幸先のいいスタートだった。フェニックス・オープン最終日。首位との3打差を追いかける松山の1日は驚きのチップイン・イーグルから始まった。前半で4つスコアを伸ばし、後半の13番のバーディでついに単独首位へ。流れは松山に向いて見えた。勢いは松山に感じられた。幸運の女神が微笑みかけていたのは松山のように思えてならなかった。

リベンジならずまた1打差…松山英樹、2位タイ「全ホール悔しい」
 すでに今季3度目、今年だけでも2度目の優勝争い。すでに米ツアー1勝を挙げているチャンピオンだ。そんな松山だからこそ、この日、このまま優勝に輝くのではないか。ホールを追うごとに、どんどんそう思えてくる展開だった。

 しかし、そうはならなかった。直接的に勝敗を分けたのは14番と15番の2ホール。松山自身、「14番のボギーは痛かったし、15番のティショットをミスしたのもすごく痛かった」と、悔しそうに振り返った。

 だが、単独首位に立ちながら惜敗に終わった本当の原因は、その2ホールのみならず、もっと大きなところにあったのだと、松山はホールアウトしたとき、すでに悟っていた。

 だからなのだろう。「悔しいのは全ホール悔しい」と彼は言った。

 2ホールではなく18ホールすべてが悔しい――。何がどんなふうに悔しいという意味なのか。

 「昨日まで良かったショットが悪くなった」「昨日までピンをさしていたショットが、今日は1回もピンをさしていない」

 「前半はいい感じでプレーできたけど、後半は、いいショット、いいパットが1回も打てなかった」

 突き詰めれば、いろんなものが持続できなかったということだ。ショットもパットも「いい」を最後の最後まで保てず、途中で「悪い」に変わってしまった。それならば、なぜ変わってしまったのか。

 「自信がないのかな。自信を持って試合に臨めていない。だから、大事なところで、プレーがまだまだ」

 それが「ゴルフの勝負はバック9」と言われる由縁なのだろう。驚きのチップイン・イーグルで発進しても、前半の好プレーで4つもスコアを伸ばしても、持っていたはずの「いい」が持続できず、途中で「悪い」に変わってしまったら、フロント9の「いい」は、まるで無かったことのように幻と化し、「悪い」に変わったバック9の厳しい現実だけが広がっていく。

 そんなゴルフの奥義と厳しさを身を持って誰よりも痛感させられたのは、言うまでもなく、そうやって惜敗した松山自身。だから彼は、せっかく持っていた「いい」を保ち続けることができなかった最終日の「全ホールが悔しい」と言ったのだ。

 「自分の中のフィーリングを、もっと最終日のプレーで出せるようになりたい。自分の出した感覚と今の(目の前で求められる)感覚と近づけたい。でも、そのために何をやったらいいのか。それはわからないけど、練習して、自信を持ってプレーできるようになりたい。そのために練習していきたい」

 何をやったらいいのか――。松山は「わからない」と言ったけれど、わからないなりに試行錯誤を続け、最終日の優勝争いをもっともっと続けていけば、きっと答えは見えてくる。「いい」が最後まで持続できなかった今週は、勝利を逃したが、「それでもこの位置で終われたのは、少しは成長しているのかな」。

 18ホール全ホールの悔しさを、最後には前向きな言葉に変えた松山は、「全ホール良かった」と満足げに笑う快心の勝利を近いうちにきっと挙げるだろう。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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