<〜全英への道〜 ミズノオープン 最終日◇31日◇JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(7,415ヤード・パー72)>

 瀬戸内海に作られたホームベース状の埋め立て地。コースに陰影を作るコブとブッシュに、ちょっとだけ不似合いなパームツリー。全英への道を争う和製リンクスでの戦いはこれ以上ない結末を迎えた。ミズノ所属契約の手嶋多一がトータル15アンダーまでスコアを伸ばして、契約先への恩返しともなるツアー通算8勝目。2002年以来3度目の全英オープンへの出場権もつかみ取った。

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 2位に3打差をつけて迎えた最終18番グリーン。手前からのアプローチを30センチに寄せると、勝利を確信して両拳を握りしめた。歓喜の瞬間のあとは、武藤俊憲、白潟英純、富村真治らミズノ勢からウォーターシャワーの手荒い祝福。「最後の4ホールくらいは意識ないです。こんなにうれしいことはない」と満面の笑みを浮かべた。

 重圧がかかるホスト大会でのトーナメントリーダー。前日の夜は「寝てるような寝てないような」と緊張は隠せなかったが、気負いはなかった。スタートの約1時間前に練習場に姿を見せたものの、キャディの手に握られているのはドライバーとユーティリティと6番、8番アイアンにサンドウェッジの5本のみ。各10球も打たないうちに早々にドライビングレンジから引き揚げた。

 練習前にストレッチもアップもしない。これが手嶋多一流の調整だ。クラブを握っている時間よりもコーヒーカップを持っている時間のほうが長いくらいだが、これには理由がある。「僕の場合は打っても良くならない。完璧主義でトゥメカニカルになってしまう」。

 ホールアウト後30分でコースから引き揚げる今の姿からは想像もできないが、若かりし頃の手嶋は誰よりも練習をする選手だった。だが、2001年に「日本オープン」でツアー2勝目を挙げた頃から成績は徐々に低迷。2002年の終盤には棄権を含む5試合連続で決勝ラウンド進出を逃すなど苦しい時期を過ごした。その時のキャディから言われた一言が転機になった。「色々考え過ぎてゴルフという“ゲームをしていない”」。

 スイングの形を追い求めるあまり、カップに向かってボールを打つという大原則を忘れていたことに気づいて「もうやめようと」。スイングからゲームを作っていく“スイングオリエンテーション”から、グリーンから逆算してゲームを組み立てていく“ターゲットオリエンテーション”のプレースタイルに目覚めた瞬間だった。

 だけど、“練習”をしていないわけではない。ホテルに帰れば姿見の前で素振りをしてはイメージを固めていく。何よりも大切にしているリズムとルーティンはこうした日々の細かい意識から作り出されている。今年のオフも練習場には月に2、3回しか行かなかった。「たまにボールを打ったら手が痛くなるんじゃないかと心配になる」と笑った46歳。憧れの聖地に立ってもきっと、そのスタイルはぶれることはなさそうだ。

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