先週の全英オープンでプレーオフ進出に1打及ばず、悔し涙を流したジェイソン・デイが、今週のカナディアンオープンを制し、米ツアー通算4勝目、今季2勝目を飾った。

聖地で涙…ジェイソン・デイは全英オープン制覇を逃す
 デイはセント・アンドリュースで惜敗した直後から気持ちを切り替えようとしていた。

 「勝てなかったのは残念。でも僕はいいゴルフをした。最後のパットも、いいパットができた。そこには、がっかりしていない。自分にとって最高のゴルフをすることこそが永遠の目標。『僕の日』は、きっとすぐにやってくる。それまでの我慢だ」

 全米オープンでも優勝争いに絡みながら持病のめまいに襲われ、「完走」を目指すゴルフになって悔しさを噛み締めた。全英オープンは5日間4ラウンドで「ボギーは3つしか叩かなかった」と、自分自身のプレーには満足していたが、それでもクラレットジャグには手が届かなかった。

 「天候も悪くて、僕のセカンドラウンドは通算25時間もかかって、本当に厳しい1週間で、ヘトヘトになった。でも、それがメジャーというものだし、それはもう終わったことだ。僕は僕で、先週学んだことを今週に生かし、少しでも成長することに意義がある」

 カナダにやってきたデイは爽やかな笑顔でそう言った。英国エジンバラからカナダ・トロントへは米ツアーと大会側が用意したチャーター機で他の出場選手らとともに移動した。飛行時間は約7時間。「時差調整のため、機内で眠らないよう必死で起きていた」。

 そうまでしてデイが今大会に出場した理由は2つ。1つは大会スポンサーのRBC(ロイヤル・バンク・オブ・カナダ)がデイの契約先でもあること。そして、もう1つは、デイ自身が前進していくためだ。シーズンエンドのフェデックスカップ・プレーオフ4戦を勝ち進み、「10ミリオンのボーナスを獲得するのが次なる目標。そのために自分を少しでも有利なポジションに置きたい」。

 プレーオフ4戦の先にはプレジデンツカップが待っている。そして来年はリオ五輪も待っている。どちらの大会でもオーストラリアを代表して戦うことをデイは切望している。

 「僕の国は北米と同じぐらいのサイズの国土だけど、人口はカリフォルニアの2倍ぐらいだけ。ゴルフ市場は決して大きくはない。でもゴルフを愛する人々は僕を見て応援してくれている。五輪は、かつてはアマチュアのためのものだと思っていたけど、母国を代表して参加してメダルを取れたら、すごいよね」

 デイが五輪出場を望む秘かなる理由は、もう1つあるそうだ。

 「僕の友達で、以前、バスケットボールで五輪に出てゴールドメダルを取ったアメリカ人がいる。そいつの家に遊びに行ったとき、メダルを取るって、いいなあと思った。どんなふうに戦って、どうやって勝ったか。その瞬間のことを後々、語ることができる。歴史の一部になって振り返ることができる。そんなふうになれたら、すごいよね」

 カナディアンオープン最終日。疲労と時差ボケが残る心身に鞭打ちながら神経を研ぎ澄ませ、16番、17番の2連続バーディで首位に浮上したデイ。18番で沈めた6メートルのバーディーパットは「セント・アンドリュースのラストパットとそっくりだった」。

 そのバーディパットがカップに吸い込まれた瞬間、「ウォー!」という雄叫びを上げながら拳を握りしめ、黄金期のタイガー・ウッズを思わせる激しいガッツポーズ。言うまでもなく、彼が雪辱を果たした瞬間。彼の心の中の何かが晴れ渡った瞬間だった。

 この秋には、長男ダッシュくんに弟か妹ができる予定だという。

 「パパは、負けて悔しかったけど、そのあと、そうやって勝ったんだよ」愛妻や子供たちに誇らしげに語ることができる素敵な歴史を、デイはこの日、カナダに刻んだ。セント・アンドリュースで彼が言った「僕の日」は、彼が歩を止めなかったからこそ、あっという間に訪れた。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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