かつては翌年のシード権争いの最後の砦に位置付けられていたフォールシリーズが新シーズンの開幕シリーズに変わって今年が2年目になる。そうやって大会の位置付けが変わっても、相変わらずタイガー・ウッズやローリー・マキロイのごときビッグスターたちの姿は、ここにはない。

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 だが、今週の第2戦は先週の開幕戦よりフィールドはやや厚くなり、世界ランク上位50名のうち10名、昨季最終戦のツアー選手権に進出したフェデックスカップランク上位30名のうち8名が今週のラスベガスにやってきた。

 この2試合にこれだけ上位選手が揃う現象は、フォールシリーズ時代には決して見られなかったことを考えると、この開幕2試合を自分の年間スケジュールの中でどう位置づけ、どんな意味合いを持たせるかが、選手ごとに少しずつ変わりつつあると言えそうだ。

 先週の開幕戦で優勝したべ・サンムンは、昨季はこの開幕2試合の出場を見送り、マレーシアで開かれたCIMBクラシックを自らのキックオフ戦にした。が、長く続いていた不調から少しでも早く抜け出し、少しでも早くランキングを上げたい一心で、今季は開幕戦から挑むスケジュールへ変更。そこで早々に勝利をつかみ、シード権を2017年シーズンまで安泰化させたことは、彼のスケジュールチェンジの賜物だった。

 今週のシュライナーズホスピタル・オープンをディフェンディングチャンピオンとして迎えたウエブ・シンプソンは、今大会を「中尺パターで戦う“おそらく”最後の米ツアー大会」に位置付けつつ、ラスベガスにやってきて4位になった。

 ウエイクフォレスト大学時代から中尺パターを武器にして戦い、2012年全米オープンを含む米ツアー4勝を挙げてきたシンプソン。しかし、米ツアーでは2016年1月からロングパターが禁止になるため、シンプソンは今季1年間をかけて中尺パターからレギュラーパターへシフトしていくつもりでいる。

 すでに「練習時間の半分はレギュラーパターを握っている」。そして、レギュラーパターを使用する初大会にしようと秘かに心に決めているのは、日本のダンロップフェニックスなのだそうだ。そこから先はレギュラーパターへの完全シフトを目指していく予定。愛用してきた中尺パターとは、このラスベガスを最後に試合では「メイビー、サヨナラ」と感慨深げだった。

 松山英樹は昨年に引き続き今年も開幕戦で3位になり、今週の第2戦は10位と開幕2試合でいきなり好成績を収めた。「順位は求めないとプロじゃない。結果を出してナンボだと思う」と結果には満足していたが、「ムラがあった」と振り返ったパットには大いなる不満を示し、「次なる優勝、メジャーに勝つためには今のままのパッティングでは絶対に勝てない」。自分のゴルフの現状と課題をしっかり確認できたことが、松山にとっての開幕2試合の意義だった。

 石川遼は開幕戦が19位、第2戦は昨年2位、今年28位と順位的には下がったが、予選落ちが濃厚と言えるほど大きく出遅れながらも「100位以下のスタートから、ここに戻ってこれた」という挽回実績を作った意義は大きい。

 そして、優勝したベン・マーティンは、プロ5年目、米ツアー2年目にして勝利をつかみ、かつてのように下部ツアーを転戦する生活から向こう2年間は確実に離れられる立場を確保した。下部ツアーの熾烈さ、大変さを身を持って味わってきた選手にとって、その意義は何よりも大きい。

 今はまだ移行期にある開幕シリーズの在り方は「フィールドが厚くなっていけば、スポンサーも増え、賞金も増え、これからさらに変わっていく」と米ツアーのメディアオフィシャル、マーク・スティーブンスは予想する。

 このあとに続くマレーシアや中国まで足を伸ばすか、休むか。米ツアーの非公式大会ながら世界ランクには加算される“タイガー・ウッズの大会”(ワールドチャレンジ)に出るか、出ないか。米ツアーが多様化するにつれ、選手の選択肢は増え、そうなればなるほど、どんな取捨選択をするかが選手たちの腕の見せ所になる。

 スケジューリングはツアープロに求められる重要な要件。逆に言えば、どこでどんな大会に出るか出ないかを決めるのはツアープロとしての当然の権利だ。そうした事情をすべて踏まえた上で、選手たちの意志を尊重し、開幕シリーズの成熟を気長に待っている米ツアーのふところは大きく深い。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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