プレーオフ第1戦のバークレイズは米ツアーのトップ125人だけが集まったハイレベルの大会だった。だが、その中で、まったくと言っていいほどフェアウエイを捉えられなかった初日と2日目の石川遼のティショットは、あまりにも豪快に曲がりすぎて、逆に目を見張るものがあった。

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 現地の米国人ギャラリーの間からも「イシカワはエブリーホール、右に飛んでいく」という声が漏れ聞こえた。しかし、ある米国人のご老人は「でも、それで彼はパットを入れて、ちゃんとバーディーを取る。彼のゴルフは面白いね」と言い、したり顔で笑った。

 あるときは隣のホールのフェアウエイから打ち、あるときは大木の根元から、考えに考えて次打を打った。その動きや様子を見ているだけでも、フェアウウエイからピンを狙うゴルフより何倍も何十倍もエネルギーを消耗しているのだろうと思えた。心身ともに――。

 そんな石川のショットが、3日目の後半あたりから徐々にフェアウエイを捉え始め、そうしたら、ポンポンポンとバーディーが3つも来た。

 「やっぱりフェアウエイから狙えるゴルフは全然違う?」そう尋ねたら石川は「はい、全然違いますねえ。簡単に思える」と、うれしそうだった。

 この「全然違う」の意味が、最終日にはっきりと見て取れた。

 初出場のプレーオフ。勝ち残り方式ゆえ、1つでもいいスコアを出し、1つでも上の順位に入らなければ次戦へ進める可能性は激減していく。ましてや75位で第1戦を迎えた石川には、あまり余裕はなく、普段から重い1打の重みは、プレーオフを迎えた石川にとっては、とりわけ重い状況だ。

 だからこそ、16位で迎えた最終日は微妙な位置だった。アグレッシブに攻めてスコアを伸ばしたい気持ちと、攻めすぎて自滅しちゃいけないという気持ちが交錯し、「どうシフトさせるかが難しかった」。

 そして、石川は後者を選んだ。「順位を落とすことは、なくしたかった」。攻めるゴルフをモットーにしてきた石川が、攻めすぎず、1打も落とさず、順位も落とさないゴルフに徹する。それは、いろんなものを制御しなければならず、至難の業だったはずなのだ。

 だが、最終日の石川はそれを見事にこなしていた。ショットは少しずつ上向き、パットは「10センチだけ打ててなかった」と振り返ったものの、ショットと小技とパットでそれぞれ補完し合い、大怪我を防いだ彼のスマートなプレーぶりは「4日間で一番」という自画自賛に値する内容だった。

 普段とは逆を目指すゴルフがうまくできたのは、初日から3日目の後半まで、ラフからグリーンを捉える曲芸みたいなゴルフをやり続けたおかげ。だから、いざフェアウエイに行き始めたとき、ファエウエイのありがたみが逆によくわかり、「全然違う」「簡単」と思えたのではないか。そう思えて石川に尋ねてみたら、やっぱり彼も頷いた。

 「練習のとき、わざとボールを踏んで地面に少し沈めて打ったり、砂の上からクリーンヒットを続けたりして、そのあとフェアウエイから打つと簡単に感じるのと似ていました」

 そして、その「簡単」は、ボールのライの話に留まらず、体に込める力、体から抜く力なども含めたゴルフ全体の組み立てにも関わってくるのだという。

 「ラフから打つときは腕に力を入れるし、体の動きも全然違う。それを続けて、そのあとフェアウエイから力を加減しながらウエッジでアプローチショットを打つのは、組み立てがすごく難しかった。だから、それと比べたら、フェアウエイから打ち続けられるのは、すごく楽でした」

 曲芸みたいなゴルフで苦しみながら、耐え抜くゴルフを続けてきたからこそ、3日目の後半以降の石川は、ようやく訪れた「楽」を堪能し、その恩恵を享受しながら、「打つこと」から「スコアを作ること」へ意識を向けることができた。

 フェアウエイを捉えられれば「全然違う」と言った石川の一言には、実はそんな深い意味や背景があった。

 ひょっとしたら「イシカワのゴルフは面白い」と言っていた、あの米国人ギャラリーのご老人は、そんな深いところまでお見通しの上で「interesting(面白い)」と言っていたのかもしれない。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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