米ツアーは今週のウインダム選手権を終了とともにレギュラーシーズンを終え、明日からは4試合に渡るプレーオフシリーズへ突入する。プレーオフ第1戦へ進めるのはフェデックスカップランク125位まで。このウインダム選手権ではその125人に食い込むべく、熾烈な争いが繰り広げられていた。

石川遼、最終戦は70位タイ…次週から初のプレーオフシリーズへ
 優勝したカミロ・ビジェガスは最終日を首位から5打差でスタートし、1イーグル、5バーディの快進撃で大逆転による逃げ切り優勝。フェデックスカップランクを105位から37位へ一気にアップさせた。

 ビジェガスの場合は、ここで優勝できなかったとしてもプレーオフには進めたわけだが、この日、優勝争いの大混戦の中で、勝利の二文字とともにプレーオフという言葉を呪文のように唱えていた選手もいた。

 ヒース・スローカムはその1人。今大会では4位に食い込んだとはいえ、72ホール目で3パットを喫した瞬間、スローカムのプレーオフ進出は叶わぬ夢と化した。ジョナサン・ベガスはフェデックスカップ124位でプレーオフ進出のまさにボーダーライン上に立っていたが、今大会で8位と奮闘したことでフェデックスカップ108位へ上げ、プレーオフに進めることになった。フェデックスカップ125位だったポール・ケイシーも118位へアップ。だが、マーチン・レアードは127位に留まり、涙を飲んだ。

 プレーオフに進出できる125位のボーダーライン。その前後を彷徨いながら必死の戦いを繰り広げている選手たち。その大半は、米ツアーで勝利を挙げた実績のある顔ぶればかりだ。優勝しても、ちょっと油断すれば、ちょっと故障すれば、瞬く間に転落していくのが米ツアーの厳しさだ。

 優勝したビジェガスだって、2008年にはプレーオフ3戦目のBMW選手権と最終戦のツアー選手権を制し、一世を風靡したヤングプレーヤーだったが、2010年のホンダクラシック優勝を最後に勝利からすっかり遠ざかり、世界ランクは254位まで後退して、スランプという闇の中を彷徨っていた。

 今季は夏ごろから徐々に調子を上げていたが、上位争いや優勝争いに絡んだことはなく、ここで勝利を挙げたことは「突然、起こった」と、ビジェガス自身も驚き混じり。だが、奇跡や偶然では、もちろんない。

 「ゴルフはアップとダウンがあるゲームだ。ここ数年、僕はダウンの側にいたけど、僕のやり方、僕のハードワークはいつか実を結ぶと信じていた。それが、今、実を結んだ」
嬉しそうなビジェガス。そして、悔し涙と落胆を抱えて去っていった選手たち。そんな悲喜こもごもを眺めるにつけ、思い出されるのは昨年のこの大会だ。

 松山英樹はこの大会で米ツアー出場権を確実化した。練習グリーンにいた松山に「良かったね」と声をかけると、「はい、良かったっす」と嬉し涙がこぼれる真似をして、屈託のない笑顔を見せた。

 一方、石川遼はこの大会でウエブドットコム・ファイナル行きが決まり、「やるしかない」と気丈に語った。「ファイナルの最終戦には取材に行くから頑張って」と声をかけ、右手を差し出したら、その手を両手で包むように握り返し、「ありがとうございます」と言ったあのときの石川を今でもはっきりと覚えている。

 そんな一年前と比べたら、松山が22位、石川が75位でプレーオフ進出を楽々決めた今年は、2人にとって大きな前進、大きな飛躍の年だと言っていい。

 石川は米ツアーではまだ勝利がなく、今大会では大波のスコアで乱高下して、本人も「まだまだ」と感じているようだが、米ツアーではシードを維持すること、プレーオフ進出を決めることだけでも、ほんの一握りのトッププレーヤーに入った証になる。

 松山だって、ほんの一年前の今日は、これから米ツアーに出る資格を得たことを喜ぶ立ち位置にあった。が、その松山がルーキーイヤーに初優勝を挙げ、フェデックスカップ20位台まで向上しているのだから、この2014年は松山にとって最高のシーズンになりつつある。だが、メジャー4大会での昨年と今年の成績を比較し、「振るわなかった」と言われる。松山自身、全米プロ最終日のプレー後は、まるで叱られる子供のように神妙な顔で、「お先真っ暗です」。

 いやいや、違う。去年の今日、今年の今日、肩を落として去っていった選手たちと比べれば、今年の松山と石川の成長と進歩は著しい。2人とも「お先」は明るいはずなのだ。少なくとも、今は――。

 世界ランクでもフェデックスカップランクでも1位に君臨するローリー・マキロイと松山や石川との間には大きな隔たりができているけれど、レギュラーシーズンが終了した今、まずは松山と石川、2人の日本人選手の今季の奮闘を讃えたい。

 そして、2人のプレーオフ進出に拍手を送り、どちらかが最終戦まで進んで10ミリオンのビッグボーナスを手に入れる夢をみんなで見ようではありませんか。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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