三井住友VISA太平洋マスターズに出場したバッバ・ワトソンは最終的には優勝争いに絡めなかったが、大会を盛り上げたという意味で招待選手としての期待に十分に応えたと言っていい。

バッバ・ワトソン、V争いならずも…残した熱狂と強烈なインパクト
 日本から海を渡って米国に伝わってきたワトソン関連のニュースは、彼が握るピンクのドライバーとその飛距離ばかりが取り沙汰されていた。だが、ワトソン自身が最も誇っているのはショートゲームだ。そのショートゲームの重要性に自ら言及し、24位で得た賞金126万円全額を日本のジュニアゴルファー育成のためにさらっと寄付したところが、いかにもワトソンらしかった。

 ワトソンは話題が豊富な選手だ。今年もノーザントラスト・オープンとマスターズを制し、絶好調ぶりを披露していながら、夏場には全米プロのドラコン大会の参加拒否など日頃の言動が批判の的になった。だが、アジアに足を伸ばせば、上海ではHSBCチャンピオンズを鮮やかに制覇。その勢いのままやってきた日本でも、とりあえずは首位に立ち、優勝争いから脱落したとはいえ、ためらいもなく賞金全額を寄付。

 最初のマスターズ制覇の直前に養子縁組したカレブくんのおかげで「僕は成長した」と語ってきたワトソンは、この秋、2人目の養子縁組のための手続きを開始したことを明かしたばかりでもある。

 良くも悪くも話題性で周囲を圧倒し、目立ちまくるその姿勢、その言動、そのプレーぶり。同時に、社会への感謝や貢献を決して忘れない謙虚で人間愛溢れる姿勢。だからこそ、ワトソンはスターと見なされるのだ。

 スターと言えば、この20年超、米ゴルフ界で人気ナンバー1を誇り続けているスーパースターはフィル・ミケルソン。彼も公私双方において良くも悪くも話題が豊富だ。

 かつてはメジャーに勝ちかけては惜敗すること続きで、それが彼の最大の注目ポイントだった。メジャーチャンプになって以後も、2006年の全米オープンでは目前の優勝を72ホール目のミスで自ら逃す結果になり、「オレはなんてバカなんだ」という迷言を歴史に刻んだ。

 マイナーリーグのピッチャーのトライアウトに挑んだこともあった。全米でチェーン展開する24時間の大衆レストラン『ワッフルハウス』のオーナーになろうとビジネス界に触手を伸ばしたこともあった。近年も自宅のあるカリフォルニア州の州税が高すぎるから引っ越しも考えていると発言して騒動になった。つい先日はライダーカップで米国チームのキャプテン、トム・ワトソンを批判し、その騒動は今なお米ゴルフ界で尾を引いている。

 だが、そんな中でも、ミケルソン自身は母校アリゾナ州立大学ゴルフ部のアシスタントコーチに就任し、オーストラリアの有望高校生ゴルファーに自ら電話をかけて「ウチの大学に来ないかい?」とリクルート活動しているという明るい話題をすぐさま提供。「What’s next?(次は何だ?)がミケルソンの合言葉」と言われる由縁だ。

 米ゴルフ界の選手たちがこんなふうにアクティブなのは、「思ったら、すぐやる」という彼らの性格によるところも大きいが、「思ったら、やればいい」と選手たちの自主性と自己責任に任せる米ゴルフ界の環境、それに米国の国民性も手伝っている。

 選手たちのアクティブ性が周囲にすぐさま伝わるのは、良くも悪くも臆せずどんどん報じる米メディアの姿勢によるところが大きい。スーパースターのみならず、さまざまな選手のオン/オフ双方におけるさまざまな言動を、各メディアの記者それぞれが自分なりの視点に基づいて積極的に記事化している。

 選手もメディアも、それらを取り巻く環境も、みな奔放、みなユニーク。「みんながこうだから自分も」という横並びを嫌い、「自分はこう思う、こうしたい」という独自の意志を行動に移す。周囲の出方を見たり待ったりする必要がないから行動に移すのが早い。そのぶん騒動につながることもあるけれど、選手たちのダイナミックな魅力や迫力がじんじん伝わってくる。

 スーパースターを眺めたときの感想は、突き詰めればシンプルな言葉になる。「さすが」「すごい」「かっこいい」「違うなあ」。欧米からスター選手を迎え入れたときだけでなく、毎週のようにそうした言葉が飛び交う日本ゴルフ界とその環境を創っていかなければいけない。その必要性を御殿場で噛み締めた人は、どのぐらい居たのだろうか。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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