任の大きさ、重さを、トランプはわかっているのだろうか。

 この一連の出来事の中で唯一「いいこと」があるとすれば、それはゴルフ界が「平等」を目指す方向でしっかり動き出したことだ。オーガスタナショナルに続き、セント・アンドリュースも昨年と今年、女性メンバーを受け入れた。そして今、差別的発言をしたトランプに批判の目を向ける形で世界のゴルフ界が性別や国籍の違いを越えた平等を目指し、アクションを起こしている。

 それが唯一のポジティブ要素だ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>