米ツアーのグリーンブライア・クラシックは、4人によるプレーオフに突入し、2ホール目でダニー・リーが初優勝を決めた。

今季の米国男子ツアーを写真で振り返る
 リーと言えば、思い出されるのは2009年のマスターズ。あの大会で「ティーンエイジャー・トリオ」と呼ばれ、大きな注目を集めたのは、当時17歳の石川遼、18歳のリー、そして19歳のローリー・マキロイだった。

 あれから6年の歳月の中で、マキロイは世界ナンバー1に上り詰めたが、石川とリーは迷路にはまったような6年を過ごしてきたように思う。石川もリーも優勝に手が届きかけたことは過去に幾度もあった。

 だが、なかなかチャンスをモノにできず、やがては優勝どころか、シード維持もままならない日々も経験。そんな石川とリーの歩みには、似ている面が多々あった。

 今大会の初日。石川は一時的には単独首位に立つ好プレーで4位発進したが、日に日に後退し、終わってみれば最下位から2番目の76位。好調なゴルフが持続できず、とりわけ好発進を切りながらその後に崩れるのは今季の石川に何度か見られた残念な傾向だ。

 だが、石川自身は、成績の大きな波を気にしてはおらず、「成績の安定より、スイングの精度で安定したものができるようにと思っている」。いいスコアを出そうとしたところで「いいスコアの出し方というものはないと思う」。成績を安定させようとしても「やろうと思ってやれることではないと思う」。それならば、何をやろうとしているのかと言えば、それが「スイングの精度を上げること」なのだと彼は考えている。

 それゆえ、スコアも順位も挽回できなかった石川の最終ラウンドは、戦いの場においては「冴えないゴルフ」だったが、石川自身は「小手先ではなく体でクラブをコントロールできた。いい内容のショットでしっかり終われた。来週も同じ内容でショットがしっかり打てれば、先は明るい」と、むしろ満足感を覚え、光を見い出していた。

 スコアや順位より、技術の向上と技術に対する満足感が最優先。その姿勢は米ツアー挑戦を開始した2009年から一貫しており、父親以外にコーチを付けない姿勢も一貫している。その頑なな姿勢が、いいのか悪いのかは、しばしば方々で取り沙汰されるが、たとえ周囲が何と言おうとも、自分が信じる道でなければ、何年も歩み続けることは、きっとできないだろう。

 優勝したリーも技術最優先の考え方は石川と同じだが、コーチに関しては正反対だ。「僕は子供のころから自分のスイングに満足したことが一度もない。スイングを良くしたくて、コーチはたぶん100人以上、変えた」。

 それは、まさに迷路にはまり込んだような日々だった。2010年の秋にはQスクール(予選会)に失敗し、翌年は下部ツアーで1年を過ごした。そこで賞金ランク6位になり、2012年は米ツアーに戻ってきたが、再びQスクール、下部ツアーへ転落し、そして再び米ツアーへ。行ったり来たりしてきたリーの成績は、石川以上に不安定だったとも言える。

 だが、今年のプエルトリコ・オープン後に出会ったドルー・ステッケルが「僕のスイングを一気に向上させてくれて、僕の人生を変えてくれた」。スイングの向上が自信になり、そのおかげで、ついに初優勝を挙げることができたと、彼は振り返った。

 かつてのティーンエイジャー・トリオの中でマキロイだけが突出し、リーは石川に“同類”のような意識を抱いてきたそうだ。

「僕もリオも、よく練習場で遅くまで一緒になった。僕らはたぶん誰よりも多く球を打ってきた。こうして、ある日突然、僕が優勝できたように、きっかけさえあれば、リオにもそんな日は必ず来る。僕にとって、あのマスターズから今日までの6年は長い旅だったけど、スイングに取り組み続ける旅はこれからも続いていく。リオも同じだと思う」

 黙々と努力する姿は、誰かが必ず見ていてくれる。石川には、いい仲間、いい理解者がいる。優勝者の口から、それを聞くことができたことは、私にとって、ちょっとうれしい出来事だった。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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