最近、米国の大都市でUber(ウーバー)が人気を博している。ウーバーとは、一般人が行なう個人タクシー業のようなもの。日本で“白タク”と呼ばれるものと近い感じがしないでもないが、ウーバーは違法営業によって儲けることが目的ではなく、ごく普通の一般人が自分の空き時間に自家用車を活用し、利用者側もタクシーより格安料金で移動ができるという相互メリットを得るためのものとされている。私はまだ実際に利用したことはないのだが、周囲では気軽に利用する人々が増えつつある。

HSBCチャンピオンズを途中棄権…腰を抑える松山英樹 なぜ、そんな話をいきなり書いているかというと、そのウーバーをやりながら米ツアー選手になる夢を追いかけ続けているプロゴルファーの話を耳にしたからだ。

 サンディエゴに住むトレバー・ヤングなるプロは、大学ゴルフ部を終えたあと、ミニツアーに出たり、一度はゴルフウエアの会社に就職して営業マンになったり、その会社を辞めて再びミニツアーに挑戦したり。現在はゴルフ場にクラブプロとして勤務しているが、仕事を終えた夕方から夜は、ウーバーでコツコツお金を稼ぎ、ウェブドットコムツアー出場権を得るためのQスクールのエントリーフィーを貯めているという。

 そんな話を聞いた矢先、フィル・ミケルソンが長年のコーチ、ブッチ・ハーモンと別れ、新しいコーチを付けたというニュースが飛び込んできた。新コーチは41歳のオーストラリア人、アンドリュー・ゲットソンなる人物。彼はアリゾナ州スコッツデールにあるミケルソンの第2のホームコース、グレイホークGCに所属しているティーチングプロ。

 だが、元々はツアープロで、かつては世界各国にあるプロツアーを転戦する生活を10年間も送り、ウエブドットコムツアーで戦った経験もある。最終的にはツアープロよりティーチングプロを選び、教える道を歩んできたのだが、ゴルフの世界に踏みとどまり、努力してきた先に、ミケルソンの専任コーチになる日が到来しようとは夢にも思っていなかっただろう。

 先週、上海で開催されたHSBCチャンピオンズを制したのは世界ランキング86位のスコットランド人、ラッセル・ノックスだった。彼もまたウェブドットコムツアー出身者。父親は米国人ということもあり、フロリダ州の大学に通い、卒業後、2007年にプロ転向。以後、ミニツアーとウエブドットコムツアーを経て2012年に米ツアーデビューを果たしたが、すぐさまシード落ちして下部ツアーへ逆戻り。翌年、再び米ツアー出場権を取り戻したが、一度も勝利を挙げられないまま30歳を迎えた。

 前週のCIMBクラシック出場中、本来は出場資格のなかったHSBCチャンピオンズに「出られることになった」とツアー側から伝えられ、ノックスの妻は大慌てでクアラルンプールにある中国大使館へ走り、中国入国のためのビザ手続きを行なった。なんとかノックス夫妻は翌週の月曜日に上海に入国できたが、キャディは水曜日まで到着できず、プロアマは妻がバッグを担いで乗り切った。

 米ツアー93試合目にして挙げた初勝利。「長い間、勝てなかったけど、なぜだか初優勝がビッグ大会での優勝になった」

 プレッシャーのかかった最終日、勝利の決め手は「アイアンの好プレーだった」とノックスは振り返った。そして、どんなふうにアイアンが良かったのかという彼の説明が面白かった。この日は降雨の影響で地面がぬかっていたため、ボールをピックアップして拭いて置く「リフト・クリーン&プレース」が許可されていた。「リフト・クリーン&プレースだったから5番アイアンもウエッジもすべて同じように打てた(打ちやすかった)」

 ウーバーも、ツアープロからクラブプロへの転身も、補欠からの繰り上がりも、リフト・クリーン&プレースも、活用できるものは何だって最大限に活用し、決して諦めず、夢を追いかけ続ける。そんなたくましさを感じさせる選手が、みなウェブドットコムツアー経験者であることは決して偶然ではない。

 米ゴルフ界で夢を追いかけるのなら、まずウェブドットコムツアーから始めよ。日本のゴルフ界にそう呼びかけて、「なるほど」と頷く選手が一人でも増えてくれたらいい。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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