米ツアーのレギュラーシーズン最終戦、ウインダム選手権は、成績不振に苦しむ選手たちがフェデックスカップランク125位以内に食い込んで来季シード権と来週からのプレーオフ出場権を目指すラストチャンスの大会。そんな意味合いのせいもあり、この大会は毎年、地味で静かだった。

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だが今年は、タイガー・ウッズの初出場でお祭り騒ぎとなり、そのウッズが首位へ浮上した2日目からは世界中から注目を浴びる大会と化した。ウッズがフェデックスカップランク187位を一気に上げて125位以内へ食い込むためには優勝以外に道はない。不調に喘ぎ続けてきたウッズが優勝する可能性は言うまでもなく低かったが、そのウッズが首位に立ったことで世界中のファンが奇跡を祈った。

しかし、ウッズは3日目から徐々に失速。最終日は11番の第3打をシャンクさせてトリプルボギーを喫し、続く12番もボギー。世界が祈った奇跡は、起こらなかった。

けれど、小さな可能性を信じ、奇跡を祈りながらこの大会に挑んでいたのはウッズだけではない。フェデックスカップランクでウッズの1つ上の186位にいたデービス・ラブも「今季のラストチャンス。最後の賭けだ」と思いながら、今大会にやってきた。

すでに51歳。昨年からチャンピオンズツアーにも参戦しているラブ。とはいえ、年齢やシニア入りが、イコール、米ツアーでの優勝を諦めるということにはならない。「もう1度、勝ちたい」という渇望は今なお彼の中にある。

最終日、2イーグルを奪い、「64」をマークする快進撃で一気に17アンダー、単独首位へ。そんなラブに追い付いた選手は一人もおらず、ラブは同大会3勝目、米ツアー通算21勝目を挙げた。「2度も大手術を受け、諦めかけたこともあったけど、いろんな人々が『もうちょっとだけ頑張れ』と言ってくれて、僕も『もうちょっとだけ頑張る』と答えてきた。みんなの励ましで、ここまで来れた。感謝の気持ちでいっぱいだ」

51歳4か月10日の優勝は米ツアーの最年長優勝記録の上から3番目。偶然にも今年はサム・スニードが今大会(の前身)で52歳10か月8日の最年長優勝を飾った1965年から50周年の記念大会だった。

ラブに1打及ばず、ぎりぎりで勝利を掴み損なったジェイソン・ゴアには悲哀を感じずにはいられなかった。ウッズやラブ同様、ゴアもフェデックスカップランク166位の位置から125位を目指して今大会にやってきた。

41歳は、もはや若くはない。プロ入り以来、「この19年で1勝だけしかできてない」。2005年に挙げた初優勝は当時の規定ではマスターズ出場資格に該当せず、いまなお「オーガスタとセント・アンドリュースでプレーすること」がゴアの夢だ。成績不振に陥り、“転職”を思い立って母校のペパーダイン大学ゴルフ部コーチに立候補したこともあった。「でもここに、しがみついてきた」。

1打差でラブを追いかけていた72ホール目。フェアウェイからの第2打をピンそばに付けられず、20メートルも手前にボールが止まった瞬間。勝利にも夢のオーガスタにもぎりぎりで届かないと覚悟したゴアは、キャップのツバを下げ、肩を震わせた。

欲しいものに手が届いた人、届かなかった人。ラストチャンスの場は、いつだって悲喜こもごもだ。けれど、悔しい結果も次に生かすことができれば、「あのときの悔しさがあったからこそ」と思い返すことができる。敗北も、いつかは「いい思い出」に変わる。

優勝したラブはフェデックスカップランク186位から76位へ、惜敗したゴアは166位から98位へ、そして石川遼も最後の最後に130位から124位へ食い込み、みな来週のプレーオフ第1戦へ進んでいく。

残念ながらウッズは187位を178位までしか上げられず、彼の今季は今週が文字通りの最終戦になった。だが、優勝争いの場に戻ってきたという事実は、ウッズにとってもゴルフ界にとっても、大きな大きな朗報だ。

勝っても、勝てなくても、それぞれに何かしら前進のあった最終戦だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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