BMW選手権を制し、今季5勝目、通算7勝目を挙げたジェイソン・デイが、幼いころから夢見てきた世界一の座をついに射止めた。

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そう言われて、先週までは誰が世界一だったんだっけと思わず首を傾げてしまう人も多いはずだ。先週はローリー・マキロイ、その前週はジョーダン・スピースが世界一だった。

そんなふうに世界ランキング1位の座が毎週入れ替わるのは1992年3月(イアン・ウーズナム、フレッド・カプルス、ニック・ファルド)、1997年6月(タイガー・ウッズ、アーニー・エルス、グレッグ・ノーマン)以来のこと。言い換えれば、20年以上も続いてきたウッズの王座独占時代が今、20歳代の若者たちによって破られ、王座を激しく競り合う新時代が始まったのである。

王座が入れ替わるスピードも早いが、快走のきっかけをつかんだ若者が王者にのし上がるスピードも早い。スピースは今年のマスターズ、全米オープンを制し、メジャー4大会すべてで走り続け、瞬く間に世界一になった。デイのアクセルが全開になったのはカナディアンオープン優勝からだ。全英オープン惜敗後の彼の世界ランキングは9位だったが、その翌週、カナダで勝利を挙げると、全米プロ、バークレイズ、そしてBMW選手権を制し、出場わずか6試合で9位から1位へ上昇した。

昨年のマスターズでバッバ・ワトソンに負けたスピースを眺めながら、彼がその翌年に世界一になることを想像できた人がどれほどいたか。今年のセント・アンドリュースで悔し涙を流したデイを眺めながら、彼がその2か月後に世界一になることを想像できた人がどれほどいたか。彼らは我々の想像をはるかに超えるスピードで走っている。

これもまた、ちょっぴり言い方を変えれば、第2のスピース、第2のデイがこれからまだまだ出現する可能性が大いにあるということなのだろう。たとえば、BMW選手権で2位に食い込んだダニエル・バーガーはフェデックスカップランキングを46位から一気に9位へ上昇させ、ルーキーでは唯一、来週のツアー選手権進出を決めた。今は「バーガーって誰?」と軽く扱われている22歳の新人。だが、来季あたり、バーガーこそが世界一の座を競う存在になっているかもしれず、今の新時代はビッグスター誕生のスピードも早い。

けれど、それは目に見える部分の動きが早いということであって、それぞれの選手がビッグスター、ましてや世界一になるまでには、やっぱり長い時間を費やしてきた。

かつて惜敗を繰り返していたデイは、優勝争いになると「勝ち急いで負けていた」。2013年マスターズのときも「グリーンジャケットを羽織る自分を想像して気持ちが先走った。メンタルエラーで勝利を逃した」。

以後、複数のメンタルトレーナーの指導を受け、「オフシーズンも、試合がないオフウィークも、本当に本当に一生懸命に練習と努力を積んできた。肉体づくりにもゲームづくりにも必死に取り組んできた。その成果は、すぐに表れなくても、いつかは表われるから、今はやるべき努力をするのみだと自分に言い聞かせてきた。そういう意味では、努力の成果は想像以上にとても早く表れてくれた」

初日50位から最終日は7位へ順位を上げ、今季9度目のトップ10入りを果たした松山英樹の胸の中にも、かつてのデイと同じような想いがあるようだ。今、王座を競り合っている同世代の彼らの快走レースに「入っていこうとは思わない」と松山は言い切る。彼らのことがまったく気にならないはずはないけれど「あんまり気にしていない。毎試合いいプレーができたらいい。優勝争いしたとき、プレッシャーの中でいいプレーができるよう練習することが大事。優勝争いを何回もすることが大事」。

何もかもがスピーディーな時代だからこそ、焦らず、先走らず、惑わされず。それが頂点への唯一で最短最速の道。

その道をしっかり踏みしめている松山だからこそ、スピースやデイ同様、人々の想像を超える猛スピードの快走を、いつ開始してもおかしくない。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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