新シーズン開幕戦の「フライズ・ドットコム・オープン」は、アルゼンチン出身のエミリアーノ・グリッロと韓国系米国人のケビン・ナのプレーオフにもつれ込み、2ホール目でバーディを奪ったグリッロが初優勝を挙げた。

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 グリッロは今季から米ツアーメンバーとしてフル参戦を開始したばかりの23歳の新人。開幕戦で飾ったこの優勝は、米ツアー初戦における優勝となった。

 プレーオフ1ホール目の18番(パー5)。グリッロは絶好のチャンスを迎えたが、1メートルの短いバーディパットがカップに蹴られた。米国のテレビ解説者は「グリッロはショートパットを外してカッとなっているから2ホール目は乱れる。ケビン・ナが断然有利になった」と決めつけるように言った。だが、グリッロは「気持ちを切らしてはいけないと自分に言い聞かせて集中した」。

 プレーオフ2ホール目(同じく18番)。ナがボギーの「6」になったあと、すでに3打目でグリーンをとらえていたグリッロは「2パットでいいんだ。集中しろ」と、またまた自分に言い聞かせた。そして挑んだ3メートルのバーディパットがウイニングパットになった。

 「生涯で最高の瞬間だった」すぐさま頭をよぎったのは“マスターズに出られる”だったそうだ。

 「米ツアーメンバーになったとき、世界ランクのトップ50に入ることを今季の目標にしようとチームで話し合った。それが、いきなり優勝で、オーガスタなんて…」

 2011年にプロ転向して以来、グリッロは戦う場を求めて世界各国へ出向き、クラブを振ってきた。欧州、アジア、南ア、南米。米ツアーにもスポンサー推薦で昨季5試合に出場。そのうちの1つ、プエルトリコ・オープンではプレーオフで負けた。その悔し涙の苦い味を思い出したからこそ、今日のプレーオフでは「気持ちを切らしてはいけない」と思うことができたのだそうだ。

 昨季終盤、と言っても、ほんの数週間前のことだが、日本の岩田寛が挑んだ下部ツアーのファイナル4戦にグリッロも挑み、その4戦で「9位→2位→予選落ち→優勝」という立派な成績を出して今季の米ツアーメンバーになった。

 つまりグリロは、ファイナルの最終戦で優勝し、この開幕戦で優勝したわけで、どこで優勝しても優勝は優勝と考えれば、彼は出場2試合で2連勝を達成したことになる。

 無名の新人の優勝と言うと、ポッと出てきてパッと勝ったラッキー優勝のように思われがちだ。グリッロの場合、スピード出世であることは確か。だが、米ツアーに至るまで、この初優勝に至るまでには、たとえ短期間だったとはいえ、いろんな想いを抱いた彼なりの日々があったのだ。

 そんなグリッロにプレーオフで敗れたケビン・ナにも、もちろん彼なりの日々がある。ナはプロとしてのキャリアはグリロより10年も長い32歳。だが、優勝は2011年にラスベガスで挙げた1勝のみだ。松山英樹とのプレーオフに負けた昨年のメモリアル・トーナメントは記憶に新しい。これでナのプレーオフ・レコードは0勝3敗になった。

 テレビ解説者が「断然有利」と言ったプレーオフ2ホール目。ナはフェアウェイからの第2打にドライバーを握ったが、大きく左に曲げ、それが命取りになった。「チャンスがある地点まで運ぶためにはドライバー以外に届く選択肢は無かったし、今週、僕のドライバーは毎回パーフェクトだった。だから自信はあったんだ」

 しかし、曲がってしまったこと。そして、またしてもプレーオフで負けてしまったこと。悔しいだろうけれど、それもまたナにとっての「彼なりの日々」になった。

 昨年大会で3位に食い込んだ松山は、今年はショットは快調だったが、終始パットに苦しみ、天を仰ぐことの連続という悔しい4日間になった。バーディチャンスを逃し続けた松山、完璧で自信があったドライバーが敗北を決定づける一打になったナ、そして感無量の初優勝を飾ったグリッロ。

 うれしくても、悔しくても、「それぞれの日々」。その日々をこれからの糧にすることができれば、どんな日々も、いつかバラ色になる。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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